シンデレラは、眠れない

月詠嗣苑

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十七話

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 流石に、迂闊だったか?

 俺は、瑠奈と一緒に暮らし始めてから、虚弱体質になったのかも知れない。

「大丈夫ですか? お粥作ってきましたよ?」

「ありがとう」

 瑠奈の風邪が俺に移った。まぁ、仕事自体は、連休になってるからいいが……。

「マサキさん?」

 シてから、瑠奈は、俺の事を名前で呼んでくれてる。あ、俺が言ったのかも?!

「はい、口を開けて下さいね」

 瑠奈は、粥は覚ましては、一口ずつゆっくりと食べさせてくれた。

「薬は、ご自分で出来ますよね?」

「あ、うん」

 流石にこれは、なぁ。俺は、したけど……。

 薬が効いたのか、それとも、瑠奈のがあるのか、眠くなって寝た。


 ニャウ……

「駄目よぉ、エリー。いま、パパはご病気で寝てるからねぇ」

 最近、このエリー嬢に対しても、お互いの言い方が変わってきていた。事の発端は、課長、いや、マサキさんだけど。

 ニャウ……

「そう、いい子ね……。あなたは、ほんと賢いわ」

 猫なのに、対し方は、人間。

 それは、課長が飼ってからそうだったらしい。


「んぅ、なんか見てて可哀想に思えたから」

 エリーとの出会いを聞いたら、そう帰ってきた。ペットショップで売られてた、超破格で!でも、生まれつき手足の長さが違ってる上に、左目が上手く見えないから、誰も買わなかったと。

「エリーのパパは、優しいね。あれでもうちょっと仕事で優しかったらいいのに……」

 確かに、今の部所での課長は、面白さは有るけど(私がいれば)、鬼とも言われてるから。


「さて、お洗濯でも干そうかしらね。お外は、お天気いいからね」

 私が歩くとエリーも歩く。さながら、赤ちゃんの後追い?それがまた可愛くて、色々とやってしまう。

 洗濯物をベランダで干してる時も、エリーは一定の場所から外へは出ない。

 ほんとに人間の言葉を理解してたりして。

「春とは言え、まだちょっと寒いかな?」

 八階からでも、景色はかなりいい。このマンションは、屋上にも上がれる。デッキスペースが備え付けられていて、天気がいい日は、ここから富士山が見れたりもする。

 掃除機は、音が大きいから、ルルンバで床のお掃除をしてもらう。これが動くとエリーは、また後をついては、ハッ!として隠れようとしてる。

 そのエリーも来週、動物病院で避妊の手術をするのだが、女の子でもするんだとかなり驚いた。卵巣を取るだけとはいえ、中には子宮までも取るという依頼もあるらしい。

 避妊、か。大丈夫だ時期だけど、注意に越したことはないわ。

「さて、お茶でも飲もう」

 珈琲を淹れ、エリーには柔らかなジャーキーを切って与えた。

 ここにいると常に安心感が芽生えてくる。

 側にいると落ち着くし、いないと気にもなるし。

「起きてきたら、熱を測らないとね……」

 ニャッ!!

 ほんと不思議な猫。


「36.0℃ですね。お互い熱が引くのが、早い体質なんですかね?」

 39℃あった熱が、午後には平熱まで下がってた。

「そりゃ、あれだけ冷たいの貼られれば下がるだろーが」

「あ、冷えピタット? リンパ腺に貼ると熱が下がるのが速いとか聞いたから。でも、良かった。熱が下がって」

「俺は、あんなとこに貼られて、襲われると思ったが?」

「……。」

「今から……」

「しません!」

「は? シたいの? 腹減ったから、飯欲しかったんだけど」

「……。ばかっ!!」

 なんか急に恥ずかしくなって、寝室から逃げてきた。早とちりしちゃったなぁ。


「俺、肉が良かった……」

「駄目です。熱が下がったばっかなんですから。ほら、おうどん伸びますよ?」

 ズルズルと音を立てて、熱々のうどんを食べる。

 相変わらず、エリーの切なさそうな顔が……。

「明日は、ちゃんとしたご飯にしますから」と言えば、

「じゃ、食べさせて!」と妙に甘えてくるし。

「じゃ、俺オムライスがいい。そうすれば、お互いにあーんが出来る!」

 こ、こいつは……。お粥を食べさせた時に思いついたのかー?!

 ま、結局はするんだろうけど。

「瑠奈、風呂は?」

「は? 今まで通り別々に入りま……」

 ニヤニヤしてる。謀られた?

「いつか、二人で……。さ、入ってくるかな」

 あーーーっ!もぉっ!!

 エリーの前で大声は出せない。

 でも、二人でお風呂……。裸を見られるだけでも、恥ずかしいのに……。

「あ、明日から仕事だ。用意しておかないと」

 何故か急に我に返り、ササッと仕事の準備をする。

「ほぉ、愛しの瑠奈さんは、人のスーツを見て、ニヤニヤする性癖の持ち主?」

「違う。ただなんか……。お風呂入ってきます!」

 ニヤニヤなんて……して……たの?

 そして、また……。

「どうして私って、忘れっぽいの?!」

 着替えを忘れ、課長に頼んだら……

 渡されたのは、ショーツ一枚。

「パジャマは?」

「必要ない。さ、行こう……」

 お姫様抱っこされても、お姫様の気分にはなれなかった。
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