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八話
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「せーの、かんぱーーーい!」
「「「かんぱーーーーいぃぃぃ!!」」」
今日は、仕事納めの日。
「えー、先輩。ご実家帰らないんですか?」
「まぁね。まだ、コロン怖いし」
全世界を揺るがした新型ウイルス コロンが、だいぶ落ち着いてきたと言っても、完全に0になった訳ではない。
「莉子ちゃんは、おうち近かったっけ?」
「はい! 田園調布なんで、すぐ行けるんです」
あー、お嬢様だからねぇ。莉子ちゃん。
「でも、もう社会人になったんだからって、お年玉貰えないんですぅ」
「……。」
お、お嬢様だから。何も言うまい。
「でと!」
でと?え?まさか……?
莉子ちゃんが、口にしようとしたグラスを奪うと……
「ちょ、ちょっと誰?! この子にお酒飲ましたのっ!!」
「さぁ?」
「誰かと間違えた?」と犯人分からず。
「荒木くん?」と聞くと、激しく首を振る。
「莉子ちゃん、あなたお酒とてと弱いんだから、あなたは、こっち!」とジュースのグラスを渡す。
「ちぇっ……」
舌打ち?まさか確信犯?
「莉子も大人の世界に入りたいのに。パパもママも莉子には、お酒飲むな!ってうるさく言うし……先輩だってぇぇぇぇ……」
泣き上戸?かと思えば、下らない係長の親父ギャグにもかなり反応して笑いまくるし……。
可愛いから、飲むな!ではなく、うるさいから、飲むな!なのね?
それでも、ジュースやウーロン茶を飲ませ続けたせいか、酔いも覚め、誰よりもお腹を満たせていた。ヤケ?
課長は、飲んでるのに、酔わない?のかなぁ?
宴も終盤になると、帰り道が同じ方向の人は、同じタクシーに乗り、莉子ちゃんは、お母さんが迎えにきた。
「本当に良くしていただいて、ありがとうございます。また、来年も……」
「はい」
めちゃくちゃ、丁寧にお辞儀されて、なんか中途半端なお辞儀をした自分が恥ずかしくなった。
「行ったか?」
「はい」
あおに残されたのは、ホテルに泊まる組数人と私と課長。
「じゃ、お前ら気をつけて帰れよ」
「お疲れさまでーーーすっ!!」
「今年も良い歳をーーーっ!!」
「先輩、おやすみっ!!」
それぞれの挨拶をし、別々の方向へ。
「少し歩くか」
「はい」
駅前の繁華街。行き交う人も楽しそうに歩いたりしている。
その中の私達も、側から見ればそう見えるのだろうけど……。
「今年も色々あったなー」
「はい」
色々あり過ぎたけど!!
「花井?」
「はい」
名前を呼んだのに、課長は何も言わないで、笑ってる?
「帰るか?」
「帰ってますが?」
「今年もあと少しだな…」
「そうですね。そういや、課長は、ご実家には?」
「さぁな。お前は?」
「帰りませんが? ちゃんと言ってありますし」
課長は、少し私の顔を見て、
「そうか」と小さく言った。
なんだろう?やっぱ、課長酔ってるのかな?
「え? 今から……ですか?」
「あぁ。お前もこの部屋じゃ、狭いだろ?」
部屋を狭くしてる原因、あなたのプレゼント攻撃ですけど?!
「でも、私まだお金貯まってませんけど……」
「は? 引っ越すとは言ってないが? 部屋を移動させると」
寝ている所を起こされたから、聞き間違えたのかな?
「お前の荷物は、俺の寝室に移す」
「はい? 今、なんと?」
「聞こえなかったか? お前の荷物を俺の寝室に移す、と言ったのだが……?」
何故?何故そうなる?
確かに課長の寝室は、今まで住んでたマンションの部屋よりもただただ広いけど!!
「安心しろ。手は出さん!」
でしょうけども!!何故?
「エリー、お前は、ここでジッとしてなさい。いい子にしてたら、あとでご褒美だからな……」
「……。」
エリーに語る優しさが、もう少し社員に向けてくれたらいいのに……。
「花井?」
「はい。何も言ってません」
「そうか……」
言える訳がない。
こうして……
私は課長と一緒に!
課長の寝室に!
私の荷物を入れ終えました……。
いい匂い……。
「なんか、足らんものあ……」
「だ、大丈夫です! 間に合ってます!」
「そうか……。はぁっ」
最後のため息はなに?
「……。」
「なんだ? なんか、問題でもあるのか?」
何故?何故?何故ーーーっ?!
何故、同じベッドに寝るの?!
「部屋が、狭いんだからしかたないだろ?」
は?寝室だけで、十五畳位あるとか聞きましたが?
課長のベッドは、ダブルベッド……。
「しまうのは、全部しまったか?」
「あー、はい」
「じゃ、いくか?」
「は? 何処にですか?」
半ば強制的に車に乗せられ、またしても……。
ほんと、この人の金銭感覚おかしいんですけどっ!!!
こんなに私の買ってどうするの?
「「「かんぱーーーーいぃぃぃ!!」」」
今日は、仕事納めの日。
「えー、先輩。ご実家帰らないんですか?」
「まぁね。まだ、コロン怖いし」
全世界を揺るがした新型ウイルス コロンが、だいぶ落ち着いてきたと言っても、完全に0になった訳ではない。
「莉子ちゃんは、おうち近かったっけ?」
「はい! 田園調布なんで、すぐ行けるんです」
あー、お嬢様だからねぇ。莉子ちゃん。
「でも、もう社会人になったんだからって、お年玉貰えないんですぅ」
「……。」
お、お嬢様だから。何も言うまい。
「でと!」
でと?え?まさか……?
莉子ちゃんが、口にしようとしたグラスを奪うと……
「ちょ、ちょっと誰?! この子にお酒飲ましたのっ!!」
「さぁ?」
「誰かと間違えた?」と犯人分からず。
「荒木くん?」と聞くと、激しく首を振る。
「莉子ちゃん、あなたお酒とてと弱いんだから、あなたは、こっち!」とジュースのグラスを渡す。
「ちぇっ……」
舌打ち?まさか確信犯?
「莉子も大人の世界に入りたいのに。パパもママも莉子には、お酒飲むな!ってうるさく言うし……先輩だってぇぇぇぇ……」
泣き上戸?かと思えば、下らない係長の親父ギャグにもかなり反応して笑いまくるし……。
可愛いから、飲むな!ではなく、うるさいから、飲むな!なのね?
それでも、ジュースやウーロン茶を飲ませ続けたせいか、酔いも覚め、誰よりもお腹を満たせていた。ヤケ?
課長は、飲んでるのに、酔わない?のかなぁ?
宴も終盤になると、帰り道が同じ方向の人は、同じタクシーに乗り、莉子ちゃんは、お母さんが迎えにきた。
「本当に良くしていただいて、ありがとうございます。また、来年も……」
「はい」
めちゃくちゃ、丁寧にお辞儀されて、なんか中途半端なお辞儀をした自分が恥ずかしくなった。
「行ったか?」
「はい」
あおに残されたのは、ホテルに泊まる組数人と私と課長。
「じゃ、お前ら気をつけて帰れよ」
「お疲れさまでーーーすっ!!」
「今年も良い歳をーーーっ!!」
「先輩、おやすみっ!!」
それぞれの挨拶をし、別々の方向へ。
「少し歩くか」
「はい」
駅前の繁華街。行き交う人も楽しそうに歩いたりしている。
その中の私達も、側から見ればそう見えるのだろうけど……。
「今年も色々あったなー」
「はい」
色々あり過ぎたけど!!
「花井?」
「はい」
名前を呼んだのに、課長は何も言わないで、笑ってる?
「帰るか?」
「帰ってますが?」
「今年もあと少しだな…」
「そうですね。そういや、課長は、ご実家には?」
「さぁな。お前は?」
「帰りませんが? ちゃんと言ってありますし」
課長は、少し私の顔を見て、
「そうか」と小さく言った。
なんだろう?やっぱ、課長酔ってるのかな?
「え? 今から……ですか?」
「あぁ。お前もこの部屋じゃ、狭いだろ?」
部屋を狭くしてる原因、あなたのプレゼント攻撃ですけど?!
「でも、私まだお金貯まってませんけど……」
「は? 引っ越すとは言ってないが? 部屋を移動させると」
寝ている所を起こされたから、聞き間違えたのかな?
「お前の荷物は、俺の寝室に移す」
「はい? 今、なんと?」
「聞こえなかったか? お前の荷物を俺の寝室に移す、と言ったのだが……?」
何故?何故そうなる?
確かに課長の寝室は、今まで住んでたマンションの部屋よりもただただ広いけど!!
「安心しろ。手は出さん!」
でしょうけども!!何故?
「エリー、お前は、ここでジッとしてなさい。いい子にしてたら、あとでご褒美だからな……」
「……。」
エリーに語る優しさが、もう少し社員に向けてくれたらいいのに……。
「花井?」
「はい。何も言ってません」
「そうか……」
言える訳がない。
こうして……
私は課長と一緒に!
課長の寝室に!
私の荷物を入れ終えました……。
いい匂い……。
「なんか、足らんものあ……」
「だ、大丈夫です! 間に合ってます!」
「そうか……。はぁっ」
最後のため息はなに?
「……。」
「なんだ? なんか、問題でもあるのか?」
何故?何故?何故ーーーっ?!
何故、同じベッドに寝るの?!
「部屋が、狭いんだからしかたないだろ?」
は?寝室だけで、十五畳位あるとか聞きましたが?
課長のベッドは、ダブルベッド……。
「しまうのは、全部しまったか?」
「あー、はい」
「じゃ、いくか?」
「は? 何処にですか?」
半ば強制的に車に乗せられ、またしても……。
ほんと、この人の金銭感覚おかしいんですけどっ!!!
こんなに私の買ってどうするの?
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