2 / 6
2
しおりを挟む
今朝は、夢見が悪かった。
思い出したくもない。中学校生活。
同じ"悠馬"でも、こうも違うのか!!
「あれ? ネクラちゃん。今日、体育見学なんだ……」
「あ、はい」
そんな佐田さんも、見学なのね。
今朝は、なんか頭痛がしたから……。
走り幅跳び……やりたかったな。
中学の時は、部活も陸上部にしたけど、結局辞めちゃったし。
帽子は被ってるし、日陰での見学。それでも、5月の日差しは暑く……
なんだろ?目がぼやけてくる。気持ち悪……
ズサッ……
「え? ちょっと、ネクラちゃん?! どぉしたの? ねぇっ!! ちょっと、先生ー!!!」
私は、焦りつつも体育の先生を大声で呼んだ。
「おーい! 小松崎? 大丈夫かー? 聞こえるかー?」
誰? 見えない……目が……
あとから聞いた話だと、私が気を失って倒れてから、体育の先生が私を抱き上げて保健室まで運び、ママに連絡をしたそうだけど、その日に限って動物病院に急患が何匹もきて、落ち着くまで預かって欲しいとお願いしたそうなんだけど?
「私、なんで部屋のベッドで寝てるの?」
「あー、お友達がね。運んでくれたのよ……」
ママは、そう言ってた。
まさか、あの子がねぇ。
「あの! 俺が、コイツを運んできた事、言わないでくれますか!?」
引っ越したのは、知ってたけど、まさか同じ高校で同じクラスになるだなんて……。
「わかったわ。でも、あなた変わったわね」
頭を下げ、また何処かへ走って言ったが……。
あの子には、散々悩まされてきたけど……。パパにも、内緒にしといた方がいいわね。
「んー、やっぱ熱上がってきてるわねぇ」
「朝は、なかったんだよ。頭は痛かったけど」
ママに薬を貰って、飲んで、寝たら夜には良くなった。
でも、なんかずっと名前を呼ばれてたような気がするんだよねぇ。夢かな?
翌日は、念の為にお休みして病院へ行ったら、風邪と言われた。
玄関開けようとしたら、ドアノブに袋がぶら下がってた。
「なんだろ? ポカリとビタミン剤とゼリー? しかも、私が昔よく食べてたやつ」
「あ、きっとパパかも?」
あらあら……。きっと、学校の昼休みにきたのかしら?
夕方になるとチャイムが、鳴った。ママが、玄関で対応してたんだけど……。
「はい、これ。今日の課題と明日の予定だって。あと、これ……」
渡されたのは、プリントとポカリ……
「誰?」
「さぁ? 名前聞こうとしたら、走っていったから」
「ふーん。誰だろ?」
心当たりなんて、全くないし。
翌朝…教室に入ると、佐田さんが声かけてきて驚いた。
「大丈夫だった? 風邪?」
「あ、はい。あの、ありがとうございました」
「あ? いいって、いいって! 誰だってあーなれば、驚くの当たり前だし」
「ふーん。風邪か。俺は、お前風邪引かないと思ってたけどな」
「悠馬ーっ!!」
岡崎悠馬の周りは、瞬く間に人が集まる。
ガタンッと他の子の足が机に当たったけど、ごめんね、と謝ってくれた。
案外、怖そうに見えても、優しいのかも知れない。
「ほい……見舞いの品だ」
目の前に置かれたのは、ポカリだった。
「えー、ネクラちゃんばっかズルイー! 悠馬ー!」
「ばーか! たまたま、押し間違えただけだ」
「ありがとうございます」
「お前さ、言葉使いなんとかしろ」
「はい?」
午後の図書室。今日は、午後から空模様が怪しくなってきた。傘は持ってるけど。
「俺たちは、ある意味対等なんだよ」
「……はぁ」
「いちいち、ありがとうございますとか、いらねーの」
「あ、はい……」
んー、そう言われてもこの喋りというか、昔からだからなぁ。困った。
5時間目は、特修だった。いわゆる、自習なのだが、どの科目をやってもいいらしかった。
─って、寝てるし。あなた、昼間も図書室で寝てたじゃないの!
「明日、古文のテストか……」
何気なく呟いたつもりだったが、岡崎悠馬が目を覚ました。
「どこら辺?」
「P68~80」
普通に返事をしてしまった。しかも、岡崎悠馬は本当に頭がいいし、運動能力も素晴らしい。
でも、なんで金髪なんだろ?
そんな事を考えながらも、1人真面目にテスト勉強をしていった。
結果……
「上がった……点数が上がった」
「幾つ?」
「90」
─ってまた!
「ふーん。どれどれ?」
っ!!
勝手に持ってかないでよ!なんて怖くて言えない。
「あれだけ真剣にやってたのに? これだけ?」
「え?」
「あたまわりーな、お前」
「な……」
なにもそこまで言わなくてもいいでしょ! 岡崎悠馬には、関係ないんだから!
「あ……いや」
反論?して、倍に返ってきたらと思うと怖くて出来ない。
「悠馬、言い過ぎー。ネクラちゃん、可哀想じゃん」
何故か割り込んできたのが、佐田さんだった。
「ほら、ネクラちゃんも反論しなきゃ」
「ふっ、お前らがそれ言うのかよ。お前もお前だ。バッカじゃねぇの? たかが、点数……」
ガタンッ!
パァーーーンッ!!
これには、周りも驚いた。私も驚いた。
「え? あっ! 違うの。これは、違うのーーーーっ!!」
また上履きのまま……
学校から逃げてきた……
逃げた先は、猫神様の神社。
ここには、たくさんの猫が何故か集まる。癒される……。
「あんなことするつもりは、なかったんだけどな……」
にゃぁ?
猫があちこちから、顔を覗かせている。
「おいで……」
猫が近寄り、身体を擦り付ける。
「お前達は、自由気ままでいいね。羨ましい」
優しく身体を撫でると、お腹をみせてくる。私の周りは、猫だらけになった。毛が……
ひとしきり猫を堪能したあと、自宅へ帰るとママが……
「綾ちゃん、これ。お友達が持ってきてくれた」
学校のカバンやら外履きやら……
「あなた、お友達と喧嘩でもしたの?」
「そうじゃないけど……」
「あと、これもね」
いちごミルクにチョコムースに大好きだったゼリーが入ってた。
でも、いったい誰だろ?ママに聞いてもお友達としか言わなかったし。
学校、行きたくないな……
そう願ったのが、良かったのか、悪かったのか……
「今日は、おとなしく寝てなさい」
39度の熱を出した。
頭が痛い……
夢の中に猫と誰かがいた。
笑って私を呼んでる声がした。
でも、近づこうとすると何故か離れていって止まる。
誰だろう?
伸びた手を掴んだけど、顔が見えない。優しくて、あったかな手だった。
その手で優しく頭を撫でられた。
「あ、じゃ失礼します。お大事に……」
「ううん。それは、いいんだけど……」
「オレは、アイツを傷つけた。傷つけて、傷つけて悲しませたから……」
「……そう」
私は、深々とお辞儀をする彼を見送り、小さく溜息をついた。
恋愛って、こんな苦しかったっけ?
思い出したくもない。中学校生活。
同じ"悠馬"でも、こうも違うのか!!
「あれ? ネクラちゃん。今日、体育見学なんだ……」
「あ、はい」
そんな佐田さんも、見学なのね。
今朝は、なんか頭痛がしたから……。
走り幅跳び……やりたかったな。
中学の時は、部活も陸上部にしたけど、結局辞めちゃったし。
帽子は被ってるし、日陰での見学。それでも、5月の日差しは暑く……
なんだろ?目がぼやけてくる。気持ち悪……
ズサッ……
「え? ちょっと、ネクラちゃん?! どぉしたの? ねぇっ!! ちょっと、先生ー!!!」
私は、焦りつつも体育の先生を大声で呼んだ。
「おーい! 小松崎? 大丈夫かー? 聞こえるかー?」
誰? 見えない……目が……
あとから聞いた話だと、私が気を失って倒れてから、体育の先生が私を抱き上げて保健室まで運び、ママに連絡をしたそうだけど、その日に限って動物病院に急患が何匹もきて、落ち着くまで預かって欲しいとお願いしたそうなんだけど?
「私、なんで部屋のベッドで寝てるの?」
「あー、お友達がね。運んでくれたのよ……」
ママは、そう言ってた。
まさか、あの子がねぇ。
「あの! 俺が、コイツを運んできた事、言わないでくれますか!?」
引っ越したのは、知ってたけど、まさか同じ高校で同じクラスになるだなんて……。
「わかったわ。でも、あなた変わったわね」
頭を下げ、また何処かへ走って言ったが……。
あの子には、散々悩まされてきたけど……。パパにも、内緒にしといた方がいいわね。
「んー、やっぱ熱上がってきてるわねぇ」
「朝は、なかったんだよ。頭は痛かったけど」
ママに薬を貰って、飲んで、寝たら夜には良くなった。
でも、なんかずっと名前を呼ばれてたような気がするんだよねぇ。夢かな?
翌日は、念の為にお休みして病院へ行ったら、風邪と言われた。
玄関開けようとしたら、ドアノブに袋がぶら下がってた。
「なんだろ? ポカリとビタミン剤とゼリー? しかも、私が昔よく食べてたやつ」
「あ、きっとパパかも?」
あらあら……。きっと、学校の昼休みにきたのかしら?
夕方になるとチャイムが、鳴った。ママが、玄関で対応してたんだけど……。
「はい、これ。今日の課題と明日の予定だって。あと、これ……」
渡されたのは、プリントとポカリ……
「誰?」
「さぁ? 名前聞こうとしたら、走っていったから」
「ふーん。誰だろ?」
心当たりなんて、全くないし。
翌朝…教室に入ると、佐田さんが声かけてきて驚いた。
「大丈夫だった? 風邪?」
「あ、はい。あの、ありがとうございました」
「あ? いいって、いいって! 誰だってあーなれば、驚くの当たり前だし」
「ふーん。風邪か。俺は、お前風邪引かないと思ってたけどな」
「悠馬ーっ!!」
岡崎悠馬の周りは、瞬く間に人が集まる。
ガタンッと他の子の足が机に当たったけど、ごめんね、と謝ってくれた。
案外、怖そうに見えても、優しいのかも知れない。
「ほい……見舞いの品だ」
目の前に置かれたのは、ポカリだった。
「えー、ネクラちゃんばっかズルイー! 悠馬ー!」
「ばーか! たまたま、押し間違えただけだ」
「ありがとうございます」
「お前さ、言葉使いなんとかしろ」
「はい?」
午後の図書室。今日は、午後から空模様が怪しくなってきた。傘は持ってるけど。
「俺たちは、ある意味対等なんだよ」
「……はぁ」
「いちいち、ありがとうございますとか、いらねーの」
「あ、はい……」
んー、そう言われてもこの喋りというか、昔からだからなぁ。困った。
5時間目は、特修だった。いわゆる、自習なのだが、どの科目をやってもいいらしかった。
─って、寝てるし。あなた、昼間も図書室で寝てたじゃないの!
「明日、古文のテストか……」
何気なく呟いたつもりだったが、岡崎悠馬が目を覚ました。
「どこら辺?」
「P68~80」
普通に返事をしてしまった。しかも、岡崎悠馬は本当に頭がいいし、運動能力も素晴らしい。
でも、なんで金髪なんだろ?
そんな事を考えながらも、1人真面目にテスト勉強をしていった。
結果……
「上がった……点数が上がった」
「幾つ?」
「90」
─ってまた!
「ふーん。どれどれ?」
っ!!
勝手に持ってかないでよ!なんて怖くて言えない。
「あれだけ真剣にやってたのに? これだけ?」
「え?」
「あたまわりーな、お前」
「な……」
なにもそこまで言わなくてもいいでしょ! 岡崎悠馬には、関係ないんだから!
「あ……いや」
反論?して、倍に返ってきたらと思うと怖くて出来ない。
「悠馬、言い過ぎー。ネクラちゃん、可哀想じゃん」
何故か割り込んできたのが、佐田さんだった。
「ほら、ネクラちゃんも反論しなきゃ」
「ふっ、お前らがそれ言うのかよ。お前もお前だ。バッカじゃねぇの? たかが、点数……」
ガタンッ!
パァーーーンッ!!
これには、周りも驚いた。私も驚いた。
「え? あっ! 違うの。これは、違うのーーーーっ!!」
また上履きのまま……
学校から逃げてきた……
逃げた先は、猫神様の神社。
ここには、たくさんの猫が何故か集まる。癒される……。
「あんなことするつもりは、なかったんだけどな……」
にゃぁ?
猫があちこちから、顔を覗かせている。
「おいで……」
猫が近寄り、身体を擦り付ける。
「お前達は、自由気ままでいいね。羨ましい」
優しく身体を撫でると、お腹をみせてくる。私の周りは、猫だらけになった。毛が……
ひとしきり猫を堪能したあと、自宅へ帰るとママが……
「綾ちゃん、これ。お友達が持ってきてくれた」
学校のカバンやら外履きやら……
「あなた、お友達と喧嘩でもしたの?」
「そうじゃないけど……」
「あと、これもね」
いちごミルクにチョコムースに大好きだったゼリーが入ってた。
でも、いったい誰だろ?ママに聞いてもお友達としか言わなかったし。
学校、行きたくないな……
そう願ったのが、良かったのか、悪かったのか……
「今日は、おとなしく寝てなさい」
39度の熱を出した。
頭が痛い……
夢の中に猫と誰かがいた。
笑って私を呼んでる声がした。
でも、近づこうとすると何故か離れていって止まる。
誰だろう?
伸びた手を掴んだけど、顔が見えない。優しくて、あったかな手だった。
その手で優しく頭を撫でられた。
「あ、じゃ失礼します。お大事に……」
「ううん。それは、いいんだけど……」
「オレは、アイツを傷つけた。傷つけて、傷つけて悲しませたから……」
「……そう」
私は、深々とお辞儀をする彼を見送り、小さく溜息をついた。
恋愛って、こんな苦しかったっけ?
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる