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おかしくねえか?
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交流会も最終日。相も変らず王太子執務室に全員集合のひととき。慌ただしく入ってきたのはアルフレッドの側近であるファビウス。
能面集団筆頭であるファビウスにしては珍しく息を切らしている。クラリスは少し微笑んでいた。
ファビウスはアルフレッドに耳打ちするかのように近づくとアルフレッドは
『良い、申してみよ。』
その場で話すように促した。ファビウスは辺りをチラリと見ると少し息を吐き
『ミケル殿下の婚約が決まった様です…』
!
…は?
…え?
驚いた面々は顔を見合わせると互いに頭を巡らせている。それはそうだ。つい先日ランズ王国王太子妃にあろう事か公開プロポーズした張本人なのだ。いくら何でも早すぎやしないだろうか。
『相手は?』
フリードリヒが問うとファビウスは
『グランデル王国、第1王女。サリナ王女でございます。』
…。
グランデル王国はリントン王国とランズ王国の隣国でもあるがとても小さな国であり特産物も無く他国からの輸入に頼っている細々と建つ王国である。
…?
静まる空気の中、互いに視線を交差させる一同。
『政略結婚には理由があるはずだけど…。
特に見当たらないが?』
フリードリヒの言葉にファビウスもまた頷いた。考え込むフリードリヒを横目に
『まぁグランデル王国なら警戒する事もないよね?そこまでの力も無いだろうし』
ヨハネスは大きく伸びをしながら吐き出した。
『ならば何故だ?逆に気になるな。』
アルフレッドはフリードリヒに視線を流すとフリードリヒは黙って頷いた。
『まぁグランデル王女ならばガルフ王国にとっては蜜にはなり得ないよね?毒にもならないけど…』
フリードリヒはファビウスにそのまま調査の続行を命じたのである。
『妃殿下、今日はまた…』
テオドールが驚いたように呟くとクラリスは
『テオ、分ってるわ。分ってるからそれ以上は言わないで…』
着飾るランズ王国王太子妃はフリードリヒの瞳の色であるブルーのドレスに身を包んでいる。開催国となる今回はクラリスにしては珍しく豪華に仕上げられていた。
クラリスは普段ナチュラルメイクにドレスもシンプルなものが多い。が、しかし今回はバッチリメイクにロイヤルブルーのドレス。頭には宝石が散りばめられたティアラまでその存在を主張するかのように輝いている。
…私が一番分っているわよ。こんなの似合わないって事くらい。
クラリスはがっくりの肩を落としているがテオドールは寧ろ反対の意味で驚いていたのだ。
かつては本の虫と呼ばれるくらい影が薄く、鉄パンツを履く女と揶揄されていたクラリスが見違える変貌を遂げているのだ。
それに本人は無自覚のようだが、クラリスは目鼻立がはっきりしているので、今宵の格好はとてもよく似合っている。クラリスは見慣れない自分に戸惑いを隠せないがテオドールは自国の王太子妃の美しさに息を飲んだのである。
トボトボも歩くクラリスの背中をテオドールは小さく微笑みながら追った。
国王が交流会閉幕の宣言をすると、雅楽団による演奏が始まり夜会が幕を開けた。
クラリスは慣れない格好に恥ずかしさも相まり最低限の挨拶を済ませ、テオドールとともにまたも壁の花となり人間観察をしていると前方にはガルフ王国王太子であるミケルが噂のグランデル王女を連れて挨拶に回っているのが見えた。
…。
クラリスの視線に気づいたミケルは一瞬クラリスを見るも視界にも入れず婚約者を腰を引き寄せた。
…?。
クラリスは2人の様子を遠巻きから眺めているとミケルはクラリスにニヤリと不敵な笑みを浮かべるとプイっとそっぽを向いた。
…は?何だかこれでは私が振られたみたいになってない?ってかおかしくない?
クラリスは徐ろに隣のテオドールを見上げると苛立ちをそのままぶつけるように睨みつけ、こちらもまたプイっとそっぽを向いた。
…おいおい、おかしくねえか?
テオドールはクラリスの視線を受けながら心の中で呟いた。
能面集団筆頭であるファビウスにしては珍しく息を切らしている。クラリスは少し微笑んでいた。
ファビウスはアルフレッドに耳打ちするかのように近づくとアルフレッドは
『良い、申してみよ。』
その場で話すように促した。ファビウスは辺りをチラリと見ると少し息を吐き
『ミケル殿下の婚約が決まった様です…』
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…は?
…え?
驚いた面々は顔を見合わせると互いに頭を巡らせている。それはそうだ。つい先日ランズ王国王太子妃にあろう事か公開プロポーズした張本人なのだ。いくら何でも早すぎやしないだろうか。
『相手は?』
フリードリヒが問うとファビウスは
『グランデル王国、第1王女。サリナ王女でございます。』
…。
グランデル王国はリントン王国とランズ王国の隣国でもあるがとても小さな国であり特産物も無く他国からの輸入に頼っている細々と建つ王国である。
…?
静まる空気の中、互いに視線を交差させる一同。
『政略結婚には理由があるはずだけど…。
特に見当たらないが?』
フリードリヒの言葉にファビウスもまた頷いた。考え込むフリードリヒを横目に
『まぁグランデル王国なら警戒する事もないよね?そこまでの力も無いだろうし』
ヨハネスは大きく伸びをしながら吐き出した。
『ならば何故だ?逆に気になるな。』
アルフレッドはフリードリヒに視線を流すとフリードリヒは黙って頷いた。
『まぁグランデル王女ならばガルフ王国にとっては蜜にはなり得ないよね?毒にもならないけど…』
フリードリヒはファビウスにそのまま調査の続行を命じたのである。
『妃殿下、今日はまた…』
テオドールが驚いたように呟くとクラリスは
『テオ、分ってるわ。分ってるからそれ以上は言わないで…』
着飾るランズ王国王太子妃はフリードリヒの瞳の色であるブルーのドレスに身を包んでいる。開催国となる今回はクラリスにしては珍しく豪華に仕上げられていた。
クラリスは普段ナチュラルメイクにドレスもシンプルなものが多い。が、しかし今回はバッチリメイクにロイヤルブルーのドレス。頭には宝石が散りばめられたティアラまでその存在を主張するかのように輝いている。
…私が一番分っているわよ。こんなの似合わないって事くらい。
クラリスはがっくりの肩を落としているがテオドールは寧ろ反対の意味で驚いていたのだ。
かつては本の虫と呼ばれるくらい影が薄く、鉄パンツを履く女と揶揄されていたクラリスが見違える変貌を遂げているのだ。
それに本人は無自覚のようだが、クラリスは目鼻立がはっきりしているので、今宵の格好はとてもよく似合っている。クラリスは見慣れない自分に戸惑いを隠せないがテオドールは自国の王太子妃の美しさに息を飲んだのである。
トボトボも歩くクラリスの背中をテオドールは小さく微笑みながら追った。
国王が交流会閉幕の宣言をすると、雅楽団による演奏が始まり夜会が幕を開けた。
クラリスは慣れない格好に恥ずかしさも相まり最低限の挨拶を済ませ、テオドールとともにまたも壁の花となり人間観察をしていると前方にはガルフ王国王太子であるミケルが噂のグランデル王女を連れて挨拶に回っているのが見えた。
…。
クラリスの視線に気づいたミケルは一瞬クラリスを見るも視界にも入れず婚約者を腰を引き寄せた。
…?。
クラリスは2人の様子を遠巻きから眺めているとミケルはクラリスにニヤリと不敵な笑みを浮かべるとプイっとそっぽを向いた。
…は?何だかこれでは私が振られたみたいになってない?ってかおかしくない?
クラリスは徐ろに隣のテオドールを見上げると苛立ちをそのままぶつけるように睨みつけ、こちらもまたプイっとそっぽを向いた。
…おいおい、おかしくねえか?
テオドールはクラリスの視線を受けながら心の中で呟いた。
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