上 下
21 / 109
第九章 告白

しおりを挟む
「俺の言うことに、これから嘘偽りなく答えろ、いいな」

「はい」

「俺を好きか?」

「はい、好きです」

「あいつにまだ惚れてるか」

「あの人とのことは十年前に終わっています」

「あいつを好きか聞いている」

「好きじゃありません」

「なんであいつはよくて、俺は拒否された」

「それは……」

「理由があるなら言ってみろ」

私は大きく深呼吸をして話し始めた。

「あの人と別れた理由は、あの人に私と身体の相性が悪い、満足出来ないって言われたからです、だから恋愛に臆病になって、十年間一人でいました。
蓮さんに好きって言ってもらって、キスしてくれたり、抱きしめてくれたりと行為が進むに連れてまた同じこと言われたらどうしようって心配になりました。
蓮さんに嫌われたくなかったんです」

そこまで言うと、涙が溢れて言葉にならなかった
彼は「もういいから」と、そう言って抱きしめてくれた。
私の頬を伝う涙にキスをして、唇にもキスをしてくれた。

彼の舌と私の舌が絡み合い、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
自分でも驚く位に、彼のキスを受け止め、激しく彼を求めた。

このまま最後までいっちゃう、と心配が脳裏を掠めた。
ところが、彼は一旦私を強く抱きしめて、深呼吸をした。

「また、途中で拒絶されたら、さすがの俺も心が折れる、だから今日はこのまま朝までくっついて寝るぞ、いいな」

嬉しかった、私の心配を察してか私の気持ちを汲んでくれた。

「美希、まだ起きてるか」

「はい」

「身体の相性って確かにある、相性よくないと満足出来ない、でも愛してるだけで、気持ちが繋がってれば、いいと俺は思うぞ」

「蓮さん」

「俺は美希と一緒にいたい、それだけで十分だ、俺だけ見ろ、俺だけ信じろ、いいな」

「はい」

「今日親父から孫の話あったが、気にするな」

「でも、私、妻として嫁として役目を果たせていないですよね」

「妻としては俺がいいって言ってるから問題ない、嫁としても親父が気に入ってるんだから問題ない」

彼は私の気持ちを理解してくれる優しい人である、この優しさに甘えて、彼とずっと一緒に居たいと思った。


俺は美希に気持ちを確かめたかった。

まだあいつに未練があるのか、好きなのか。

なぜ俺は拒絶されたのか。

美希は「十年前に終わっています」と答えた。

そうじゃない、あいつを今でも好きかどうか聞きたいんだ。

俺は苛立っていた。

あいつが良くて俺はダメなんだ。

美希は理由をゆっくり話し始めた。

俺は黙って美希の話を聞いていた。

身体の相性が悪い、満足出来ないと言われたなんて、そのために臆病になっていたとは、予想を遥かに超えた言葉だった。

俺は美希を抱きしめた、悩んでいたのに、詰め寄り聞き出そうとして、俺はなんてバカなんだ。

そんな事も知らず、嫉妬して、美希の気持ちを疑って、ごめん、美希。
俺は美希を抱きしめ、キスをした。

きっと美希は俺とこうなる為に生まれてきたに違いない。

キスだけで止められない、俺は舌を入れて美希の舌と絡ませた。

心臓の鼓動が速くなる、興奮が最高潮に達した。

ダメだ、美希の気持ちはイエスでも身体がノーなら、また拒絶される。

俺は自分の気持ちに急ブレーキをかけた。

あと一歩間違えば谷底に落ちる寸前で止まった。

「朝までくっついて寝るぞ」

俺は興奮する気持ちをグッと堪えて、美希を抱きしめ眠った。

いや、朝まで興奮は収まらなかった。


そんな幸せは永くは続かなかった。暗い影が忍び寄ってきていることに気づかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~

けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。 秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。 グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。 初恋こじらせオフィスラブ

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。  ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。  しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、 「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」  と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。  大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!  ※2学期編3が完結しました!(2024.11.13)  ※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...