シンデレラは、眠れない

月詠嗣苑

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二十八話

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「只今のご挨拶を持ちまして、おふたりの結婚ご披露宴をおひらきとさせていただきます。順平さん、美嘉さん、本日は本当におめでとうございます! おふたりにとっての新たな人生の第一歩、皆様どうぞ今日一番の大きな祝福でお見送りください!おめでとうございます!」

 式場いっぱいに盛大な拍手が流れる中、新郎新婦は退場していった。

「この次は、莉子ちゃんね」

「先輩は?」

「来月、かな? でも、どうしてわかったの?」

「前に課長さんとデートしてるの見ちゃったから。そうなのかなって……。でも、誰にも言ってませんよ」

 でしょうね。言ってたら、とんでもない速さで回るわ。

「そして、先輩。妊娠せてるでしょ? お酒大好きな先輩、全然飲みませんもの」

「す、凄い観察力ねー。どうして、それが」

「言わない! でも、今はママのお仕事手伝ってますからね!」

 そんな楽しい結婚式を終え、私は、マサキさんの迎えを待った。


「は? バレてた?」

「そう。でも、莉子ちゃん誰にも言ってないみたい」

 今月だけで、結婚式が二件、来月は自分達の結婚式だけど、身内と極少人数でやると伝えてある。

 もちろん、そこで初めて彼のご両親を見るのだけれど……。


「んー、うちは親よりジジイ、もとい、祖父が強いから」

「そうなの?」

「親父もお袋も言いたいことがあっても、何も言えないし、兄貴は兄貴で、ジジイと似た部分もあって……」

「でね、あえて言わなかったんだけどね?」

「はい、買いました! 最新型のチャイルドシート!」

「まさか、お爺さまも金銭感覚おかしい? 失礼だけど」

「いや、ケチ!」

 じゃ、どうして彼の金銭感覚が?

「まぁ、いいわ。あまり怒ってもしょうがないものね」

 そう言って私は、運転している彼の横顔を見た。


 高橋さんの挙式から二週間後、私は涙で目を腫らした莉子ちゃんの挙式に出席した。

「お腹少し膨らんだかな?」

「せんぱーい!!」

 たった四つしか離れてないのに、こんなに目を腫らして……。

「だめよ? 花嫁さんが、そんな泣き虫じゃ……」

「は、はい」

 赤木さんの出席者も凄いけど、莉子ちゃんの出席者は、それを上回っていた。

「でも、これて良かった」

「さ、帰ろうか。新しい我が家へ……」

「うん」

 ちょうど、莉子ちゃんの挙式前日に引っ越しを終え、私と彼は先に入籍した。

「足立もなんとか、だな」

「そうね。彼があんな感激屋さんとは思わなかったわ」

「それ、俺も思った」

 足立くんの独り立ちが、ほぼ確定された日、私と彼は揃って結婚の報告をした。そこには、足立くんへの引き継ぎも含めて……。

 その拍手が流れる中、彼は泣いたのだ。誰よりも長く。


「今度は、俺らの番だ」

「そうね。つわりも少しは安定してきてるし」

「なら、良かった……。さ、着いたよ」と彼は、私の妊娠がわかってから、言葉使いにも変化ぎあった。金銭感覚は、まだ直ってはいない。


 それから、一ヶ月後の大安吉日。

「はーい、撮りますよー! いいですかー!」とカメラマンが、大きなカメラ越しにいい、真っ青な空が澄み渡る中、私・花井瑠奈は、近藤瑠奈になった。

 のは、いいんだけど……。


「え、またいるの?」

「うん。どうする?」

 私の両親は、栃木。彼の両親は、すべて都心にいるせいか……。

「会長? そろそろ会食のお時間に……」

「いやだ。わしは、帰らん! まだ、翔の顔を見ている!」と彼の祖父が、家にやってきては、ひ孫の翔の顔を見にくるのだ。

「ジジイ……」

「正樹さん?」

「おじいさん、そろそろ帰られた方が?」

「ふん!」

「翔くん、じいじのスマホで、写真撮ろっか?」でやっと笑って、写真を撮って帰る。

「どれ撮っても同じだろ? まだ、産まれたばっかなのに」

「気持ちはわかる。莉子ちゃんもそうみたい」

 自分達の結婚式に、彼の身内が来て驚いたのは、彼の父親が社長だったこと!お爺さまが、会長で、彼の兄が専務……。お母様は、専業主婦だけど、元作動の師範で、過去に私が着た着物は、お母様のものだったと聞いた。

「大丈夫だよな?」

「でしょ? だって、あなたのお兄さんとこ、やっと男の子産まれたんだから。それも、双子の!」

「ん? なに? 欲しくなった?」

「ちが……うわよ。ま、まだお許しが出てないから」

 なんで、そっからこうなるの?!

「うん。わかった! じゃ、それまで我慢するから、一ヶ月検診は、二人で行こうね」

 スる確定ですね?もはや。

「ま、いいけど」


 あの時、彼が私を拾ってくれなかったら、どうなってたのかしら?
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