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恋煩い

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フリードリヒはクラリスの懐妊がわかると連日定刻になると急いで王太子妃宮に戻るようになった。


アルフレッドが執務室を後にすると続いてファビウスも執務室を出て行く。その様子を眺めながらヨハネスはソファに倒れ込むようにうつ伏せになった。


『なぁテオ。お前も良かったな…』



何のことかも分からないテオドールは書類を片付けながらヨハネスを見た。



『だってそうだろう?義姉上の懐妊はお前にとっても喜ばしい事だろ?』


『私に限らず、我が国皆の幸福ですが?』


『そうゆう事ではない。』


…どうゆう事だよ。


黙りこくるテオドールにヨハネスは


『お前、義姉上がここに来てからすぐ恋してただろ?』


『は?』


思わず素のままで返したテオドールにヨハネスは


『義姉上にお前がだよ。』


『…。』



…なわけあるかい!


テオドールは鼻で笑うと


『なに?自分でも気づいてないとか?』


…なわけ…あるかよ。


『考えてもみろ、義姉上の懐妊の兆候など誰も気づかなかったのに真っ先に気づいたのはテオドール、お前だろ?』


『そりゃあ一応側近ですからね。』


ヨハネスは首を振ると静かにテオドールを見つめ


『恐らく気づいてないのはお前と義姉上だけだと思うぞ?』


…ウソだろ?

テオドールは頭を巡らせるも…


…なわけない。妃殿下は妃殿下だ。




『気がついてない訳はないよな?テオ。』


そう言葉を掛けてきたのはフィリップスを伴い執務室へ戻ってきたフリードリヒであった。


『フリード、お前!』


テオドールは己の態度にハッとしてヨハネスを見るもヨハネスは黙って頷いた。

『テオ、いい機会だ。』


…どんな機会だよ。


テオドールはフリードリヒを見る。


『あのね、誰でも分かるよ。お前がこんなにわかり易いとは逆に驚いたけどね。お前は一歩外に出れば見事なまでの公爵令息の仮面を被る事が出来る。

令嬢らにも爽やかなスマイルを浴びせ、そのスマイルもフィリップスとは違い胡散く無くどこかヤンチャな面も含んで逆に乙女心を擽るそうだぞ?』


…。



…俺とは違いってさ。胡散臭い笑顔なの?


フィリップスは怪訝そうにテオドールを静かに睨みつけた。




『そんなお前がよ?クラリス相手には仮面はもちろん、我々も見たことない振り回されっぷりだったからね?』


隣のフィリップスも


『決定的なのは、あの拉致事件だよね?ヨハネス殿下の媚薬は最強なものだ。あれに侵されている中目の前の女性が居てよく堪えられたなと。ましてそれが恋する相手ならば尚更だよ。』



『だから私はお前に頭を下げたんだ。』


フリードリヒの言葉にテオドールは驚き目を見開いた。


『クラリスを守るはある意味使命だ。だけどあそこでクラリスに手を掛けたとしてもお前が罪に問われる事は無かったさ。それなのにあそこまで疲弊しながらも耐え抜いたのはクラリスへの愛。そして私との友情だと思ったからね。』



黙って耳を傾けるテオドールの肩に手を掛けたフィリップスは静かに頷いた。そして踵を返してフリードリヒへ向き直したフィリップスは


『だけどね、逆も然りだよフリード。お前も私から言わせればテオに勝るくらいわかり易いんだ。』


意表を突かれたフリードリヒもまた驚いたようにフィリップスを見た。



『だってそうだろ?いつも飄々とし義理で王太子業務やってますスタンスだったお前がいつしか王太子というものに真正面から向き合うようになったろ?他人に興味すら示さないお前が妃殿下の事になると人が変わったようになってさ。


そんな姿見てたら俺らだって分かるさ。お前は妃殿下を愛しているって事くらいね?だからだよ?だからあんな状態でも妃殿下に指一本触れずに耐え抜いたのは、フリード。お前が妃殿下を愛しているという事をテオドールもまた知っていたからさ。』

フリードリヒはテオドールへ視線を流すとテオドールもまた静かに頷いた。


『初めは本当びっくりしたんだ。あの鉄パンツが。だけど妃殿下となってからのクラリス様は間違いなくフリードお前をそして我が国を変える大きな力をとなっていくのが側に居て嫌という程理解できたよ。そのくせ本人にはその自覚ゼロ。天真爛漫で…』


黙って聞いていたヨハネスは


『そうそう、自称武術に長けている女ね(笑)でもねテオ。私たち王太子チームいや義姉上と関わる人間で彼女を好きじゃない人間なんて存在しないさ。』


頷いたフリードリヒもまた


『言っとくけどね?クラリスの懐妊、私だって気づいていたからね?』


得意気に話すフリードリヒをテオドールは


…うわぁちっさ!


すかさずヨハネスも


『兄上、流石にそれは器が小さいよ…』


呆れたように呟いた。

フリードリヒは開き直ったかのように

『で、でもまぁ私しか知らないクラリスの一面が沢山あるからね。』


ヨハネスの正面に腰をおろしたフリードリヒは背もたれにもたれ掛かると長い足を組んだ。


…フリードしか知らない妃殿下。


みな一同にして頭を巡らせていると


『こらこらいかがわしい事を想像するな!』


フリードリヒはテオドールを睨みつけるとテオドールは頭をブンブンと横に振りヨハネスに助けを求めた。ヨハネスもまた真っ赤になって頷く他無かった。



そんな様子を嬉しそうにフィリップスは眺めていた。
















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