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少女が消えた日②
しおりを挟む「早く…帰らなくちゃ」
傘はさしていたけど、なんかいつもとは違う重さに感じる。
だるい……。
途中、ママに電話しようかと思ったけど、辞めた。
後ろから車が来るのか、車のライトの灯りが……。
私を通り過ぎて、停まった。
?
「もしかして、杏奈ちゃん?」
車の窓から顔を出したのは、ピアノの先生だった。
「神崎先生……こんばんは」
正直、あまり会いたくはなかった。
「どうしたの? 帰り? 乗ってく?」
「あ、いえ大丈夫ですから……」
そう断って先を歩こうとしたけど、先生が車から降りてきて……。
「いいって、いいって。ちょうど、帰り道なんだし」
半ば、無理矢理に車に乗せられた。
「寒かったでしょ? 杏奈ちゃん」
「あ、いえ……」
知らない人ではないけど……。
「コーヒー飲めたっけ?」
「あ、まだ……」
断ったら、持たされた。ま、持つだけならいっか。
それにしても、寒くなってきたな。あったかいのまだコンビニとかでも売ってるし。
「あったかい……」
ほんと寒かった。缶コーヒーのあったかさが……。
いつの間にか眠っていたらしい。
けど……。
目が覚めて、身体を動かそうとしたら、ガシャンと音がして、腕が痛かった。
っ!?なにこれ?!
手錠?私、警察に捕まったの?
と思ったら違ってた。段々と視界もハッキリしてきて……。
薄暗い窓のない部屋。
私が寝かされてるのは、ベッドかな?周りには、小さなテーブルと椅子に腰掛けた……。
「先生?」
「おや? 目が覚めたのかい? 杏奈」
私の声に気づいたのか、神崎先生が、眼鏡を直してこちらにきた。
「これ……」
手錠をされた手を持ち上げると、神崎先生はいつもの笑顔を私に向けてきた。
「やっぱり、きみは可愛い……」
身体が……。足まで繋がれてるし。痛い。
ってか、寒い?あれ?服は?
元々半袖を着てたから、腕を見ても気づかなかった。
「先生? 離して下さい、これ!」
繋がれた手を持ち上げ、先生を睨んだ瞬間!
パァーンッと乾いた音と共に、左頬が熱く痛くなった。
「……。」
怖い……。
「可愛いな、杏奈。お前を初めて見た時は、天使が降りてきたと思ったんだ……」
「い、いやっ……。離して……」
暴れようとしても、ガチャガチャ言うだけで、手と腕が……。
「だめだよ? そんな暴れちゃ……」
「帰して! 先生!」
パァーンッ!
「可愛い僕の天使……。僕はもう知ってるんだよ。君がもう処女でないのは!」
パァーンッ……。
助けて……。ゆう!
怖い……怖い……。
「さぁ、僕の天使。可愛く啼いてくれるかい?」
服を脱ぎ、裸になった先生が、私の上に……。
「いや…お願い…先生…」
先生の薄い唇が、重なって、細い指が……。
っ!!
「ふぅん、今日は誰とシてたの? 僕の天使は……」
「や…めて…」
ザラついた舌が、私の舌に……。
ビクッ……。
「ここは、敏感過ぎるね?」
先生の指が、そこに触れると腰がモゾモゾとしてきた。
「いい反応だね……」
グイッと足が上がって……
ひぃっ…あっ…やめっ…
先生の舌が……
あっ…あっ…あっ……
ビチャビチャ……ズルズルと変な音がしたのに、私の身体はもう反応していて。
「いけないね、杏奈。こんなに濡れて…」
ズプッ…ズチュッ…と先生が、動き始めた。
「やぁぁぁっ!!」
パァーンッ…パパァーンッ……。
痛い…
「あぁ、僕の天使ちゃん。痛かったかい? ごめんよ?」
ひっ…あっ…あっ…んっ…
大声を出したり、暴れたりする度に、先生は私の頬を叩き、いつしか私は、声を出す気力も無くなっていた。
「んー、いい子になったかい。杏奈……」
先生の声だけが、聞こえていた。
「さ、杏奈。これを飲んで?」
そう言われても、頑なに口を閉じたら、今度は、腕にチクリとした痛みがあって、急に眠くなった。
「あ、そうですか。はい。ご心配おかけしました」
チンッと音がして、電話を終えた。
「おかしいわねぇ。お友達のどの家にも来てないだなんて」
メールには、友達の家に泊まるから心配しないでと届いたのに。どの友達の家にも来てないだなんて。
「塾の友達とかは?」
「わかんないわ。いろんな学校の子がいるのよ!」
声を荒げても、無駄だと言うのはわかってはいてが……。
「智弘、やっぱ警察に……」
「いや、辞めておこう。ただ、友達と遊んでて忘れてるだけだとしたら……。」
わかる。わかってはいる。もし本当にそうだとしたら、恥さらしになる。
金か?だとしても、いまどれくらいなら払えるだろうか?
もし仮に杏奈を失ったとしたら?
俺は、母と一緒に俺を見つめてる葉月を見た。
もし、杏奈が殺されたとしたら、俺にはまだあの子がいる。だが、それには……。
「あなた……」
不安げな顔の葉月を見ても、俺は杏奈の死を願っていた。
「だめだ。警察には届けず、こっちでなんとかしよう。どうせ、金が目当てなんだろう」
は?何を言うの?あなた?
あなたは、杏奈が可愛くないの?
お金…お金なら、あの人が…。でも……。
迷っていた。もし、この話をあの人に言ったら、きっと別れを切り出されるだろう。
別れたくない!でも……。
義母の手を掴んだが、その手はいつものように冷たかった。
こんな時でも、義母は杏奈の身を心配しているというのに。私ったら……。
「おっかしいな。今日の夜、一緒にゲームする筈だったのに……。ピアノかなぁ?」
ベッドの上に寝転んで、携帯を見つめたが、杏奈からのレインもメールもなかった。
「お兄ちゃーん! お風呂だってー!」
妹・花梨の声が上に届いて、携帯を置いて風呂に入りにいった。
ここは、どこだろう?
ぼんやりとした灯りが見え、そこがさっきの部屋であると認識したのは、神崎先生の声だった。
「先生……」
さっきはベッドだったけど、今度は普通に椅子だった。手も足も手錠で繋がれていたけど、何故か服を着ていた。
私の趣味ではない。真っ白で、フワフワとしたフリルやレースが付いていた。
「どうだい? 可愛いだろ? 僕の天使だ」
大きな姿見だろうか?その鏡には、真っ白な服を着た私がいた。頬はまだ腫れているが。
ビクッ……。
「ごめんよ? 痛かったかい?」
先生の手が、怖くて思わず肩をすくめた。
「いや……」
いつもの先生が、なんで?
確かに、よく私に触れてはいたけど、それはどの子もそうだった。女の子も男の子も……。
「どうだい? 僕の天使……」
「帰りたい……。帰らせて……」
どれだけ先生に言っても、先生は私をぶつだけで、帰らせてはくれなかった。
「さぁ、おいで。僕の天使……」
手足を繋がれたまま、私はバスルームへ連れてかれた。
ここは明るいけど、全ての部屋に窓はなかった。ここは、どこなんだろ?
「さぁ、お風呂だよ。一緒に入ろう……」
手錠は、手すりに繋がれて、全てを脱がされ裸に……。
「可愛いな、僕の天使は……」
先生の指が、私の中に入ってきた。
「やぁ……帰りたい。先生……」
「君は、僕の天使だから。帰らせない……」
痛い……怖い。
お尻に感じる硬いのは、先生のオチンチン?こんなの……入るの?
「うあっ……」
先生の声も手も……。
「でたら、ご褒美をあげるからね……」
いらない、そんなの。帰りたい……。
ゆう、助けて……。
「これを飲むか、こっちにする?」
私の目の前に置かれたのは、一錠の錠剤と注射器。
「これは?」
「んふふ。知りたい?」
気持ち悪い笑い方。
「どっちも気持ちよくなるクスリかな? どれがいい?」
渋々、私は錠剤を指さし、先生が水を持ってきてくれたのだけど。
その水なのか?錠剤なのか?どちらかが、おかしかったのか……。
「先生……」
身体が、凄く熱くなって……。
「んー、やっぱないかぁ」
杏奈からは、なんの連絡もなかった。電話をかけたけど、電源を切ってると冷たいアナウンスが流れていた。
「ま、明日聞いてみればいっか……」
まさか、その杏奈の身が、危なくなってるとは、その時の俺にはなにも想像だにしなかった。
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