シンデレラは、眠れない

月詠嗣苑

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十話

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「おはよう」

「おはよう……ございます」

 ???

 おかしい。今日は、病み上がりの出勤でいつもより遅いスタートの私が、部署に入るとどうも周りが私を見て、コソコソなんか言っているのを見た。

 なんか、変なのついてるのかなぁ?

「せーんぱいっ! おはようござ……」

「え?」

 莉子ちゃん、あなたも?

「やだ、先輩。可愛い……」

「は?」

 何を言ってるのこの子は。お正月は過ぎたと言うのに……。

「冗談言ってないで、ほら仕事仕事。電話鳴ってるじゃないの!!」

 少しきつめに言うと、バタバタと電話ん取ったり、パソコンの画面を見たりと、段々と通常業務に戻ってくる。

 それにしても、今朝は、受付の子も首を傾げてたわねぇ。

 なんと言うか、この年末年始も私的には色々あったけれど、こうしてまた仕事が出来ると安心する。


 コンコンと軽めにドアが叩かれ、庶務の加藤さんが中に入って、私の所にきて、ひとこと。

「やっぱ、瑠奈さん可愛い」

「……。」

 お前もか!

 なんなの?今日は!

 こっそり手鏡で見ても、ゴミとかが付いてる事も無かったし、体重を測ってはみたけど、全然変わってないし……

 他の部所の人も覗いては私を見て、頷いたり、笑ったりしていて……。

「落ち着かん!! いいか、今から花井の事を見てヒソヒソ言うのは、禁止する!!」ととうとう課長が切れて、妙な事を言い出した。

「ヒソヒソ、ですか?」

「してるだろーがっ!! 朝からチラチラ見ては、なんか言ってるし……」

「すみません」

「ごめんね、瑠奈ちゃん」

「でも……。課長は、花井さんを見て、どう思いますか?」

「は? 倉田、お前何を突然言う?!」

 なんだろう?今度は、課長がおかしくなった?

「だって、最近の花井さん、綺麗になったって思いませんか?」

 部所の中がザワザワと……。

「そ、そりゃ、まぁ……。ってか、仕事しろっ!! 営業、行ってくる!」

「はぁ……」

 課長? あなた、これから会議では?

「そんな、変わったのかなぁ?」

「変わりました! 明らかに!」

 莉子ちゃん、あなた……。

「仕事中に、そんなもの食べないのっ!!」

 この子は、会社に何しにきてるの?それなりに、仕事で評価は得てるのに!


 午前の仕事を終えて、ランチに来ても……。

「まず、メイク! どのブランド使ってるんですかぁ? 教えてぇ」

 あー、課長が買ってくれたやつね。

「髪! サラサラだわ、ツヤツヤだわ。あーん、羨ましい!」

 あー、二種間に一度、強引にヘアサロン連れてかれてます。

「先輩、痩せましたね?」

 だって、課長の家にいると掃除掃除掃除で、間食する暇がない。

「人って、こんなに変わるもんねぇ」

 とりあえず、課長抜きにして、やってる事を言ったけど……。

 カフェを出ると、街並みがそろそろバレンタインに変わる訳で……。

「面倒臭い季節になったね」

「そうね」

 毎年、義理でもチョコレートを配る女性社員。

「今年どうしますぅ?」

 バレンタインか。前は、よく手作りのを渡したけれど。あのクズに!

「お金出し合って、買って配る?」

 そんな話をしながら、社に戻る。

「うわっ! なにあの車!」

「ベンツだ……」

「ま、だいたい社長じゃない? あんなの乗る人って……」

 確かにねぇ。名前も顔も覚えてないけど。


「……。」

「あの会長、そろそろ行きませんと。会食のお時間が……」

「ああ、わかった。正樹、お前は本当誰に似たんだか」


「さー、午後も頑張るかぁーっ!」

 大きく伸びをしながら言ったら、課長が部所に入ってきて、目があった。

 あ、顔背けた?

 午前は、あんなに騒がしかったが、午後は午後で……

「井ノ原ーーーっ! ここの計算ミスってんだろ!」

「高井ーーっ、お前はいつになったら、相手の顔を覚えるんだ!」

 なんとなく、機嫌が悪かった。

 家にいてもそうかな?と恐る恐る食事を出せば、口をつける前に……。

「まずい」

「は?」

「笑え。でなきゃ食わん」と子供か!と突っ込みたくなるような言葉が出てきた。

「笑えと言われても……」

 ガタンッと音を立て、課長がリビングを出て行った。

 課長?私、なんかしました?

 おかずにラップを掛け、そのままにしておいた。

 何度か書斎に籠る課長に声を掛けたけど、出る気配なく、私は、お風呂に……。

「ふぅっ。困った困った……」

 ぷかぷかと泳ぐアヒル(オモチャだけど)をボォッと眺めても、課長がどうして機嫌が悪くなったのかわからなくて……。

「うー、のぼせたーーーっ!!」

 ミネラルウォーターを頬に当て、冷気をあてがう。

「明日には、機嫌よくなるかなぁ?」


 課長が、寝室に入ってきたのは、私が少しウトウトしかけた時だった。

「課長?」

「なんだ? ジッとしてろ」

「はい」

 いつものように私の身体は、課長の腕の中で、夜中、トイレに起きても、何故かついてくる。恥ずかしいのよ?
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