25 / 32
六日目
6-2
しおりを挟む満員電車のなか、いつものように耳にイヤホンを差しこむ。音楽アプリを開こうとスマホのスリープを解いたと同時、
『あぁんっ♡♡ やぁ……ッ、やだぁっ♡』
「うわっ!?」
鼓膜に響いたあられもない声。おもわず漏れた驚嘆の声に刺さる周囲の視線。陸人は慌てて顔を伏せた。
『っも、やだっ、っ~~~~またくるっ、くるぅ゛ッ♡」
なんっ、な、なに。まじでなに。
混乱する脳内。しかし止まない声に理解させられる。まぎれもなく、それは自分の声だった。途端、どっと早まる鼓動。イヤホンを引っこ抜こうと指をかけるも、
『取ってはダメですよ』
アオの声が横入りした。
『なにをそんなに驚いておられるんですか? 聞き慣れた自分の声でしょう』
こんな声が聞き慣れてたまるか。
口が利けない代わりに、陸人は我がもの顔で画面に現れたアオを睨んだ。アオは悠然とほほ笑み返す。
『ちょっとした気分転換ですよ。変わりばえのないプレイリストにも飽きてこられたことでしょう。今日の通学BGMはわたくしの特別ミックスをお届けします。べつに問題ありませんよね? 少々情事の音を流されたところで、その身に触られてるわけでもないのにおかしな気分になんてならないですよね? かまいませんね? 平気ですね? では、手をおろして。電車のなかでは大人しくしていましょうね』
抗っても、いいことない。
戒めを反芻し、募る言葉を堪らえて、下ろした手の先でズボンを握りしめた。
『いい子のご褒美にネタばらしです。こちらは乳首開発時の音声よりピックアップしております。ね、リクトさま。覚えていますか? 強制発情させられて、ビンビンに勃起した乳首を吸引機に吸われたときのことを』
忘れたと嘯くには、あまりに記憶が浅すぎて、
『きもちよかったですねえ。根元から吸いあげられて、ひり出した乳頭をローションまみれのブラシにぐちゅぐちゅに擦りあげられて、かき回されて』
肩がひくりと揺れる。
『ほら、よく耳を澄ませてみれば、くちゅくちゅっ♡て乳首がブラシに擽られるいやらしい水音も聞こえますよ。ふふ。この時、リクト様ってばミッションで課されたわけでもないのにすぐに達してしまわれたんですよね。はじめての乳首アクメはいかがでした? その胸の小さな突起が熱くなって、キュンキュンと奥から快感が溢れてくる感覚、まだちゃんと覚えていますか? イッてもイッても休みなくブラシにくすぐられるの気持ちよかったですよね? あーもうほら、すごい声♡ リクト様聞こえます? 音量あげましょうか?』
握りしめたズボンにシワを寄せ、陸人はふるりとかぶりを振った。ばかみたいな声、卑猥な水音が、鼓膜から通じて頭のなかを引っ搔きまわす。ぐんぐんと顔に熱が集まっていく。甘い記憶に刺激された突起まで熱くなり、シャツの下でその存在を主張しはじめていた。
「っ……」
脳内に淫靡な記憶が渦巻くほど、じわりと奥から滲んでくる熱の兆し。クスリの馬鹿げた効能をおもいだすも、みっちりと耳穴を満たすイヤホンからは逃げようがない。鼓膜に触れる音が、強制的にその身に思いださせる。突起を苛む、耐えきれないほどの疼き。泣き喚いてもやめてもらえなかった、苦しいほどの快感を、
『どうされました? そんなに顔を赤くして、まさかご自分のいやらしい声に発情しているんですか?』
「しっ……」
してないっ!叫びかけて、はっと周りの視線を思いだし口を噤んだ。……ずるい、こんなのずるい。
『うそはだめですよ。リクト様のペニスが反応しはじめていることはリングから丸わかりなんですから』
「……っ」
『でもそれ以上はだめですよ。今日は貞操帯をつけてないんですから。電車のなかでご自分のエッチな声を聞いて、きもちよくなって勃起しているなんてバレたら大変でしょう? ああ、そのお顔もよくないですね。発情丸出しの蕩けたお顔。そんな物欲しげな顔を見られてしまったら、もうなにをされたって文句はいえませんよ』
くすくすと笑う声。せり上がる羞恥と怒りが余計に熱を煽る。
『……ああ。あなたの後ろにいるのがわたくしなら、その身を包んで慰めてさしあげますのに』
アオはうっとりと言った。
『背中にぴたりと密着して、身動きできない体に手をのばして、固くなった乳首をシャツの上からかりかりって指先で掻いて……」
「……っ」
『もちろん下半身も一緒に虐めてあげますからね。制服の上からそっと手を置いて、そのまま上下にすりすりと擦って……乳首と一緒にじっくりと嬲ってさしあげましょう。ね、ほら、きもちいいですね、リクトさま。きっと場所も忘れるほどきもちよくて、でも決定打のない刺激が焦れったくて、耐え性のないあなたはきっとすぐに腰を揺らして、もっともっとって刺激をねだるんでしょう』
きゅんと股間と胸元が熱くなる。だめだっ、かんがえるな、考えちゃだめだ……!逃げるように目蓋を瞑るも、逆効果だった。感覚が聴覚に集中し、鼓膜をくすぐるアオの声を、その一音一音をより鮮明に拾ってしまう。背筋に走るぞわぞわとした感覚に、耐えきれず吐息が漏れる。
「は、っ……」
語られる快感を知るからだは、煽られるまま愛撫の手を想像して、勝手に熱を帯びていく。だけどほんとはどこにも触られていないせいで、爪先に力がこもるような、切ない疼きが同時にその身を焦がす。
『こらこら。腰を揺らしたりなんてしちゃだめですよ。同じ学校の生徒も乗っているんでしょう? リクト様が電車で欲情する変態なことバレちゃいますよ』
開いた視界にうつる、ひしめく人々の足元。耳にはまる安物のイヤホン。まさか漏れ聞こえていないだろうかと不安に陥ると同時、じわじわとイヤな汗と、妙な熱気が内側から沸いてでる。俯けた首元を赤く湿らせながら、陸人は逃げ場のない空間で地獄の二十分を過ごした。
「陸人。はよ」
ひとつ前の席。友人の田代が手をあげた。
「……はよ」
気だるげに席につく陸人をみて、首を傾げる。
「なに、風邪? 顔あかいけど」
すこし視線をそらせて、……たぶん、と答える。
「無理すんなよ。日曜も体調わるそうだったじゃん」
……あのときは、ケツにエネマグラ入れられてて、だから、そのせいでずっと、──まて、おもいだすな。
「ベッドの上でもしんどそうに身じろいでたし」
「……っ、いや」
「自転車こいでるときもしぬほど遅くて」
「うあ、ちょ、田代」
「坂下った後なんかさあ、なんかすげー限界って感じで、ふらついて……」
「待てっ、もう言うなっ……!」
前のめりで止めにかかる陸人に、田代はきょとんとした。どうした、とツッコミが入る前に、教室に立ち入った教師により会話は強制終了された。ほ、と息を吐くも、尻穴に呼び起されたエネマグラの感覚はしばらく消えてくれなかった。
45
お気に入りに追加
603
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~
雷音
BL
全12話 本編完結済み
雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ
一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。
※闇堕ち、♂♂寄りとなります※
単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。
(登場人物は全員成人済みです)
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる