シンデレラは、眠れない

月詠嗣苑

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七話

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「せーの、かんぱーーーい!」

「「「かんぱーーーーいぃぃぃ!!」」」

 今日は、仕事納めの日。

「えー、先輩。ご実家帰らないんですか?」

「まぁね。まだ、コロン怖いし」

 全世界を揺るがした新型ウイルス コロンが、だいぶ落ち着いてきたと言っても、完全に0になった訳ではない。

「莉子ちゃんは、おうち近かったっけ?」

「はい! 田園調布なんで、すぐ行けるんです」

 あー、お嬢様だからねぇ。莉子ちゃん。

「でも、もう社会人になったんだからって、お年玉貰えないんですぅ」

「……。」

 お、お嬢様だから。何も言うまい。

「でと!」

 でと?え?まさか……?

 莉子ちゃんが、口にしようとしたグラスを奪うと……

「ちょ、ちょっと誰?! この子にお酒飲ましたのっ!!」

「さぁ?」

「誰かと間違えた?」と犯人分からず。

「荒木くん?」と聞くと、激しく首を振る。

「莉子ちゃん、あなたお酒とてと弱いんだから、あなたは、こっち!」とジュースのグラスを渡す。

「ちぇっ……」

 舌打ち?まさか確信犯?

「莉子も大人の世界に入りたいのに。パパもママも莉子には、お酒飲むな!ってうるさく言うし……先輩だってぇぇぇぇ……」

 泣き上戸?かと思えば、下らない係長の親父ギャグにもかなり反応して笑いまくるし……。

 可愛いから、飲むな!ではなく、うるさいから、飲むな!なのね?

 それでも、ジュースやウーロン茶を飲ませ続けたせいか、酔いも覚め、誰よりもお腹を満たせていた。ヤケ?

 課長は、飲んでるのに、酔わない?のかなぁ?

 宴も終盤になると、帰り道が同じ方向の人は、同じタクシーに乗り、莉子ちゃんは、お母さんが迎えにきた。

「本当に良くしていただいて、ありがとうございます。また、来年も……」

「はい」

 めちゃくちゃ、丁寧にお辞儀されて、なんか中途半端なお辞儀をした自分が恥ずかしくなった。

「行ったか?」

「はい」

 あおに残されたのは、ホテルに泊まる組数人と私と課長。

「じゃ、お前ら気をつけて帰れよ」

「お疲れさまでーーーすっ!!」

「今年も良い歳をーーーっ!!」

「先輩、おやすみっ!!」

 それぞれの挨拶をし、別々の方向へ。

「少し歩くか」

「はい」

 駅前の繁華街。行き交う人も楽しそうに歩いたりしている。

 その中の私達も、側から見ればそう見えるのだろうけど……。

「今年も色々あったなー」

「はい」

 色々あり過ぎたけど!!

「花井?」

「はい」

 名前を呼んだのに、課長は何も言わないで、笑ってる?

「帰るか?」

「帰ってますが?」

「今年もあと少しだな…」

「そうですね。そういや、課長は、ご実家には?」

「さぁな。お前は?」

「帰りませんが? ちゃんと言ってありますし」

 課長は、少し私の顔を見て、

「そうか」と小さく言った。

 なんだろう?やっぱ、課長酔ってるのかな?


「え? 今から……ですか?」

「あぁ。お前もこの部屋じゃ、狭いだろ?」

 部屋を狭くしてる原因、あなたのプレゼント攻撃ですけど?!

「でも、私まだお金貯まってませんけど……」

「は? 引っ越すとは言ってないが? 部屋を移動させると」

 寝ている所を起こされたから、聞き間違えたのかな?

「お前の荷物は、俺の寝室に移す」

「はい? 今、なんと?」

「聞こえなかったか? お前の荷物を俺の寝室に移す、と言ったのだが……?」

 何故?何故そうなる?

 確かに課長の寝室は、今まで住んでたマンションの部屋よりもただただ広いけど!!

「安心しろ。手は出さん!」

 でしょうけども!!何故?

「エリー、お前は、ここでジッとしてなさい。いい子にしてたら、あとでご褒美だからな……」

「……。」

 エリーに語る優しさが、もう少し社員に向けてくれたらいいのに……。

「花井?」

「はい。何も言ってません」

「そうか……」

 言える訳がない。

 こうして……

 私は課長と一緒に!

 課長の寝室に!

 私の荷物を入れ終えました……。

 いい匂い……。

「なんか、足らんものあ……」

「だ、大丈夫です! 間に合ってます!」

「そうか……。はぁっ」

 最後のため息はなに?


「……。」

「なんだ? なんか、問題でもあるのか?」

 何故?何故?何故ーーーっ?!

 何故、同じベッドに寝るの?!

「部屋が、狭いんだからしかたないだろ?」

 は?寝室だけで、十五畳位あるとか聞きましたが?

 課長のベッドは、ダブルベッド……。

「しまうのは、全部しまったか?」

「あー、はい」

「じゃ、いくか?」

「は? 何処にですか?」

 半ば強制的に車に乗せられ、またしても……。

 ほんと、この人の金銭感覚おかしいんですけどっ!!!

 こんなに私の買ってどうするの?
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