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43. そして断罪が始まる①
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「うわぁ。やっぱり、綺麗な方が着飾ると迫力が凄いですね」
ダンスを終えた2人に合流したヘンリクスが興奮気味に話しかけてくる。
そういうヘンリクスはパリッと襟の立ったシャツの上から蝶ネクタイを結んでいて、ユリアンナはまるで七五三の子供のようだと思ったが、それを口には出さなかった。
「ヘンリーも卒業おめでとう。もうダンスは踊ったの?」
「いえ……僕と踊りたいという人はいないでしょうし、貴族として育っていないからダンスは苦手なんです」
ヘンリクスは恥ずかしそうに後頭部を掻いている。
「あら……それなら外国語を教えてくれたお礼に私が教えましょうか?これから踊らなきゃいけない機会も増えるでしょうし」
『アイゼン商会』は世界規模の商会なので、アイゼン家と繋がりを持ちたいと考える貴族家はたくさんあるだろう。
学園を卒業して一人前の貴族となった嫡男であるヘンリクスには、社交のお誘いが殺到するはずだ。
「ユリアンナ様から直々にですか!?恐れ多いです……」
「何を言ってるのよ。私はもうすぐただの平民のユリアンナになるのだから関係ないわ」
ユリアンナはクスクスと笑っているが、ヘンリクスは複雑な表情をしている。
一応ユリアンナたちから大まかの事情は聞いていて、これから起こることも何となく把握している。
だが本当にそんなことが起こるのか?
やはりどこか現実感がなく懐疑的にならざるを得ない。
「……俺たちがやってきたことの結果がそろそろ出るみたいだ」
会場の一点を見ていたオズワルドがそう声をかけると、ユリアンナとヘンリクスもそちらに目を向ける。
パーティー会場の一段高い場所に設けられた来賓席には本日の主賓である国王夫妻が座っており、その傍には卒業生でもあるアレックスが控えている。
そのアレックスの元にサイラスが近づいて何かを耳打ちし、それに頷いたアレックスが国王に何かを進言する。
国王が許可を出すように軽く手を上げると、アレックス、サイラス、ジャックとジャックにエスコートされているミリカが壇上に上がる。
「卒業生の諸君!目出度い席ではあるが、この場を借りて皆の前で告発したいことがある!」
王族らしい威風堂々とした態度でアレックスが声を会場に響き渡らせる。
一瞬グッと喉に詰まらせたように堪えると、口の端を引き締めて顔を上げる。
「……ユリアンナ・シルベスカ嬢!前に出てくれるか!」
アレックスの言葉にユリアンナは瞬時に〝認識阻害〟を解き、ゆっくりと前に歩み出る。
───静かに、堂々と。
たっぷりと時間をかけて会場中の視線を集めながら、アレックスたちが立つ壇の下に辿り着く。
「わたくしに何の御用でございましょう?」
口元を扇で隠し、何も恥じることはないと示すように背筋をピンと伸ばして、真っ直ぐにアレックスを見据える。
「ユリアンナ……。僕は今から君の罪を明らかにしなければならない」
意気揚々というよりはどこか苦しげにアレックスが答える。
それとは対照的に、横に並ぶサイラス、ジャックは憎々しげにユリアンナを睨み付け、ジャックの腕に縋るように縮こまっているミリカは恐ろしいものを見るような視線を投げかけている。
「わたくしの罪……でございますか?一体何のことやら」
自分から出た言葉が想定以上に白々しく、思わず嘲笑が漏れる。
その瞬間サイラスの榛の瞳がより一層細められ、視線が鋭い刃のようにユリアンナに突き刺さる。
「……3年前の初冬の大夜会。ここにいるミリカ・ローウェン嬢のドレスが何者かにズタズタに切り裂かれた。寮の自室に置いていたにも関わらず……だ。これに心当たりは?」
「そちらの男爵令嬢のドレスですか?………さぁ。そのような安物に興味はございませんわ。わたくしには関係のない話ですわね」
「……はぁ、残念だよ。出来れば自分で罪を認めて名乗り出て欲しかったのだが」
アレックスは悲しげに眉尻を下げ、スッと右手を上げる。
それを合図にして、傍に控えていた侍従たちが壇上に複数人の生徒を連れてくる。
侍従に連れてこられた生徒たちは皆一様に青白い顔をしている。
「この中にミリカのドレスを切り裂いた実行犯がいる。……名乗り出たまえ」
アレックスが厳しい声でそう告げると、生徒たちの中から2人の令嬢が今にも倒れそうなほどガタガタと震えながら前に出てくる。
「パーシー子爵令嬢、グラント男爵令嬢。君たちは初冬の大夜会の1ヶ月ほど前にミリカ嬢の寮の私室に忍び込み、ドレスに鋏を入れた。……そうだね?」
「………はい」
「…………その通りにございます」
令嬢たちはアレックスの言葉に素直に頷く。
「それは誰の指示だったか証言してくれるか?」
「……………………ユリアンナ・シルベスカ公爵令嬢でございます」
長い沈黙の後、絞り出すように発された言葉に会場は俄かに騒つく。
「静粛にしてくれ。………ユリアンナ嬢、何か申し開きは?」
アレックスは証言を聞き終わると、再び視線をユリアンナに向けた。
ダンスを終えた2人に合流したヘンリクスが興奮気味に話しかけてくる。
そういうヘンリクスはパリッと襟の立ったシャツの上から蝶ネクタイを結んでいて、ユリアンナはまるで七五三の子供のようだと思ったが、それを口には出さなかった。
「ヘンリーも卒業おめでとう。もうダンスは踊ったの?」
「いえ……僕と踊りたいという人はいないでしょうし、貴族として育っていないからダンスは苦手なんです」
ヘンリクスは恥ずかしそうに後頭部を掻いている。
「あら……それなら外国語を教えてくれたお礼に私が教えましょうか?これから踊らなきゃいけない機会も増えるでしょうし」
『アイゼン商会』は世界規模の商会なので、アイゼン家と繋がりを持ちたいと考える貴族家はたくさんあるだろう。
学園を卒業して一人前の貴族となった嫡男であるヘンリクスには、社交のお誘いが殺到するはずだ。
「ユリアンナ様から直々にですか!?恐れ多いです……」
「何を言ってるのよ。私はもうすぐただの平民のユリアンナになるのだから関係ないわ」
ユリアンナはクスクスと笑っているが、ヘンリクスは複雑な表情をしている。
一応ユリアンナたちから大まかの事情は聞いていて、これから起こることも何となく把握している。
だが本当にそんなことが起こるのか?
やはりどこか現実感がなく懐疑的にならざるを得ない。
「……俺たちがやってきたことの結果がそろそろ出るみたいだ」
会場の一点を見ていたオズワルドがそう声をかけると、ユリアンナとヘンリクスもそちらに目を向ける。
パーティー会場の一段高い場所に設けられた来賓席には本日の主賓である国王夫妻が座っており、その傍には卒業生でもあるアレックスが控えている。
そのアレックスの元にサイラスが近づいて何かを耳打ちし、それに頷いたアレックスが国王に何かを進言する。
国王が許可を出すように軽く手を上げると、アレックス、サイラス、ジャックとジャックにエスコートされているミリカが壇上に上がる。
「卒業生の諸君!目出度い席ではあるが、この場を借りて皆の前で告発したいことがある!」
王族らしい威風堂々とした態度でアレックスが声を会場に響き渡らせる。
一瞬グッと喉に詰まらせたように堪えると、口の端を引き締めて顔を上げる。
「……ユリアンナ・シルベスカ嬢!前に出てくれるか!」
アレックスの言葉にユリアンナは瞬時に〝認識阻害〟を解き、ゆっくりと前に歩み出る。
───静かに、堂々と。
たっぷりと時間をかけて会場中の視線を集めながら、アレックスたちが立つ壇の下に辿り着く。
「わたくしに何の御用でございましょう?」
口元を扇で隠し、何も恥じることはないと示すように背筋をピンと伸ばして、真っ直ぐにアレックスを見据える。
「ユリアンナ……。僕は今から君の罪を明らかにしなければならない」
意気揚々というよりはどこか苦しげにアレックスが答える。
それとは対照的に、横に並ぶサイラス、ジャックは憎々しげにユリアンナを睨み付け、ジャックの腕に縋るように縮こまっているミリカは恐ろしいものを見るような視線を投げかけている。
「わたくしの罪……でございますか?一体何のことやら」
自分から出た言葉が想定以上に白々しく、思わず嘲笑が漏れる。
その瞬間サイラスの榛の瞳がより一層細められ、視線が鋭い刃のようにユリアンナに突き刺さる。
「……3年前の初冬の大夜会。ここにいるミリカ・ローウェン嬢のドレスが何者かにズタズタに切り裂かれた。寮の自室に置いていたにも関わらず……だ。これに心当たりは?」
「そちらの男爵令嬢のドレスですか?………さぁ。そのような安物に興味はございませんわ。わたくしには関係のない話ですわね」
「……はぁ、残念だよ。出来れば自分で罪を認めて名乗り出て欲しかったのだが」
アレックスは悲しげに眉尻を下げ、スッと右手を上げる。
それを合図にして、傍に控えていた侍従たちが壇上に複数人の生徒を連れてくる。
侍従に連れてこられた生徒たちは皆一様に青白い顔をしている。
「この中にミリカのドレスを切り裂いた実行犯がいる。……名乗り出たまえ」
アレックスが厳しい声でそう告げると、生徒たちの中から2人の令嬢が今にも倒れそうなほどガタガタと震えながら前に出てくる。
「パーシー子爵令嬢、グラント男爵令嬢。君たちは初冬の大夜会の1ヶ月ほど前にミリカ嬢の寮の私室に忍び込み、ドレスに鋏を入れた。……そうだね?」
「………はい」
「…………その通りにございます」
令嬢たちはアレックスの言葉に素直に頷く。
「それは誰の指示だったか証言してくれるか?」
「……………………ユリアンナ・シルベスカ公爵令嬢でございます」
長い沈黙の後、絞り出すように発された言葉に会場は俄かに騒つく。
「静粛にしてくれ。………ユリアンナ嬢、何か申し開きは?」
アレックスは証言を聞き終わると、再び視線をユリアンナに向けた。
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