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剣士ルート

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 勇者は剣士の部屋を訪れた。

 ベッドに座り、相棒に等しい大剣の手入れをしていた剣士が顔をあげる。
「どうした」
 短く刈られたブラウンの髪。額についた傷跡。たくましい体躯をもって大剣を使いこなす姿は同じ男でも見入るときがしばしばあった。
「解呪の条件がわかったんだ」
「そうか」
 よかった、と僅かに口元を緩める。寡黙ながらも仲間思いの彼に、勇者は「直腸に、精液を、注いでもらないといけなくて」と残酷な事実を告げた。
「だから、その……た、頼めないだろうか」
 羞恥心に首を絞められるような心地で振り絞る。返事はない。おそるおそる顔を上げる。いつもの鉄仮面とも違う。完全に表情を失った剣士を前に、
「ごめん」
 勇者は咄嗟に謝った。
「嫌だ、っつーか、むり、無理だよな。わるい、変なことを言って」
 耳まで真っ赤に染めあげて、勇者は一歩後ずさる。そのままくるりと翻りドアノブに手をかけたところで、頬の横に勢いよく腕が突かれた。覆いかぶさる大きな影。
「だ、ダラス?」
「どこに行く気だ」
「どこ、って」
 このまま自室に戻りたい。しかしそうも行かない。
「おれが断ったら、イサークのところへ行くのか」
 はい。別の仲間とセックスしてきます。言えるわけもない。察してほしい、と唇を震わせる勇者を前に、剣士の眉にしわが寄る。
「……一週間前のことを忘れたのか」
 勇者は目を瞬かせた。記憶をたぐりよせようとするも、そこには日常しかなかった。
「……おれは、てっきり」
 そう呟いてから、剣士は視線を落とす。ドアノブにかかった勇者の手を取り、自らの口元まで持ちあげる。
「あ……っ」
 手の甲に唇を落とす。ちゅ、と小さな音を立てて、薄く開いた唇からのぞく舌が肌に触れた瞬間、勇者の肩がびくんと跳ねた。
「っ、ダラス……」
 今の勇者には、そんな淡い刺激も毒だった。剣士のもう一方の手が腰元にまわる。そのまま下半身へとすべり落ち、深みに入ろうとする手を咄嗟につかんだ。
「その……ベッドへ」




 二人の男を乗せたスプリングがぎしりと軋む。
 身を固くする勇者の上に被さる剣士はその首元に顔をうずめていた。
「っ、あ」
 首筋を軽く吸われた瞬間、声が漏れた。口元に手の甲をあてて塞ぐ。けれど服の裾から入りこんだ手のひらに肌を撫でられると、ぴく、ぴく、と反応してしまうのも、上擦った吐息も我慢できなかった。
 勇者は剣士の肩を叩く。  
「な、なあ、そんな、丁寧にしなくていいから」
「……そう丁寧なつもりもない」
「えっ、あ、そっか」
 そうなんだ。え。これで?じゃあいつもはどんな、と仲間内の性事情にそれ以上ツッコめるわけもなく、愛撫を止める手立てをなくした勇者はされるがまま高められていく。腹筋をなぞり、胸元を撫でられ、熱い舌を這わされる。無骨な指が繰りだす甘く優しい触れ方は、すでに発情に濡れた肉体には酷だった。
「はっ、ぁ……っ……」
 きもちいい。けれど、もどかしい。正直つらい。そんなつもりはないんだろうけど、勝手に焦らされているような気になって、放置された性感帯がずくずくと疼きだす。窮屈そうに衣服を押しあげる勃起に時折剣士のからだにこすれるだけでたまらない刺激が走る。腰が浮きそうになるのを必死にこらえていたが、ついに剣士の手がそこに触れた瞬間、我慢できずに腰が大きく跳ねた。
「うんん……っ!」
 あからさまな反応。かっと羞恥が巡る。
「ちが、その、ふだんはこんなじゃ」
 スライムのせいで、と繰りだそうとした言い訳は、意図をもってうごきだした手により閉ざされた。大きな手で包まれて、すりすりと服の上から擦りあげられる。それだけでもうだめだった。
「あ、ッ、ッ~~~………!!」
 ぐんと背をしならせて下着のなかに吐精する。絶頂の余韻に震えながら、勇者は仲間の手で達してしまった事実とそのあまりの早さに打ちしおれた。しかし剣士はからかうこともなく「すまない。汚したな」とズボンと下着を取り払う。
 一度達したところで、根本から断たれないかぎり発情はおさまらない。ザーメン濡れのまま滾る性器。更にその奥、淫性の呪いによって勝手にひくつく窄まり。
 そのすべてが仲間の目に晒される。今すぐに頭上の窓を割って宿屋から飛び出したい。
 そんな衝動に駆られたが、それはなによりもここまで付き合ってくれた剣士にわるい。いい加減に覚悟を決めなければ……と目蓋を閉じるも、次のアクションがない。剣士は視線を落としたままうごかなくなっていた。
「……ダラス?」
 名前を呼ぶと、無表情で硬質な表情が僅かに揺れた。それから、すまない、と小さく零す。なにを意図した謝罪なのか。生々しい男性器を前にとうとう臆したか。いけるかいけないかの判断を見誤ったのだろうか。巡る思考が蕾に触れた感触に弾けとぶ。
「っ……」
 指の腹でくにくにと閉じた窄まりをほぐしてから、潤滑油を纏った指が挿入される。節くれだった剣士の指にずるりと腸壁を擦り上げられた瞬間、勇者の足がシーツを蹴り上げた。
「ッ……!」
「痛いか?」
 目を見開いて震える勇者に剣士が尋ねる。咄嗟に首を振ってから気づく。この状況下で痛みを否定したら、残るものはひとつしかない。
「なら続けるぞ」
 剣士の指が蠢く。きつく指に絡む媚肉をほぐすように揺りうごかしながら、根まで埋めこみ、ぐるりと搔き回す。
「──っ、っ……!!」
 勇者は未知の感覚に翻弄されていた。呪いにかけられてからずっと、腹の奥に居座っていたじくじくとした疼きが、刺激を得ることで確かな快感へと形を変えた。内側がこすれるたび、剣士の指が蠢くたび、ゾクゾクとこみあげてくる甘さを煮詰めたような感覚。すこしでも気を緩めればあられもない声をあげてしまいそうだった。
「っ、ふっ……っん、ぅ゛う……っ♡」
「……」
「んん゛っ! く、ぅ……っ!」
 触れられてもいないペニスが、アナルの刺激に連動するようにぴくぴくと跳ねる。二本目の指が宛がわれる。ぬるりと入りこんだ指先がペニスの裏側をこすりあげた瞬間、
「んッ、うぅう゛ッ♡♡!?」
 勇者の肉体は呆気なく陥落した。自分でも何が起こったかわからない。腹のなかで重く弾けた快感にぶるぶると震えながら目を白黒させる。アナルの刺激で達したのだと、腹に散った精液で知った。それは勇者を見下ろす剣士にも明らかなはずだったが、剣士は指を止めず、そのまま敏感な膨らみをこちゅこちゅとこすりあげる。
「ふぅ゛っ……♡!? っ、ん゛ーっ、んんッ! ッ、ッ、ッ~~~!!」
 懸命に悲鳴を飲みくだす勇者の顔が真っ赤に染まっていく。我慢しなくていい、と剣士が言った。
「苦しいだろう」
「っ、で、も……あっ♡ 声、こんなっ、いやだろ……っ」
「嫌じゃない」
「えっ、あ……んんっ♡♡」
 指先が折れる。敏感な場所をぎゅう、と押しあげる。
「あぅう゛、ッ~~~!! っや、やぁ、そこッ……あ゛っ♡」
 一度決壊してしまうともうだめだった。アナルを弄られるくちゅくちゅという水音とともに甘い声がひっきりなしに溢れだす。揃えた二本の指が緩く抽送する。肉筒全体が擦りあげられて、更に腹側を丁寧に圧迫する指先に、勇者はまた精液を飛ばした。
「あ゛あぁっ……♡♡」
 三度目の絶頂。シーツをひっ掴みながら、全身を包む痺れるような快感に震える。こんなに、だしたことない。こんなに続けてイッたこともない。しかし衰えない発情。触れられるほどに感度を増していく身体に勇者は焦りを感じていた。三本目の指を窄まりに宛がわれて、咄嗟に首を振る。
「だ、ダラスッ、もういい……っ」
 その先を察した剣士はしかし、と渋る。
「おそらく、まだ入らない」
 おもわず見てしまった。剣士の下半身。立派なテントを張ったそこを。
「おお……」
 服の上からでもわかるその強大さに純粋におののいた後、これが入るのか?と冷静になる。
 ──というか、勃起している。
 勇者は仲間のペニスが勃たないことを前提に、賢者に精力剤をもたされていた。それでもダメだったら愛撫ありきでたたせなければと覚悟していたので、そのどちらも発動しないうちからいきり立つものを予想していなかった。
「な、んで……ぅあっ♡」
 三本目の指が肉縁を広げて入ってくる。剣士の太い指が束になれば、それはもはやちょっとしたペニスほどの質量と化した。
「んっ、ッ、ぅ゛う~~~♡!!!」
 その太さになかを搔き回されるとたまらなかった。思考が快感に塗りつぶされる。開いた内腿をガクガクと震わせて、とろけた肉壁で必死に指を締めつけて、今度は射精もなしに尻穴だけで達した。勇者が一際高い声をあげた瞬間、微かに息を呑む声が聞こえた。剣士は勇者を見ていた。自分の下で、足をひらき尻穴を指でほじられて乱れる姿を、じっと見下ろしていた。
「みっ……みないでくれっ──あっ!」
 ぢゅぽんっと指を抜かれる。剣士が下履きをずらしてペニスを露出させる。どっしりとしたそれを目にした瞬間、恥ずかしいくらいにからだの中心が熱くなった。
「……レメト」
 低く名前を呼ばれる。剣士が片足を持ちあげて剛直を窄まりに宛がう。触れられたところが熱い。鼓動が高鳴る。期待している。言い訳のしようもなく。指であんなにきもちがよかったのに、それでかき回されたら、とおもうほどに吐息が熱を帯びる。これも呪いのせいだとはわかっていながらも、
「すまない」
 勇者は自らのあまりの浅ましさに辟易としていた。
「こんなことを、させて」
 しかし、この一晩だけ。今夜限りだと誓える。こんなにも情けない姿をさらすのは。
「すぐに元に戻る。だから……明日にはすべて忘れてくれ」
 返事はない。そろりと視線をあげる。剣士は唇を引き結び、なにかを堪えるような顔をしていた。
「え……っ」
「……力を抜いておけ」
「あっ……!?」
 入ってくる。指とは比べものにならないほどの質量が。
「──ッ…………!!」
 勇者はその衝撃に打ち震えながら、白く染まる頭で必死に記憶を手繰り寄せる。いっしゅうかんまえ、一週間前……の、夜。

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