上 下
8 / 11

8

しおりを挟む
「凛、これなんかどう?」

 季節は、もうすぐバレンタイン!

 昨日、お姉ちゃんが本屋で買ったバレンタインチョコレートの本をふたりで見てる。

「こっちのは? これなら、切り分けて友チョコに出来るし……」

「そうねぇ……」

 本を見てお姉ちゃんは、ちょっと嬉しそうに笑ったのは、田中さんの事を考えてるからかな?

 私も田中さんの事が好きだけど、それはお姉ちゃんにも田中さんにも言えない。なのに……。

 キスしちゃったんだよね。自分が、あんな大胆な行動をするとは思わなかったし。まして、風邪で寝込んでた人相手に……。

「凛、あなたは決まったの?」

 そう聞かれて、ボォッとしてたことに気付き、慌ててページを捲った。

「あなたもいつかは、好きな人に贈るんだから、自分で出来るようにならないとね……」

 そうお姉ちゃんは言ったけど、いつもお姉ちゃんが手伝ってくれる。

「そ、そうだね。じゃ、いつ材料買いに行く?」

 そんな予定を立てた翌日……。


「いい? あまり無駄遣いしないのよ?」

「うん、わかった」

 友達とミスミのバレンタインフェスタに行くと行ったら、お小遣いを貰った。

 お姉ちゃんは、お姉ちゃんで、田中さんとデート……。

「じゃ、行ってくるね!」

「気を付けるのよー!」

 玄関で見送られ、私は優愛達と待ち合わせにしたバルックスに向かった。

 行きたい所は、高校へ向かう途中の駅付近にあるからどれも行きやすい。だから、ここもお気に入りのカフェ。

「待った?」

「全然!」

「うん。貯金前に来たとこー」

 女子高生3人でも、ひとたび喋れ場周りからしたら煩く感じる。温かい飲み物を買って、それぞれ手に持ちながらミスミへ。

「今日って、初日だっけ?」

「ううん。もう1週間たってるよ……」

「……だよね?」

 フェスタの会場は、異様な混み具合で、年明けにやる福袋の売り場よりも凄かった。

「あっ、これじゃない?」

 優愛が、入り口に立ってた看板を指差す。

「バレンタインディナー? へぇ……」

「あぁ、凛だぁっ!」と大きな声と共に後ろからタックルされ、躓きそうになった。

「「香織に翔子ー?!」」

 クラスは違うが、同じ高校2通うお友達。

 女子高生5人で、中を周るも……。

 一通り見て、それぞれ気になったチョコレートを買って、出た頃には冬なのに軽く汗が……。

「まぁ、抽選にはハズレちゃったけど……」

「そのハズレでも……」

「リュウ·シマムラのチョコレート!」

「来て良かったよねぇ!!」

 久々の休み!

 何故、うちの学校はこうもテストが多いのか?いつも、悩む。土日でもテストで学校行ったりもするのに。

 近くのファミレスで、軽くランチしたり、本屋で参考書を選んだり、お店巡りをした。

 お互いチラチラとスマホを見つつ……。

「彼氏?」と聞けば、「違うよ」と返す子もいれば、私には誰もが、「お姉ちゃん?」としか聞いてくれない。

 ま、今日は、その田中さん、お姉ちゃんとデートしてるから、PAINはなかった。

「凛、彼氏出来たらさ、気をつけなよ?」

「何を?」

「アレよ、アレ……」

 アレ?アレとは?

「まだ、早いんじゃね? 凛には……」

 なんで、みんなして私を見て笑うの?

「ひ、に、ん!」

 ひにん?避妊?はっ!?

「えっ? まさか?」

 たじろぐ私に、私を見て笑う4人。

「もしかして、もうみんなしたの?」

 いくらなんでも女子高生。そんな恥ずかしい事を大きな声で出来ず……。

 そんな話を近くに住んでいた翔子の家でするだなんて……。

 みんな経験するの早くない?

「……はぁっ」

 家に帰っても、なんかまだ胸がドキドキしてる。

 もし、田中さんとそんなことには……。

 ならないだろうけど……。

 お姉ちゃんの婚約者だからね。いずれは、私のお義兄さんになる人だし。

「今年は、受験生だから……」

 大学生になっても、1人だったらどうしよう。そんな事を思ってた時、田中さんからPAINが届いてバレンタインのデートを前日の13日にすることになった。

「今週末は、忙しいな」

 お姉ちゃん、有給取って3連休にしたって喜んでたし、最終日はバレンタイン当日で田中さんとデート。

 好きな人がいると、あぁも嬉しくなるんだなって、時々、お姉ちゃんが羨ましくなる。


「ね? うちら、今年受験生だよね?」

「うん」

「授業、終わったっけ? カリキュラムどうなってる?」

 学校に行くと黒板に張られた今月の予定。月末までビッシリテスト!授業なんて、あまりない。

「書いてある。ほぼテスト。来月、卒業式あるけど、そっちに授業入ってるのか……」

 溜息やらうんざりする声が、教室内に出る。

「3年になったら、テストと授業が交互にやってくる」

 無言で互いを見て、大きな溜息をついた。


「へぇ、そんなにテストあるの? あ、そこ違うね? 答えは、S89だよ……」

 今週は、何故か毎日家庭教師として田中さんがやってきてる。

 理由は、簡単!お姉ちゃんが、呼んだから!受験生だからね……。

 でも、会えるのは嬉しいから苦手な数学でも頑張る。

「そろそろ、夕飯だね。今夜は、なにかなぁ?」

 この田中さんのニヤケ顔。お互い相思相愛で、結婚をする仲。余程、お姉ちゃんのお料理が好きなのか、一人暮らしで家庭料理に餓えてるのか……。

 下からお姉ちゃんが、ご飯だよと知らせてきて、子供みたいに田中さん階段を降りて、うるさいと注意されたし……。

「だって、うっちゃんの料理、うまいもん! おかわり!」

「はいはい」

「私の分、残しといて下さいね! 私もお姉ちゃんの炊き込みご飯好きなんだから!」

 お婆ちゃんは、まだ入院してるけど、叔父さんから沢山野菜やら海の幸を頂いて、今夜はかなり豪勢なおかず。

「俺、鰤って煮るか焼くかしか知らない。刺し身初めて食う」

 普通にスーパーに売ってるけど、知らないのかな?ま、仕事終わる頃には閉まってるだろうけど。

「多く作りすぎたから、少し包むわ」

「感謝!」

 炊き込みご飯以外で!!

 夕飯をしっかり3杯もおかわりして、お姉ちゃんのお手伝いと私の勉強も見てくれた田中さんは、お姉ちゃんが用意してくれたおかずを嬉しそうに持ち帰った。

「なんか、アレだね。田中さん、お姉ちゃんからチョコレート貰ったら……」

「鼻血出したわ。誕生日プレゼント渡しただけで……」

「……。子供だ」

「そうね、大きな子供だわね」

 二人して笑う。お姉ちゃんが、田中さんを好きになったのが、わかる!

「なんかねぇ、頼りないのよねぇ。どこか……。」

 そこから、何故かお姉ちゃんと田中さんが、付き合うようになった経緯を聞かされた……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...