36 / 109
第十六章 ライバル出現
⑥
しおりを挟む
「あの時会社に来たなら声をかけてくれたら良かったのに」
美希の表情がちょっと強張った。
「そうでしたね、気がつきませんでした、慰めてあげてください、女の子は弱いんですから」
「美希は弱くないのか」
「おばさんは強いんです」
この時人一倍か弱い美希に気づいてあげる事が出来なかった。
モデルの騒動の時も、嫌だったと泣きじゃくったのに、俺はこの時そこまで気が回らなかったのだ。
「麗子に連絡取って見るよ」
俺が麗子と呼び捨てすることに、入り込めない関係だと思い込んだことなど感じ取る事は出来なかった。
俺は病室を後にした。
この夜、美希は俺の名を呼び、涙で枕を濡らしたことなど知る由もなかった。
次の日、美希は退院の許可を貰った。
しかし、その事は俺には伏せて、一人で退院してしまった、もちろん、マンションには戻らずに……
この日、望月が美希を心配して、病院に来た時、既にベッドはもぬけの殻だった。
「あのう、ここに入院していた鏑木美希さんはどうされたのですか」
「退院されましたよ」
「そうですか、ありがとうございます」
望月は俺のスマホに連絡を入れた。
「望月、この間は済まなかった」
「そんな事はどうでもいい、美希ちゃん、退院したのか?」
「いや、まだだ、退院の許可は降りていないはずだが……」
「今、病院に来てるんだが、美希ちゃんは退院したぞ」
俺はまさかの事態に呆然とした。
「病院に連絡してみるよ、情報ありがとうな」
俺は早速病院へ連絡を入れた。
「鏑木と申します、妻がお世話になっていると思いますが、退院したのですか、私の方に連絡頂いておりませんが」
「少々お待ち下さい、今、担当医に変わります」
美希の担当医が電話口に出た。
「お電話変わりました、鏑木美希さんは退院の許可がおりましたので、本人にお伝えしたところ、ご主人様はお仕事がお忙しいとのことで、一人で退院されるとご希望がありましたので、午前中に退院されましたよ」
「わかりました、大変お世話になりました」
俺は電話を切った。
美希、何を考えてるんだ。
俺は望月に連絡を入れた。
「美希は一人で退院した」
「そうか、お前のマンションに行ったが、まだ、帰っていなかったぞ」
「美希はどこに行ったんだ」
「美希ちゃんと何を話したんだ」
「会社の前で一緒だった麗子の話をした」
「誰だ」
「鏑木建設会社と古くから付き合いがある、今村不動産の令嬢だ」
「お前、美希ちゃんの前で麗子って呼び捨てにしたのか」
「ああ、幼い頃から兄弟のように育ったからな」
望月は大きなため息をついたことが電話越しに伝わった。
「美希ちゃんは嫌だったんじゃないか、お前が麗子さんを呼び捨てすることも、相談にのってあげる事も」
「美希が相談にのってあげてと言ったんだぞ」
「蓮、お前は美希ちゃんの言う事を鵜呑みにしたのか」
「だって」
「とにかく、今は美希ちゃんを探すことが先決だ」
俺と望月は美希を探した。
その頃、私は行くところが無く、マンションに戻った。
「美希様、お帰りなさいませ、鏑木様が大変心配されていましたよ」
私を気遣ってくれたのはこのマンションのコンシェルジュ佐藤さんである。
「申し訳ありません」
「お部屋にお戻りになってお休みください」
私の家出はあっという間に終わった。
俺はコンシェルジュ佐藤から連絡を受けた。
「鏑木様、美希様がお戻りになりました」
「そうか、すぐに戻る」
俺はマンションに戻った。
コンシェルジュ佐藤が出迎えてくれた。
「鏑木様、お帰りなさいませ」
「連絡感謝する」
「とんでもございません」
俺は美希が待つ部屋へ急ぐ。
「美希、美希、どこだ」
「蓮さん」
美希が寝室から出てきた。
俺は美希の姿を確認すると、思わず抱き締めた。
「美希」
「蓮さん、ごめんなさい、わたし……」
俺は美希を抱きしめ、頬を両手で包み、唇を塞いだ。
俺と美希は見つめ合った。
「望月に連絡しないと、今頃あいつ死物狂いで美希を探してるからな」
俺は望月のスマホに連絡した。
「美希ちゃん、見つかったか」
美希の表情がちょっと強張った。
「そうでしたね、気がつきませんでした、慰めてあげてください、女の子は弱いんですから」
「美希は弱くないのか」
「おばさんは強いんです」
この時人一倍か弱い美希に気づいてあげる事が出来なかった。
モデルの騒動の時も、嫌だったと泣きじゃくったのに、俺はこの時そこまで気が回らなかったのだ。
「麗子に連絡取って見るよ」
俺が麗子と呼び捨てすることに、入り込めない関係だと思い込んだことなど感じ取る事は出来なかった。
俺は病室を後にした。
この夜、美希は俺の名を呼び、涙で枕を濡らしたことなど知る由もなかった。
次の日、美希は退院の許可を貰った。
しかし、その事は俺には伏せて、一人で退院してしまった、もちろん、マンションには戻らずに……
この日、望月が美希を心配して、病院に来た時、既にベッドはもぬけの殻だった。
「あのう、ここに入院していた鏑木美希さんはどうされたのですか」
「退院されましたよ」
「そうですか、ありがとうございます」
望月は俺のスマホに連絡を入れた。
「望月、この間は済まなかった」
「そんな事はどうでもいい、美希ちゃん、退院したのか?」
「いや、まだだ、退院の許可は降りていないはずだが……」
「今、病院に来てるんだが、美希ちゃんは退院したぞ」
俺はまさかの事態に呆然とした。
「病院に連絡してみるよ、情報ありがとうな」
俺は早速病院へ連絡を入れた。
「鏑木と申します、妻がお世話になっていると思いますが、退院したのですか、私の方に連絡頂いておりませんが」
「少々お待ち下さい、今、担当医に変わります」
美希の担当医が電話口に出た。
「お電話変わりました、鏑木美希さんは退院の許可がおりましたので、本人にお伝えしたところ、ご主人様はお仕事がお忙しいとのことで、一人で退院されるとご希望がありましたので、午前中に退院されましたよ」
「わかりました、大変お世話になりました」
俺は電話を切った。
美希、何を考えてるんだ。
俺は望月に連絡を入れた。
「美希は一人で退院した」
「そうか、お前のマンションに行ったが、まだ、帰っていなかったぞ」
「美希はどこに行ったんだ」
「美希ちゃんと何を話したんだ」
「会社の前で一緒だった麗子の話をした」
「誰だ」
「鏑木建設会社と古くから付き合いがある、今村不動産の令嬢だ」
「お前、美希ちゃんの前で麗子って呼び捨てにしたのか」
「ああ、幼い頃から兄弟のように育ったからな」
望月は大きなため息をついたことが電話越しに伝わった。
「美希ちゃんは嫌だったんじゃないか、お前が麗子さんを呼び捨てすることも、相談にのってあげる事も」
「美希が相談にのってあげてと言ったんだぞ」
「蓮、お前は美希ちゃんの言う事を鵜呑みにしたのか」
「だって」
「とにかく、今は美希ちゃんを探すことが先決だ」
俺と望月は美希を探した。
その頃、私は行くところが無く、マンションに戻った。
「美希様、お帰りなさいませ、鏑木様が大変心配されていましたよ」
私を気遣ってくれたのはこのマンションのコンシェルジュ佐藤さんである。
「申し訳ありません」
「お部屋にお戻りになってお休みください」
私の家出はあっという間に終わった。
俺はコンシェルジュ佐藤から連絡を受けた。
「鏑木様、美希様がお戻りになりました」
「そうか、すぐに戻る」
俺はマンションに戻った。
コンシェルジュ佐藤が出迎えてくれた。
「鏑木様、お帰りなさいませ」
「連絡感謝する」
「とんでもございません」
俺は美希が待つ部屋へ急ぐ。
「美希、美希、どこだ」
「蓮さん」
美希が寝室から出てきた。
俺は美希の姿を確認すると、思わず抱き締めた。
「美希」
「蓮さん、ごめんなさい、わたし……」
俺は美希を抱きしめ、頬を両手で包み、唇を塞いだ。
俺と美希は見つめ合った。
「望月に連絡しないと、今頃あいつ死物狂いで美希を探してるからな」
俺は望月のスマホに連絡した。
「美希ちゃん、見つかったか」
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
せいとも
恋愛
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
表紙イラストはイラストAC様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる