シンデレラは、眠れない

月詠嗣苑

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二十五話

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「ありがとうございました」

「また、お待ちしております!」

 そんな会話をし、私とマサキさんは私の実家がある佐野市へと向かった。

「そういや、佐野ってラーメン有名なんだろ? 食ってくか?」

「そうね。少しお腹に入れてきましょうか」

 いや、この人疲れ知らずなの?!どうして、朝から?!

 段々と懐かしい景色が、見えてくる。

 佐野に入って直ぐが、実家のある場所だけど、それを一旦通り越して、ラーメン屋・匠に行った。

「まだあったんだ。人は変わってるけど……」

 中に入ると店員さんの元気な声に圧倒された。

「居酒屋みたいだ」

「うん」

 味噌と醤油を頼んで食べたら、これがまた美味しい!

「こういう小さなとこでも、頑張ってるな」

「そうね。大手でも閉店しちゃうとこもあるけど」

 美味しすぎて、スープまで完食!


「んとね、この先真っ直ぐ行くとコンビニあるから。そこで待ってて」

「了解!」

 コロンが出る前は、年に二回は帰省していたけれど、今は落ち着いてきても人混みが怖い。

 ガラガラと引き戸を開けて、

「ただいまー」と大きな声で言うと、奥から母さんが出てきて、泣かれた。父さんは、コンビニにタバコ買いに行ったらしい。

「タバコなんて駄目よ。身体に悪いのに……」と私が言っても辞めない頑固さ。

「はい、これお土産。東京のと、こっちくる前に東照宮行ってきたから、お守り」

「ありがとうね」

「元気そうだな。良かった良かった」

 照れ臭いのか、あまり言葉は出ないけど、あったかい。

 母さんが淹れてくれたお茶も美味しかったし、二人が裏の畑で作った大根の漬物もこれまた美味しかった。

「あー、あそこいったのか? 美味かっただろ?」

 こっちにきてすぐ、ラーメン食べたと言ったら、匠?と聞かれて……。

「匠は、今息子の代になった」と聞かされた。

 実家は全く変わっていなかった。時間の流れが、遅いのかも知れないけれど……。

「来年は、沢山帰ってくるから」と腰をあげようとしたら、チャイムが鳴った。

「お客さん?」

「うん。そうだけど……」

 セールスかな?と思ったら……。

「課長ー!!!」

 あ、つい……。

「瑠奈の会社の人?」

「そうだけど……」

「初めまして。花井さんと現在お付き合いさせて頂いてる近藤と申します」

「おつき……」

「あい?」

「……。」

 立ち話もなんだからと中へと招かれ、彼は私の隣へ座り、こう言った。

「お嬢さんと結婚させて下さい」と。

「「「は?」」」

「結婚?」

 いやいや、待って?!そんな話聞いてないどころか、プロポーズなんかされてませんけど?!

「別に……なぁ」

「いいんじゃないですか? もう大人にんですから」と。

 せめて、そこは止めて?

「じゃ、詳しく決まりましたら、またお伝えにあがりますから」

「え? じゃ、か、帰るから!!」

 あまりの事に、頭が追いついていかない。

 付き合ってる過程上に、結婚はあるかも知れないけれど。

「驚いた?」

「うん」

「でも、俺はちゃんと考えてたから……」

 そんな事を聞いた記憶はあるけれど。

「ちょっと寄る」と道路沿いにあったカフェに寄って、カフェオレと珈琲を……。

「でだな……」

「はい」

「色々、色々、色々考えて、やっとオッケーが出たんだ」

 は?オッケー?とは?

「ずーっとあなたを見てました」

 はい、見てましたね?一緒に住むようになってからですが。

「瑠奈、俺はお前のことが好きです」

「はい」

 前に聞きました。

「一生かけて、大切にします」

「はい」

「結婚して下さい」と差し出されたのは、ハート型の赤いケース。

「あ、これは大丈夫だから。高くないから!」

 いや、そもそもブッケガルニですよね?あなた、高いって言葉知ってます?

「ありがとうございます。ちなみに、これお給料何ヶ月分?」

「ん? 普通に一ヶ月分だが? 給料三ヶ月っていったら……。そっちのがいいのか?」

「あ、いえ。喜んで、お受けいたします」

 一ヶ月分ならいいかな?

「いま、なんと?」

「お受けいたします、と言いましたが?」

「ほんとに?」

「はい。信じないんですか?!」

 で、左手の薬指に指輪を嵌めて貰ったんだけど……。一ヶ月にしては、やけに大きい?気のせい?

「課長? 一つ聞いて良いですか?」

「ん? 早くしろ。帰るぞ」

「課長、月に幾ら貰ってます?」

「は? 手取り五十か? 少ないか?」

 え?は?係長、そんなあったかな?

「あと、俺仕事クビになっても……」

「え? なったんですか?」

「なってない! ただ万が一そうなったとしても、株とか色々やってるから、お前が仕事に出なくても住むってこと!」

 あ、そう言うことね……。

 でも、やっぱ仕事中はなくしたら怖いから、お出かけの時に……と二人で撮った写真の隣に置いた。
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