上 下
4 / 11

4

しおりを挟む
「新年明けまして、おめでとうございます!」

「新年明けまして、おめでとうございます!」

「はい、宜しい。」

 新年の挨拶は、お姉ちゃんとの挨拶から始まる。

「……にしても、馬子にも衣装とは、このことね!」

「ははっ。お姉ちゃんが、着付けまで出来るなんて、知らなかったよ。」

 ママの妹である貴子叔母さんから、着物が2つ届いたのにも驚いたけど……。

「前に会社で習ったのよ。」

 お姉ちゃんの会社凄い。

 田中さんの会社も凄いけど……。

「いいこと? せめて、今日だけは、おしとやかになりなさいな。」

「はぁい!」

 新年の挨拶が済むと、お雑煮やおせちを食べるのだけど……。

「おはようございます! 新年明けましておめでとうございます!」

 新聞を取りに行こうとしたら、門塀のとこでウロウロしてる田中さんを見つけた。

「ばかねぇ。そんなのPAINの1つでいいと思うのに……。」

 新年の挨拶を直接言いたかったらしく、そのまま来たと……。

「たまたま、家にいたから良かったけど、もし居なかったらどえするつもりだったの?」

 いつも思う。田中さんは、結婚前からお姉ちゃんの下敷きだと。

「ま、まぁまぁ。一年の始めなんだし……。」

 あまりにもしょんぼりする田中さんをほっておく事が出来ず、お雑煮が冷めない内に食べようと誘った。

「今年は、勉強を頑張って、来年の春には桜を咲かせますっ!」

「そうね。頑張ってね!」

「こ、今年は、色々頑張る。」

「……。具体的には?」

「……。」

 え?なに、この塩対応。このふたり、喧嘩でもしたの?

 お姉ちゃんに、ちょっと冷たく言われただけで、この項垂れよう。

「私は、そうね……。」

 お姉ちゃんは、湯呑を置いて、

「いっぱいデートしたい、かな? だ、れ、か、さ、ん、と!」

 その言葉ひとつで、さっきまで項垂れていた田中さんが、笑顔になることなること!

「っとに、子供なんだからぁ。」

「お姉ちゃん、これ貰っいいの?」

 お姉ちゃんや親戚の人から、お年玉を貰う事はあるけど……。

「ありがとうございます。」

 田中さんから、初めてお年玉を貰った。いつか、このふたりに子供が出来たら、私もあげる身分になるから、これは、貯金しよう!

 そんな事を考えても、時が経てば恐らく忘れる。


「綺麗だね、卯月。凛ちゃん、可愛いね。」

「……。」

 なんだろう?

 この敗北感は……。

 田中さんは、お姉ちゃんの彼氏で、婚約者だけど……。

「はぁっ……。」

「こぉら、溜息つかないの。幸せ逃げちゃうよ!」

 でも、ま、可愛いとは言ってくれたから、よしとしよう!

 近くの神社までお参りに行って、後はおうちでのんびり。

 昼過ぎまで、ゴロゴロ過ごして(着物、窮屈!)、3人で庭で写真を撮った。

 お姉ちゃんは、明日田中さんのアパートに行くから、また着物を着るらしい。

 夕方、おせちもあったけど、田中さんの親からお歳暮に頂いた蟹で……。

「「新年にかんぱーいっ!」」

「……。」

 いったい、この二人は何回乾杯するの?

 ほっぺを赤くしたお姉ちゃんと顔を真っ赤にした田中さん。

 未成年がここにいるんですが?

私は、ポテトチップスをつまみに、コーラを飲む。

「らめれすよぉ。ひょうは、へいほふん、おとまりなのれす!」
(だめですよ? 今日は、啓吾くん、お泊りなのです!)

 あ、泊まるのね?

 え?とまっ、泊まるの?!

 一気に酔いが覚める訳もなく(コーラだから、酔わない)、私は、いまだ飲んで葉笑ったり、話したりと、せわしないふたりを眺めてた。


「す、すみません。田中さん。」

 田中さんより、お姉ちゃんの方が酔い潰れて、田中さんに頼んで和室に寝かせて貰った。

「田中さんは、大丈夫なんですか?」

「あ、俺は、大丈夫。慣れてるから……。」

 仕事でも、お付き合いで飲んだりしますからね?

 鍋や重箱を片付けたりするのも手伝ってくれた。

「学校、いつまで休み?」

 ふたりで、ソファに座ってバラエティー番組を見る。年末年始は、特番が多いから助かる。

「7日です。」

「大変だねぇ。学生も。俺、勉強嫌いだった。」

 は?それだけ、頭がいいのに?!

 お酒の匂いと田中さんの付けてる香水の匂い……。

 隣にいるだけで、なんか、こう……。

「……ちゃぁん!」

 っ!!

 いきなり、抱きしめられて……

 キス、された。

 一瞬、唇が離れたのに、何度も何度もキスをされた。

「田中……さん? え?」

 私は、驚きと戸惑いで、頭の中が大パニック!

 ビクッ……
 
「や、だめ。そんな……。」

 田中さんの大きな手が、服の中に入って、胸を……。

 クゥーッ……カーッ……

「……。」

 お姉ちゃんと間違えたのかな?

 田中さんは、私の上で、眠ってしまい、その大きな身体を押しのけ、和室から掛け布団を持って、掛けてあげた。

「間違えた……んだよね? きっと……」

 お酒が年齢的に飲めない私は、田中さんとお姉ちゃんの様子を見て、こっそりとお風呂に……。

 まだ、頭が動揺してて、着替えを忘れたから、田中さんが目覚めてなくて、ほんと良かった。

 バスタオル1枚でも、恥ずかしいから……。

 パジャマに着替え、そっと胸に手をあてた。

「もし、あの時、田中さんが寝なかったら……。どうなってたかなぁ?」


 でも、翌日は、お姉ちゃんは二日酔いらしかったけど、田中さんは、いつもの田中さんで……。

 特に何も言われなかったから、記憶にないのかも知れない。

「じゃ、行ってくるねぇ!」

 お姉ちゃん。

 ほんと、凄いね。着物を着た姿は、いつものお姉ちゃんじゃなかった。

「のんびりしてね……。お姉ちゃん。」

 二人を見送ると、私は、部屋で好きな音楽を小さく流して本を読んだ。

「3日まで、自由だし。ほんと、みんな薄情なんだから!」とスマホを見てもか怒っても、ひとりだから許される。

 ピピッ……。

〘明日、ふたりで初詣いかない?〙

 田中さんからのPAIN。断る理由は、無かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...