シンデレラは、眠れない

月詠嗣苑

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十九話

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「桃の花、ですか?」

「そう。知ってる庭園でいま開催してるんだけど行かないか?」とマサキさんに誘われて……。


「また……ですか?」と前回よりは、明るめの着物を着る事に。

「あぁ。今回は、桜だ」

 今回は?

 その着物に袖を通し、着付ける。

 シュルシュルと流れる様に着ていき、鏡の前でミスがないか確認する。髪も自分で、それなりに出来るから。ほつれる事はない。

「綺麗だ」

 課長は、スーツだけど、私の姿を見たエリーだけが、私と課長を交互に見る。

 バッグも草履も借り物だが、古くはない。保管状態が、かなり良いのだろう。

 ここ最近、休みになったりすると二人で色々な催しに出掛けたりする。

 車で庭園まで行けば、コンシェルジュが丁寧に車を開け、受付まで案内をしてくれる。

「近藤様、こちらにお名前を……。花井様も此方に……」

 様呼びは慣れてはいないが、課長は凛としていた。普段見てるとかなり違うわ。

 桃の花は、ピンクがメインだったけど、その濃さも違うから、目移りしてしまう。

「おきれいで」

「まぁ……」

 なんて言葉も飛び交い、桃の花を前にして、写真を撮って貰ったり、振る舞われたお抹茶を飲んだりした。

「素敵だわ」

「いいだろ? たまには」

 普段音楽は聴かないが、庭園で演奏された琴の音色のきれいなこと!流れているように優しく入ってくる。

 春の海と誰もが知ってる春よこいの二曲の演奏だったが、本当にきれいに奏でていた。

 演奏が終わって、庭園を二人歩く。

 大きな池に鯉が泳いでいた。

「この池は、瓢箪池って言うんだ」

「あぁ、なんか形がわかりました」

 太鼓橋を渡ると小さな池には、作られた滝があって、この庭園にいるだけで、時間が忘れられそうだった。

 料理は、懐石料理。

 御前で出てきて、小鯛も蒸し物も美味しく、桜に象られた和菓子も美味しかった。

「俺、ここは久し振りにきたけど、やっぱ上手いな」

「はい。どれも美味しかったです」

 高級過ぎると緊張して、食べた気にならないとは言うが。自分もあったし。量的には、見た目少ないとは思っても、かなりお腹にきた。

 抹茶を点てていて、ご相伴に預かったが、苦いというよりは深さを感じたかな。

「なんか、いい経験になりました」

「だろ?」

 少し休憩してから庭園を去り、家に帰るかと思ったらデパート。

「いらないですよ?」

「そこまで高くないよ」と連れられてきたのは、呉服売り場。

「これ!!」

「工房?」

 そこは、かんざしや髪飾りが、作れる工房だった。

「どうですか? おひとつ」

 好きなパーツを選んで持っていくと、専門の方がその場で調合してくれる。

「折角、着物着てるんだし。一つくらいあっても困らんだろ?」

 確かに高くはない。

 一つでいっか!と思ったのに、四つも!!

「こういうのは、甘えなさい」

「ありがとうございます」

 三十分位で出来た。

「綺麗ですね」

 メインは、花形にして、垂れるようにキラキラと小さな飾りが降りてくる。

 出来たのを一つ刺して貰い、次の所へ……。

「写真? なんで?」

「思い出、思い出。いい着物きてるんだから」

 ???

 訳も分からず、写真をアレコレ撮られた。

「綺麗だろ?」

「だからって……なんか……」

 これじゃ、まるで結婚写真に見えるじゃないのーっ!!

 益々、課長がわからない。


 家に帰るとエリーが、おかえりと言ってくれる。にゃぁ、だけど。

「珈琲飲みます?」

 エリーは、お留守番のご褒美におやつ。

「んー、その前に……。着物、脱がないと」

「できますけど?」

「ん? 俺も出来るよ? 着付けも脱がすのも。な?」

 スルスルと帯紐も帯も解かれ、パサパサと着物も脱がされ、内襦袢な私……。

「綺麗だ」と私の背後から、マサキさんは、襦袢の中に手を入れてくる。

「あっ……まだ……」

「いいよ、そのままで。これは、普通に洗えるから」

 はんっ!!

 そんなとこ……

「あぁっ……」

 腰紐が、解かれてぼんやりと淫らな姿の私が……。

「写ってるの見えた? やらしいよね? こんな姿見られるのは……」

 だったら……あっ!!

 ベッドではなく、床に押し倒されて、唇を塞がれ……。

 段々とマサキさんの身体が下に……

「ほわっ!! や、え? あっ!!」

 私、初めて足の指を……

「ひゃっ!! あっ!!」

 また今度は、上に来て……

 あっ、あっ、あっ、あっ……

 敏感な所を何度も何度も弄られ、吸われ……

「挿れるよ?」

 ズブッと入った感覚があって……

 あっ……あっ……

 マサキさんは、息を乱して、私の名前を何度も呼んだり、私の向きを変えたり……

「出来たら……責任……取るからっ!!! ハァッ」で、マサキさんの動きが止まった。

「クスッ……。初めて……」

「え? 処女だったっけ?」

「もぉ、ばか……」

 彼の首に手を回して、自分からキスをした。
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