愛の唄……

月詠嗣苑

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四話

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 この病室に通い始めて、明日で一週間になる。

 私よりも沙織と友達みたいな関係になった愛理佐ちゃん。沙織のことを、お姉ちゃんと呼んでいる。

「だって、怖いもん。頭切ったら、ママみたいに……ママみたいに、お目目開けなくなっちゃうもん!」

 まだ幼い子供には、家族の死でも、恐怖心が芽生える。

「でも、愛理佐ちゃんには、あのパパがいるじゃん! いざとなったら、パパが助けてくれるって!」

「……。」

「パパに会いたいんでしょ?」

「うん。あい、パパに会いたい。でも、会ったらパパ困るから……」

 困る?なんで?

「ね、あのテディベア。見た?」

「うん」

「これね、少し複雑な作りになっててね……」

 私は、テディベアのぬいぐるみを取ると、首についてる可愛いリボンを押した。

[愛理佐、誕生日おめでとう。一緒に祝ってやれんでごめんな。俺は、なかなかお前に会えないけど、お前が会いたいって言ったら、飛んで行くから。七歳の誕生日おめでとう]

「……。」

「かっこい……」

「あいがぉう……おばだん……」

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった愛理佐ちゃん。

「お誕生日だったんだ……」

「ずぎだげご……」

「そっか、じゃ、明日ここでやり直そっか」

「沙織……」

 勝手な事を……と思ったら、あまり騒がなければ大丈夫ですからと看護部長さんに言われ、今日の事を奥田に伝えた。

「泣いた……か。そうでしたか」

「はい。あなたに会いたがってます。でも、なんで……」

「ま、この世界にいるとね……」

 少し寂しそうな笑顔だった。

 
 でも……

「でね、今日は、愛理佐ちゃんに素敵なプレゼント用意したんだけど、貰ってくれる?」

「なに?」

 沙織が、病室のドアを開けて……

「や、やぁ……」

 引き攣った笑顔の奥田と、

「ぱ、パパだっ! おばちゃん! パパだよ! パパ! 愛理佐のパパ!」

 目に涙を浮かべ、ベッドから出ようとする愛理佐ちゃんを強く強く抱きしめた奥田……。

「ママ、帰るよ?」

「うん……」

 沙織に手を掴まれて、静かに家に帰った。


「いいね、父親って……」

「そうね……」

「あ、あのさ……ママ?」

「ん? なぁに?」

 沙織が、何か言いかけたその時に、夫が帰宅。沙織は、部屋へと上がっていった。

「どうしたんだ? アイツ……」

「さぁ? でも、あなたどうしたの?」

「これ、渡したくてな」

 渡されたのは、給料明細。無遅刻無欠勤、早退無し。

「ご苦労様でした」

「あぁ」


 しばらくして、奥田から連絡があって、いつもの喫茶店へ。

「ありがとうございます」

「いえ……」

 愛理佐ちゃんが、手術する事が決まった。

「まさか、あんなにも我慢してたなんて……」

 テーブルに出された一枚の封筒……。

「これは、姉と俺からです。なんか、娘さんも来てくれたとかで……」

「いえ、そんな。あの子が勝手に……」

「助かりました。あ、これは、姉から。アメリカのお土産です。あと、こっちは俺から……」

 いつものように送って貰って……。

「……。」

「す、すみません。つい……」

 普通、つい、でキスをするのだろうか?

「ちょっと、驚きました……」

 お礼を言って、帰ったが、玄関に着くなり、ヘナヘナと倒れ込んでしまった。

 私、あの人以外の人と初めてキスを……。

「……で、ボォッとして、鍋ごと焦がしてしまったと?」

「ごめんね。だから、今夜は外で……」

「たまには、いいもんだな……」

 奥田から渡された封筒の中に、現金二十万円と有名レストランのプレミアムチケットが、三枚入っていた。

「これ、一枚で五人使えるんだって、ここに書いてある」

 沙織が、声を高くして言った。

「でも、ほんとにここそれで食えるのか? ここ高いぞ、きっと……」

「たぶん……」

 もし、それが使えなかったとしても、手元には貰った現金もクレジットカードもあった。

 夫には、職場の社長がみんなにくれたと言っておいた。沙織は、知っている。少しなら。

 和洋折衷のレストラン。

 三人一致で、和食。食事の出すタイミングも味も素晴らしかった。

「四つ星レストランって、あーゆーワゴンで運んでくるんだ」

 ご飯、汁物、漬物からめいんに至るまで……銀色のピカピカ光った台に乗せて、各テーブルにウェイターが行く。

「でも、美味しいわね」

「うん。美味い……」

 沙織に至っては、デザート三人分も食べたのに、追加でまた頼む始末。

「ありがとうございました!」

 深々とお辞儀をされ、私達は帰ってきた。

「じゃ、私お風呂入ってくるね!」

 沙織は、あれだけ食べたのに、まだ余裕がありそうな感じ。

「子供は、怖いな……」

「ええ」

「奈々……」

「なに……」

「今夜、その……お前の部屋行っていいか?」

 夫が、静かにいった。何を意味するのかは、わかってはいたが……。

「え、ええ……」

 そう私達は、夫婦。寝室は、一階と二階に分かれてるだけ。

 沙織が、お風呂から出ると、雄一がお風呂へ……。

「結局、私はいつも最後なのよね……。いいけど……」

「あなた……」

「奈々……」

 もう何年、肌を合わせてないだろうか。

 夫の手が、乳房を弄り、先端にネットリとした舌が絡みつく。

 あぁっ!

「いい濡れ具合だ……」

 夫が、私の中に入り、腰を動かす……。

 あっ……いいっ……んんっ……

 上には、沙織がまだ起きているのか、天井からゴトゴトと音がする。

「奈々……」

 でも……。

 何故だろう……。

 夫に抱かれてるのに、私は奥田を想像していた。

 スマートな身体付きなのに、腕も背中も逞しく筋肉がつき、細身の顔に優しそうな目をした奥田に抱かれたい……。

 そう思った……。

「愛してる、奈々……」

 ウゥッ……アァッ……アァッ……

 脈を打っている。

 今更、中に出されても妊娠はしないだろうが……。

 思えば、沙織を産んでからもSEXはしたが、妊娠の兆候はなかった。

 適当に処理し、そそくさと二階へと昇る足音を聞いて、心なしか虚しさを感じた。

 今頃、奥田は何をしてるのだろうか?

 連絡をしたら、迷惑になるだろうか?

 脱がされた物を再び穿き直し、布団に入ってもなかなか眠れなかった。


「沙織……」

「なに……」

 ストレッチをしていたら、ドアが開いてパパが……。

「明日、休みだろ?」

「……。」

「母さんは、仕事だから……」

 その言葉が、何を言おうとしてるのか?

「いいよな?」

「うん……」

 あのスマホに保存された、私の卑猥な動画と画像……。

 消して!と頼んでも消さずに悪魔は私の身体を弄ぶ。

「知られたくないだろ?」

 悪魔の手……息遣いが……

「や、まだ……ママが……」

「大丈夫。寝てるさ、きっと。バレても俺はアイツに言うよ? お前から誘惑してきたって……。なぁ、沙織……」

「……。」

 従うしかなかった。ママには、知られたくない……。

 っ!!

 舌が当たる度に、私の身体は震える……。

「お前、待ってたのか?」

 は?

「挿れっからな……」

 ズブズブと悪魔のソレは、私の中に侵入し、ゆっくりと動いては、私にあれこれ強要する。

「いいよ、いい……」

 グリグリと敏感な部分を押しつぶすように、動いては、勝手に終わる……。

「な、これいいだろ?」

 っ!?

 顔こそ見れないが、明らかに私の身体が写っていた。

「明日、楽しみだな。乱れてくれよ?」

 悪魔はそう言うと、笑って出て行った。

 ダンベルで、殴ったら死ぬかな?
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