初恋は、実りませんか?

月詠嗣苑

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一話

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「では、今学期の学級委員は、女子は、桜井、男子は、石川で決まりだな」

 パチパチパチッとうるさい位の拍手が、ここ二年一組に広がった。

 僕は、チラッと隣に立っている桜井さんを見た。可愛い感じの女の子で、長い髪をポニーテールにしていた。

「じゃ、これでホームルームは終わりだ」

 担任の栗林先生は、一年の時と同じ。

 先生が、教室を出て行くと、急に室内が騒がしくなった。


「……にしても、来週から学力テストなんて、やだねぇ」

 誰かはわからない。二年になっての初日だから。

「な、今日お前んち行っていい?」

 隣の席の保が、鞄に新しい教科書を詰めながら聞いて来た。

「いいけど。なんで?」

 保とは、小学五年からの付き合いだけど、お互いあまり一緒には遊ばなかった。

「俺んちのブイーダ壊れたんだよね。だから、ちょっとだけ! ね?」

「別にいいよ。今日、母さん仕事でいないから……」

 僕の母さんは、お父さんの事があってから、他所の人間が自分のテリトリーに入ることを嫌がる。一年の家庭訪問ですら、断固として首を縦に振らず、職場まで来てもらったと言う強者だった。

 自転車の荷台に、鞄をくくりつけ、

「一度家に帰ってからいくから」と言う保と校門で別れ、僕は真っ直ぐ自宅へと急ぐ。

 途中、何度かLIMEのバイブが鳴ったが、僕はそれに気付かなかった。


「ただいま」

 そう言っても、母さんと二人だけの部屋は、少し寂しいとは思う。

「あ、来てたのか……」

 スマホに届いたLIMEの返信を出し、渡された書類は、必要な物を母さんが判るように母さんの部屋のテーブルに置き、教科書に名前を書き始めた。

 それらをし終わると、インターフォンが鳴り、保がラフな服装で入ってきた。

「お前の部屋、前とあんま変わらんな」

「そう?」

 三年前、僕と保は隣同士の家だった。父さんが、居なくなるまでは……。母さんと一緒に、こっちにきて初めて呼んだのが保だった。

「あんま物を入れるとこないだけだよ。で、何持ってきたの?」

 僕がそう聞くと、保はちょっと笑って鞄から一枚のゲームソフトを出した。

「これ……」

「この間、発売された。お前、こう言うの好きだったろ?」

 好きだけど、そのゲームソフトは、今までのよりも高く、母さんに言っても無理だったものだ。

 こういう時、ちちおやが父親がいたらなとは思うけど、父さんには会いに行けない。塀の中にいるから……。

 二人で、母さんから帰るコールがあるまで過ごした。ゲームしたり、前に流行った映画のDVDを見たり、漫画を読んだり……。

「じゃ、な。今度、数学教えてくれよな」

 軽く手を挙げ、また自転車で来た道を戻る保を見送り、僕は母さんが帰ってくるまでのんびりと過ごす。

[明日、いつもの時間に……]

[はい]

 短いやり取りだけど、僕の胸はドキドキしていた。


「……って、聞いてるの? 優…」

「へっ? なんだっけ?」

 夕食時、ふと母さんに言われ、ハッとした。

「もぉっ! 駄目じゃないの。ちゃんとしなきゃ」

 うっかり、明日の事を考えてたなんて言えなかった。

「明後日の日曜日、おばあちゃんのとこにお見舞いに行くからって言ったのよ」

「うん。別にいいよ。学校、始まったばっかだから何もないし」

 僕が通ってる中学は、部活は強制ではない。親が仕事でいないとか、下の子の面倒とか、おじいちゃんらの介護とかやってる子がたくさんいるから。僕も例外として、認められている。

「時間とかわかったら言って。おばあちゃんの好きな和菓子でも買っていかないとだし。母さん、ここはいいから、お風呂に入ってきなよ」

 食器の後片付けは、交代制ではあったが、比較的僕がやるようにしてる。

 ヴヴッとLIMEが鳴り、僕は風呂場の方へ顔を出すと、スマホを見た。

[明日は、何時まで?]

[夕方まで]

[飯、どうする?]

[作ってくれるの?]

 耳を風呂場の方へ集中させながらも、短い文だけのやり取りが続く。

[南口のいつものとこで、待ってるから。おやすみ]

[おやすみ……]

「……って、うわっ! いつ出たの?」

 いつの間にか、母さんがパジャマ姿で僕を見て、ニヤニヤしていた。

「優くん、もしかして彼女?」の問いに、僕は目を大きく見開いた。

「いや、先生だよ。月曜日から、学力テスト始まるからさ……」

 早口に捲し立てるように母さんに言ったけど、半信半疑な感じだった。

「あぁ、栗林先生だっけ?」

「う、うん」

 大丈夫!誤魔化せた筈だ。

 母さんは、水を飲み干すと、軽く手だけ振って自分の部屋へ……。

「ふぅ、焦った。お風呂、お風呂ーっと」

 僕は、慌ててお風呂に行き、思いっきり……。


「……冷たい水を浴びた、訳か」

 カフェ・トドールのテーブルを挟んで、その人は爽やかに笑った。

「そこまで笑う?」

 お互い好きな飲み物を買って、席に座る。

「でも、熱が出なくて良かったな。優……」

「はい……」

  テーブルの下から、秋葉さんの柔らかな手が伸びてきた。

 それをそっと握り返す。

「行くか?」

 秋葉さんの声に、頷く僕。

 トドールを出た僕達は、どこにも寄らず秋葉さんの住むマンションへ。ここでの僕は、秋葉さんの弟に変身する。


「可愛いよ、優」

「ありが……とう。なんか、照れる」

 着ていた服を脱ぎ、僕は秋葉さんと一緒にバスルームへと行く。

 バスタブの中に入ると、秋葉さんは僕を膝の上には乗せ、首筋にキスをしてくる。

「んっ……」

 軽いキスから、強く吸い込むようなキス……。

 次第にその手が、僕の……。

「待てた?」

「うん……」

 秋葉さんの指が、僕の胸の突起を挟み、空いた手は硬くなりつつあるソレを優しく包んだ。

「凄いよ。早く食べたくなる」

 声だけで、僕は痺れてくる。

「秋葉……さん」

「行く? 抱かれたい?」

 いつもこうだ。いつも、秋葉さんは、こうやって僕をいじめて笑う。

 身体を拭くのもそこそこに、秋葉さんは僕を抱き上げると、ベッドへと運ぶ。

「可愛いよ、優……」

 秋葉さんの少し薄い唇が、そっと近づき唇が重なった。

「愛してる……」

「僕も……」

   秋葉さんの声も息遣いも心地いい……。

「あぁっ……っ!」

「足、開いて? 触りたい……」

   柔らかな髪……。

 ピチャピチャと湿った音を聞くと、僕はなんかいやらしい気分になる。

 小刻みに動く舌も少し当たる歯先も……。

「優? 愛してる。今日は、どっち? 言わないと挿れない……」

 秋葉さんは、色んな所で僕の反応を愉しむ。僕もまた、そんな秋葉さんに、おねだりをする時もある。

「前……。顔、見たい……」

 身体に力が入らない。痺れたような、甘い感覚……。

「挿れる?」

 僕は、秋葉さんの硬く天を仰いでるソレは、熱く脈を打っていた。

「……れてみる」

 いつもは、あまり触らないモノを触るのも勇気がいったが、初めて自分で自分の中に挿れるのと、また……。

「うっ……」

 自分の中は、十分に濡れているのに、イザ挿れていくと……。

「クッ……。うまいよ、優。あとは、任せて……」

 秋葉さんがそう言った瞬間、ズンっとした感覚が身体の中心に響いた。

「ふふ、最近ヤッてないから、もう出そう」

 秋葉さんのが自分の中で動いてる。

「やっ……。まだ、逝かないで……」

 秋葉さん……。

 今日は、いつもより……。

 そんな事を思いながらも、僕は秋葉さんに抱きついていく。

 パンッパンッパンッと激しく肌がぶつかり、秋葉さんの汗が僕の胸に落ちる。

 あっ……あっ……いっ……

 ベッドの軋む音も時々聞こえる自分の名前……。

「秋葉……秋葉……」

 激しく突かれる度に、僕は声を出す。

「優……優……。イクぞ、イクッ……」

「秋葉さん……」

 そう呼んで手を伸ばそうとしたら、目を隠された。彼曰く、イッた後の顔は見られたくないらしい。

 それから暫くベッドの中で休んだり、またイチャイチャしたりして、秋葉さんお手製のチャーハンを食べて、夕方近くにいつもの待ち合わせ場所に送って貰った。

「じゃ、月曜日な!」

 秋葉さんは、そう言うと手を振ってまた車を走らせた。

「急がないと。母さんが帰ってくる……」
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