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ハロルドの誤算
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使えない。
ハロルド・バーモンドはイライラしていた。
思惑通りに事が運んでいたはずがここに来て状況が一変している。
ルシャード・バーナディンまで使ったのに、ヴィクトリアのせいで全てが崩れそうになっている。
あの女は想像以上に肝が小さかった。
ちょっと脅されからってすぐにビビってやがる。
よりにもよって、この時期に俺を王宮に呼びつけるとは頭の中を見てみたい‥。こちらの手の内を晒しているようなものになる。
ここは一旦引くべきか。これ以上突っ込むと墓穴を掘る事になるかもしれぬ。
ヴィクトリアは懐妊している。恐らくは俺の子を。
その子を王太子の子とするつもりでいたが‥なにやら
ヴィクトリアが懸念している様だ。
とりあえず明日は慎重にいこう。
ヴィクトリアが何かやらかす前に手を打たなければ、
こちらが危ない。
夜が明けて、王宮が最も忙しい朝からヴィクトリアを訪ねる事にした。
人目を避け急いでヴィクトリアの元に向かうと、最も会いたくない奴と出くわした。
『おぉこれはこれは、ハロルド・バーモンド候爵令息久方ぶりだね。』
ハロルドはチェッと舌打ちをしたがすぐに
『お久しぶりでございますね。レイモンド・グランチェスター公爵令息殿。』
『今日はどうされた?』
レイモンドの振りにハロルドは一瞬固まるもすぐに対応する。
『たまたま王宮に用がありましたのでついでと言っては何ですが王太子妃殿下のご懐妊と聞き、お祝いを申し上げたくこちらまで足を運びました。』
『そうでしたか!では是非殿下にもどうですか?』
レイモンドの提案にハロルドは
『いやいや、王太子殿下についでと言う訳にもいきません故‥。』
動揺を隠せないハロルドを横目にレイモンドはニヤリと笑いハロルドの顔を覗き込む徴発をし去っていった。
ハロルドは再び舌打ちをしヴィクトリアの部屋へと急いだ。
ヴィクトリアは予想以上に憔悴してみえた。
『ハロ、不味いわ。』
ハロルドはイライラしながら
『何がですか?というか、不味いのは貴女です。こんな時に私を呼び付けるなんて、どういう頭をしているのですか?』
冷たくあしらうハロルドにヴィクトリアは寄り掛かり
『私、怖いわ。ハロしか頼る人が居ないの。』
大きな目に涙を浮かべて見上げるもハロルドはヴィクトリアを押しのけ、
『貴女は立派なお子をお産みになる事だけをお考え下さい。』
ヴィクトリアは床に崩れ落ち叫ぶ
『ハロ!産まれて来た子が金髪碧眼でなければ私は殺されるわ!』
ハロルドは慌てふためき
『静かに!何を興奮されておる?』
ヴィクトリアは思い立った様に
『ハロ!一緒に逃げましょう』
『!何故私が貴女と逃げるのですか?』
声を荒げるハロルドにヴィクトリアは
『貴方も同罪だわ!』
『お、お前、何を言うか!』
2人の声は扉の外まで響き渡っている。
『何を騒いでおるのだ?』
2人は我に返り声の主を見ると
『殿下‥』
固まるハロルドと声も出ないヴィクトリア。
『いやいや、せっかく懐妊のお祝いとやらでこちらにいらしてるのですからついでといっては何ですが殿下もお連れした次第ですが、お邪魔でしたか?』
ハロルドはレイモンドを睨み付ける。
レイモンドは追い打ちを掛けるかのように
『ナイショ話にしては声が大きすぎますよ。外まで丸聞こえでしたよ?それで?どこに逃げられるのです?』
ヴィクトリアは真っ青になるがハロルドは
『はて、何の事でしょう?ヴィクトリア様はマタニティブルーの兆候が見られます。先程から仰っておられることが不明でして。』
『いやいや、マタニティブルーではなくて、仰っておられることが不明なのはいつもの事ですよ。これがヴィクトリア様のデフォルトですからね』
レイモンドが丁寧に付け加える。
『では。私はこれで、』
ハロルドはソファから立ち上がるとアレクセイは
『待て、お前は私が入室して礼儀も取らぬのだな。それは家臣としてどういう事か理解しての事か?』
ハロルドは今更ながら目を見開き急いで最上級の礼を取る。
『それでヴィクトリア、逃げるとは?』
アレクセイは冷たく問う。
もはやヴィクトリアは答えられる状態に無い。
『ここだけの話をする。万が一ヴィクトリアが産まれて来る我が子について疑念があるならば聞こう。今ならコレを回避する。』
そういうと、王子スマイルで首を切る真似をしてみせた。
ヴィクトリアはまたもやガタガタと震え上がる。
『真実が、明らかになってからでは私も何ともしてやれないからね。ヴィーわかるね?君には沢山良い勉強をさせてもらった。だから恩情は与えねばと思っているよ。今ならね。例え産まれて来る我が子の髪色が漆黒で薄いグレーの瞳でもね。』
おもむろにハロルドを覗き込みアレクセイはヴィクトリアに問うた。
『どうするの?ヴィー?』
ヴィクトリアはアレクセイとハロルドを交互に見た。
対照的な表情でヴィクトリアを見る2人の狭間でヴィクトリアの頭の中は高速で回転していた。
ハロルド・バーモンドはイライラしていた。
思惑通りに事が運んでいたはずがここに来て状況が一変している。
ルシャード・バーナディンまで使ったのに、ヴィクトリアのせいで全てが崩れそうになっている。
あの女は想像以上に肝が小さかった。
ちょっと脅されからってすぐにビビってやがる。
よりにもよって、この時期に俺を王宮に呼びつけるとは頭の中を見てみたい‥。こちらの手の内を晒しているようなものになる。
ここは一旦引くべきか。これ以上突っ込むと墓穴を掘る事になるかもしれぬ。
ヴィクトリアは懐妊している。恐らくは俺の子を。
その子を王太子の子とするつもりでいたが‥なにやら
ヴィクトリアが懸念している様だ。
とりあえず明日は慎重にいこう。
ヴィクトリアが何かやらかす前に手を打たなければ、
こちらが危ない。
夜が明けて、王宮が最も忙しい朝からヴィクトリアを訪ねる事にした。
人目を避け急いでヴィクトリアの元に向かうと、最も会いたくない奴と出くわした。
『おぉこれはこれは、ハロルド・バーモンド候爵令息久方ぶりだね。』
ハロルドはチェッと舌打ちをしたがすぐに
『お久しぶりでございますね。レイモンド・グランチェスター公爵令息殿。』
『今日はどうされた?』
レイモンドの振りにハロルドは一瞬固まるもすぐに対応する。
『たまたま王宮に用がありましたのでついでと言っては何ですが王太子妃殿下のご懐妊と聞き、お祝いを申し上げたくこちらまで足を運びました。』
『そうでしたか!では是非殿下にもどうですか?』
レイモンドの提案にハロルドは
『いやいや、王太子殿下についでと言う訳にもいきません故‥。』
動揺を隠せないハロルドを横目にレイモンドはニヤリと笑いハロルドの顔を覗き込む徴発をし去っていった。
ハロルドは再び舌打ちをしヴィクトリアの部屋へと急いだ。
ヴィクトリアは予想以上に憔悴してみえた。
『ハロ、不味いわ。』
ハロルドはイライラしながら
『何がですか?というか、不味いのは貴女です。こんな時に私を呼び付けるなんて、どういう頭をしているのですか?』
冷たくあしらうハロルドにヴィクトリアは寄り掛かり
『私、怖いわ。ハロしか頼る人が居ないの。』
大きな目に涙を浮かべて見上げるもハロルドはヴィクトリアを押しのけ、
『貴女は立派なお子をお産みになる事だけをお考え下さい。』
ヴィクトリアは床に崩れ落ち叫ぶ
『ハロ!産まれて来た子が金髪碧眼でなければ私は殺されるわ!』
ハロルドは慌てふためき
『静かに!何を興奮されておる?』
ヴィクトリアは思い立った様に
『ハロ!一緒に逃げましょう』
『!何故私が貴女と逃げるのですか?』
声を荒げるハロルドにヴィクトリアは
『貴方も同罪だわ!』
『お、お前、何を言うか!』
2人の声は扉の外まで響き渡っている。
『何を騒いでおるのだ?』
2人は我に返り声の主を見ると
『殿下‥』
固まるハロルドと声も出ないヴィクトリア。
『いやいや、せっかく懐妊のお祝いとやらでこちらにいらしてるのですからついでといっては何ですが殿下もお連れした次第ですが、お邪魔でしたか?』
ハロルドはレイモンドを睨み付ける。
レイモンドは追い打ちを掛けるかのように
『ナイショ話にしては声が大きすぎますよ。外まで丸聞こえでしたよ?それで?どこに逃げられるのです?』
ヴィクトリアは真っ青になるがハロルドは
『はて、何の事でしょう?ヴィクトリア様はマタニティブルーの兆候が見られます。先程から仰っておられることが不明でして。』
『いやいや、マタニティブルーではなくて、仰っておられることが不明なのはいつもの事ですよ。これがヴィクトリア様のデフォルトですからね』
レイモンドが丁寧に付け加える。
『では。私はこれで、』
ハロルドはソファから立ち上がるとアレクセイは
『待て、お前は私が入室して礼儀も取らぬのだな。それは家臣としてどういう事か理解しての事か?』
ハロルドは今更ながら目を見開き急いで最上級の礼を取る。
『それでヴィクトリア、逃げるとは?』
アレクセイは冷たく問う。
もはやヴィクトリアは答えられる状態に無い。
『ここだけの話をする。万が一ヴィクトリアが産まれて来る我が子について疑念があるならば聞こう。今ならコレを回避する。』
そういうと、王子スマイルで首を切る真似をしてみせた。
ヴィクトリアはまたもやガタガタと震え上がる。
『真実が、明らかになってからでは私も何ともしてやれないからね。ヴィーわかるね?君には沢山良い勉強をさせてもらった。だから恩情は与えねばと思っているよ。今ならね。例え産まれて来る我が子の髪色が漆黒で薄いグレーの瞳でもね。』
おもむろにハロルドを覗き込みアレクセイはヴィクトリアに問うた。
『どうするの?ヴィー?』
ヴィクトリアはアレクセイとハロルドを交互に見た。
対照的な表情でヴィクトリアを見る2人の狭間でヴィクトリアの頭の中は高速で回転していた。
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