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へえ、そんなに俺にキスして欲しいのか①

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無理な体制だったから、私は倒れそうになり、最上さんの袖を引っ張った。

最上さんは私を抱き抱えてくれた。

足首に体重がかかり「痛い」と大きな叫び声を発した。

「大丈夫か」

最上さんは私を抱き抱えてベッドに逆戻り。

すぐに足首を確認してくれた。

「ちょっと必要以上に力が加わったんだな、大丈夫だ」

私は目にいっぱいの涙が溢れて頬を伝わった。

最上さんは頬の涙にキスをしてくれた。

そして最上さんの唇は私の唇にキスをしてくれた。

お互いに強く求め合った。

最上さんはいつも言葉と行動が伴わない。

もしかして、最上さんも私をちょっとは好きって思ってくれているの?

そんな私の浮ついた気持ちは一瞬にして打ち砕かれた。

次の日から、最上さんは毎日帰りが遅くなった。

それは外科のお医者様なんだから仕方無いかもしれない。

でも、帰りは私が眠ってしまってから帰ってくるし、休みは全くない。

朝も私が起きてくる時間には既に病院へ行っている。



私はやっぱり契約上だけの婚約者なの?

契約結婚って言っていたけど、入籍はまだしていない。

私の相手をするのが面倒になったのかな?

そんなある夜、私が起きている時間に最上さんは帰って来た。

「ただいま」

「お帰りなさい、今日は早かったんですね」

最上さんは何も言わずに寝室へ着替えに入った。

「シャワーを浴びるぞ」

「はい」

「これ、サインしておけ」

最上さんはそう言って、テーブルの上に婚姻届の用紙を置いた。

既に最上さんはサイン済みだった。

契約続けるんだ、良かった。

私は久しぶりに早く帰って来た最上さんと話がしたかった。

だから、分かっていたが、婚姻届の書き方を最上さんに質問しながら書こうとしていた。

シャワールームから出てきた最上さんを早速捕まえて、質問し始めた。

「最上さん、病院でサインしたんですか」

「ああ、そうだ」

「よく、注意書き読みましたか」

「別に読まねえけど、名前書いて印鑑押せばいいんだろ」

「はじめてだから緊張しますね」



「俺は二度目だから、別に緊張しねえけど」

えっ、二度目?

嘘!離婚歴があるの?

「なんだよ、そんなに驚いた顔して」

「だって……」

「言っとくけど、離婚歴あるわけじゃねえから」

「でも、結婚しようと思って、婚姻届書いたんですよね、結婚したいと思った女性がいたって事ですよね、なんで結婚しなかったんですか」

「関係ねえだろ、俺達契約なんだから、お互いの過去は知らなくてもいいだろ」

「私は知りたいです、最上さんが何を考えて、何を望んでいるのか、過去に何があったのか知りたいです」

「何?まさか俺に惚れたのか」

私は黙っていた。

「いつもみたいに違いますって反論しろ」

「反論しません」

「お前、自分で何を言ってるのか分かってるのか」

「分かってますよ」

「俺に惚れたのなら、抱かれてもいいって事だと判断するぞ」

私は固まって何も言えなかった。

最上さんの事は好き、何を考えて、過去の彼女とどうして婚姻届を書くまでの関係になったのに、何があったのか知りたい。




一緒の時間を過ごすことが楽しい、ずっとこのまま一緒にいたい。

でも、すぐに抱かれていいかって、それとこれとは話が違う。

最上さんは私に近づき腕を引き寄せた抱きしめた。

「俺にはじめてを捧げる覚悟は出来たか」

最上さんは私の顎をくいっと上げて数センチと唇が迫ってきた。

私は咄嗟に目を閉じて身体を強張らせた。

最上さんは私を抱き上げて寝室へ運んだ。

ベッドに身体が沈んで首筋にキスを一つ落とした。

「あっ、ん」

最上さんは上着のボタンを外し始めた。

胸の膨らみが露わになり、そこにも唇を押し当てた。
最上さんの手がスカートの中に入り太腿に触れた。

最上さんはバスタオルを外し、鍛えられた大胸筋がシャワーの水を弾いてきらきら光っていた。

「覚悟はいいか、お前を抱く」

心臓の鼓動がドクンドクンと打って身体が小刻みに震えた。

最上さんを好きだけどこれからどうなっちゃうのか、怖くて涙が溢れて来た。
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