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六話
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なのに!なのに!
「だーめーだ! アルバイトなんて、しなくてもいいだろ?」
「だって!!」
高校生になって初めて知ったのは、アルバイトは、テストの点数(担任の評価)+保護者の同意が無ければ出来ないということ。
「だーめーだ! 俺には、瑠璃を守る義務がある」
「……。 そうだけど、みんなアルバイトしてんじゃん」
「みんな? 誰と誰と誰?」
子供か!!
「ねぇ、お願い! 変なとこ行かないからー!」
何度も何度もお願いし、やっとアルバイト探しをする事の許可が出来た。
そう許可なのである。
「クックックッ……」
「ひど、何も笑わなくたっていいじゃん!」
「つか、お義兄さんだっけ? 過保護じゃね?」
高校に入って直ぐに仲良くなったのは、可愛いもの好きの萌ちゃんとボーイッシュな高美ちゃんだった。
「みんな、アルバイトしてるのに……」
「ま、お義兄さんの気持ちもわかるけどさ。それにしても、アルバイトを探すだけの許可って……」
「だぁって、うちお姉ちゃん亡くなったし……」
全ての手続きは、お義兄さんがやる。
二人で住んでるから、家事とかは分担性だけど、朝のゴミ出しは何故かお義兄さん。
「じゃ、あれだね? いいとこが見つかったら、今度は、応募する許可も必要だし、無事採用されれば、本当の許可になる。長いな……」
「でも、なんでそんなに反対するのかなぁ? 萌には、わからない」
「アレじゃね? 瑠璃、可愛いから、あんま変なとこだと危ないからとかー?」
「萌、アルバイトしなくても、欲しいものはみーんなママが買ってくれるもん」
「まー、あんたの場合、過去が過去だったからね。そりゃ、アルバイトなんかさせたくないって!」
「だろうね。私、初めて萌見た時、フランス人形かと思ったもん」
「んな、大袈裟よー」
確かに、それは嘘では無かったし、高美から過去の経緯を聞いてぞっとしたけど、納得したもの。
木村萌。県内では有名なお菓子メーカーの家に生まれた。母親のお父さんが、フランス人でハーフではあるが、髪以外は母親似で、フランス人形を想像させる可愛さで、幼稚園の頃、誘拐されたと。
「まぁ、瑠璃ちゃん頑張んなさい!」
応援されてるのか、されてないのか?
それでも、日々懇願をし……。
「え? ほんと? ほんとに、アルバイトしていいの?」
無事、お義兄さんからちゃんとした許可を貰った。
っても、お義兄さんの会社の一階にあるカフェなんだけどね……。
それは、私も隆義兄さんも知らなかった。面接した場所も違ってたからね。
「週に二日、計6時間か。これなら頑張れば……」
お姉ちゃんが、亡くなってから、隆義兄さんかなり落ち込んでたし。笑う事も最近になって、多くなってきた。
出来なかった、お義兄さんのお誕生日は、やってあげたかったし。
だからこそ、アルバイト!
言ったら余計に心配するから。
「じゃ、気をつけて行ってくるんだよ?」
「うん。わかったから! だから、手、離して!」
隆義兄さんの会社、根本的に土日はお休みだけど、他の会社はやってる訳で、こうして毎週毎週送られてくる。
「きっと、手放したくないんじなない? 瑠璃ちゃん、可愛いし」
同じバイト仲間で先輩の香奈さんが、そう言ってはからかってくる。
「ほら、そこ私語多い!」
店長に言われ、ちょうどやってきたお客さんの案内に向かった私。
手放すも何も……。
「畏まりました。暫くお待ち下さい」
そう言って、カウンターにいる店長へ、オーダーを告げる。
お義兄さんの事、好きだけど……。
でも、亡くなったお姉ちゃんの旦那さんだし……。
私なんて……。
「なかなか、慣れてきたね。瑠璃ちゃん」
「ありがとうございます」
いつもは、小言しか耳にしない店長から、褒められた事が嬉しくて、その夜は、隆義兄さんと夜遅くまで深夜映画を観ていた。
「じゃ、おやすみなさい……」
「あ、あぁ。おやすみ。瑠璃……」
「ん?」
眠くなって、部屋に行こうとしたら、呼び止められたのに、隆義兄さんなにも言わなくて……。
「なんでもない。おやすみ……」
いつもの笑顔を私に向けてくれた。
翌日の日曜日は、アルバイトもお休みで、お義兄さんとドライブをした。
「あ、次の道の駅で休憩するか。腹減っただろ?」
「空いた、空いた……」
最近、なんか変だな、私……。隆義兄さんのこと考えると、前よりもドキドキしてきちゃう。
車を降りてすぐに、お腹が鳴りそうな美味しそうな匂いがしてきた。
「五平餅? なに?」
初めて聞く言葉だったけど、焼いてるのを見てたら……。
「二本下さい」
お義兄さんが、買ってくれて、食べたら美味しかった!
「これ、お餅?」
「いや、ご飯だよ」
焦げたご飯もお味噌も美味しかった。
足湯というのも、初めて経験したし、そこからこれから行く湖がよく見渡せた。
「凄い広いんだね」
「一年中楽しめるよ。ここ、馬にも乗れるから。小さな牧場もあるし……」
道の駅から車を走らせる事十分。戸沢湖に着いた。
「んぅっ! 気持ちいいねー!」
これまでにも色々連れてって貰ったりしたけど、湖は初めてだった。
「ほら、あそこでヨットが……」
指の指された方向には、帆を上げたヨットが二隻のんびり動いていた。
「すごい……ね」
完全に振り向いてたら、私の顔が、お義兄さんの顔に!!
「ん? どうかした? あっち行ってみる?」
入り口でパンフレットを貰って、二人で小さな牧場をのんびりと歩いた。
兎を膝に乗せたり、ヤギや羊に触ったり、追いかけられたり、生まれて初めて馬に乗った。ポニーではなく、茶色の大きな馬!
「普段は、こいつ気が荒いんだけどなー」
係の人がその馬を撫でながら言っていた。
「怖く無かった?」
「うん。目線が違うのが、面白かった」
「そう、少しあっちの方、歩こうか?」
散策が出来るコースみたいなのがあって、私は隆義兄さんと並んで歩く。
「たまには、こうやって汗を流すのもいいかもね」
「そうですね。それに、空気もいいし……」
少し小高いテラスみたいな所があって、そこで一休み。
「瑠花ちゃん?」
「はい」
「もし、俺が好きだって言ったら困る?」
!!!
「好き? とは?」
「麻里のこともあって、散々落ち込んだ。無論、今だって麻里を愛してる」
「はい」
「けど、最近、やけに瑠璃。お前の事が頭から離れないんだ。今すぐ、返事をどうこうとは言わないけど……。」
「うん……」
突然過ぎて、なにも言えなかった。
もう亡くなったとは言え、隆義兄さんはお姉ちゃんの旦那さんだった人だし、これまでも、家族として過ごしてきた。
「隆さんは、お姉ちゃんのこと好きですか?」
「好きだ。忘れることは出来ない。勝手な思いだけど、瑠璃の事も好きなんだ。返事は、待つから……」
「はい……」
隆義兄さんのことは、好きだけど。
このドキドキは、なんだろう
「だーめーだ! アルバイトなんて、しなくてもいいだろ?」
「だって!!」
高校生になって初めて知ったのは、アルバイトは、テストの点数(担任の評価)+保護者の同意が無ければ出来ないということ。
「だーめーだ! 俺には、瑠璃を守る義務がある」
「……。 そうだけど、みんなアルバイトしてんじゃん」
「みんな? 誰と誰と誰?」
子供か!!
「ねぇ、お願い! 変なとこ行かないからー!」
何度も何度もお願いし、やっとアルバイト探しをする事の許可が出来た。
そう許可なのである。
「クックックッ……」
「ひど、何も笑わなくたっていいじゃん!」
「つか、お義兄さんだっけ? 過保護じゃね?」
高校に入って直ぐに仲良くなったのは、可愛いもの好きの萌ちゃんとボーイッシュな高美ちゃんだった。
「みんな、アルバイトしてるのに……」
「ま、お義兄さんの気持ちもわかるけどさ。それにしても、アルバイトを探すだけの許可って……」
「だぁって、うちお姉ちゃん亡くなったし……」
全ての手続きは、お義兄さんがやる。
二人で住んでるから、家事とかは分担性だけど、朝のゴミ出しは何故かお義兄さん。
「じゃ、あれだね? いいとこが見つかったら、今度は、応募する許可も必要だし、無事採用されれば、本当の許可になる。長いな……」
「でも、なんでそんなに反対するのかなぁ? 萌には、わからない」
「アレじゃね? 瑠璃、可愛いから、あんま変なとこだと危ないからとかー?」
「萌、アルバイトしなくても、欲しいものはみーんなママが買ってくれるもん」
「まー、あんたの場合、過去が過去だったからね。そりゃ、アルバイトなんかさせたくないって!」
「だろうね。私、初めて萌見た時、フランス人形かと思ったもん」
「んな、大袈裟よー」
確かに、それは嘘では無かったし、高美から過去の経緯を聞いてぞっとしたけど、納得したもの。
木村萌。県内では有名なお菓子メーカーの家に生まれた。母親のお父さんが、フランス人でハーフではあるが、髪以外は母親似で、フランス人形を想像させる可愛さで、幼稚園の頃、誘拐されたと。
「まぁ、瑠璃ちゃん頑張んなさい!」
応援されてるのか、されてないのか?
それでも、日々懇願をし……。
「え? ほんと? ほんとに、アルバイトしていいの?」
無事、お義兄さんからちゃんとした許可を貰った。
っても、お義兄さんの会社の一階にあるカフェなんだけどね……。
それは、私も隆義兄さんも知らなかった。面接した場所も違ってたからね。
「週に二日、計6時間か。これなら頑張れば……」
お姉ちゃんが、亡くなってから、隆義兄さんかなり落ち込んでたし。笑う事も最近になって、多くなってきた。
出来なかった、お義兄さんのお誕生日は、やってあげたかったし。
だからこそ、アルバイト!
言ったら余計に心配するから。
「じゃ、気をつけて行ってくるんだよ?」
「うん。わかったから! だから、手、離して!」
隆義兄さんの会社、根本的に土日はお休みだけど、他の会社はやってる訳で、こうして毎週毎週送られてくる。
「きっと、手放したくないんじなない? 瑠璃ちゃん、可愛いし」
同じバイト仲間で先輩の香奈さんが、そう言ってはからかってくる。
「ほら、そこ私語多い!」
店長に言われ、ちょうどやってきたお客さんの案内に向かった私。
手放すも何も……。
「畏まりました。暫くお待ち下さい」
そう言って、カウンターにいる店長へ、オーダーを告げる。
お義兄さんの事、好きだけど……。
でも、亡くなったお姉ちゃんの旦那さんだし……。
私なんて……。
「なかなか、慣れてきたね。瑠璃ちゃん」
「ありがとうございます」
いつもは、小言しか耳にしない店長から、褒められた事が嬉しくて、その夜は、隆義兄さんと夜遅くまで深夜映画を観ていた。
「じゃ、おやすみなさい……」
「あ、あぁ。おやすみ。瑠璃……」
「ん?」
眠くなって、部屋に行こうとしたら、呼び止められたのに、隆義兄さんなにも言わなくて……。
「なんでもない。おやすみ……」
いつもの笑顔を私に向けてくれた。
翌日の日曜日は、アルバイトもお休みで、お義兄さんとドライブをした。
「あ、次の道の駅で休憩するか。腹減っただろ?」
「空いた、空いた……」
最近、なんか変だな、私……。隆義兄さんのこと考えると、前よりもドキドキしてきちゃう。
車を降りてすぐに、お腹が鳴りそうな美味しそうな匂いがしてきた。
「五平餅? なに?」
初めて聞く言葉だったけど、焼いてるのを見てたら……。
「二本下さい」
お義兄さんが、買ってくれて、食べたら美味しかった!
「これ、お餅?」
「いや、ご飯だよ」
焦げたご飯もお味噌も美味しかった。
足湯というのも、初めて経験したし、そこからこれから行く湖がよく見渡せた。
「凄い広いんだね」
「一年中楽しめるよ。ここ、馬にも乗れるから。小さな牧場もあるし……」
道の駅から車を走らせる事十分。戸沢湖に着いた。
「んぅっ! 気持ちいいねー!」
これまでにも色々連れてって貰ったりしたけど、湖は初めてだった。
「ほら、あそこでヨットが……」
指の指された方向には、帆を上げたヨットが二隻のんびり動いていた。
「すごい……ね」
完全に振り向いてたら、私の顔が、お義兄さんの顔に!!
「ん? どうかした? あっち行ってみる?」
入り口でパンフレットを貰って、二人で小さな牧場をのんびりと歩いた。
兎を膝に乗せたり、ヤギや羊に触ったり、追いかけられたり、生まれて初めて馬に乗った。ポニーではなく、茶色の大きな馬!
「普段は、こいつ気が荒いんだけどなー」
係の人がその馬を撫でながら言っていた。
「怖く無かった?」
「うん。目線が違うのが、面白かった」
「そう、少しあっちの方、歩こうか?」
散策が出来るコースみたいなのがあって、私は隆義兄さんと並んで歩く。
「たまには、こうやって汗を流すのもいいかもね」
「そうですね。それに、空気もいいし……」
少し小高いテラスみたいな所があって、そこで一休み。
「瑠花ちゃん?」
「はい」
「もし、俺が好きだって言ったら困る?」
!!!
「好き? とは?」
「麻里のこともあって、散々落ち込んだ。無論、今だって麻里を愛してる」
「はい」
「けど、最近、やけに瑠璃。お前の事が頭から離れないんだ。今すぐ、返事をどうこうとは言わないけど……。」
「うん……」
突然過ぎて、なにも言えなかった。
もう亡くなったとは言え、隆義兄さんはお姉ちゃんの旦那さんだった人だし、これまでも、家族として過ごしてきた。
「隆さんは、お姉ちゃんのこと好きですか?」
「好きだ。忘れることは出来ない。勝手な思いだけど、瑠璃の事も好きなんだ。返事は、待つから……」
「はい……」
隆義兄さんのことは、好きだけど。
このドキドキは、なんだろう
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