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主従関係
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『お待ち下さい。』
声を掛けたのはフリードリヒ。
フリードリヒはクラリスの手をミハエルから取ると後ろに追いやった。
『友好国の外交においてご法度だよ?ごまかしは。それとも何?友好国と思ってたのは私だけなのかな?』
フリードリヒは首を静かに横に振ると
『義兄上。私も信じられませんでした。もしテオドールがクラリスに手を付けていたら私は彼を切ったでしょう。二度と会うことも無かったと思います。』
ミハエルは驚いたようにフリードリヒを見る。
『あの日救出したクラリスを馬車の中、そして宮のベッドで眠ることなく慰め解毒させたのは間違いなくこの私です。』
何も覚えていないクラリスは赤面して俯いている。フィリップスもまたミハエルに頭を垂れ
『恐れながら私からもよろしいでしょうか?』
ミハエルは少し驚いたようにフィリップスを見ると頷いた。
『あの日第1王子に連れられ宮に戻ってきたテオドールは体中傷だらけでした。己の体を傷め耐えていたのでしょう。その晩彼の体から媚薬を解毒させるに一晩で7人も使いました。』
『7人?』
思わず声を上げたミハエルはテオドールを驚いたように見るとフィリップスに
『それは彼がタフなの?それともアントワの威力か?』
フィリップスは苦笑いとともに
『双方かと…』
ミハエルは呆れたようにテオドールを見ると
『君はその…淡白ではなく寧ろタフな方だと思うが、そこまでさせたのはやはりフリードリヒ殿下への忠誠かい?』
テオドールはミハエルを真っ直ぐに見ると
『それもあります。』
『それも?』
『私は借りは必ず返すようにと育てられましたので。以前リントン王国から使者が来られた時にその使者はリントンの為に王女としてすぐに帰るようにと…』
ミハエルはバツが悪そうに
『あぁあの時ね…。ってか君が何でそこまで知ってるの?…本当恥ずかしいね。秘密裏に進める話だろうに…』
眉間にシワを寄せるミハエルに
『はい、私の知るべき話ではありません。ですから私は部屋を出ようとしましたところ、妃殿下は私に部屋を出るよう促すのではなく、その者を切れと…』
『切れ?』
『正確には少し痛めつけろと。さすればリントン使者として他国での使命を果たせぬとも恩情が与えられるのではないかと。』
『使命を果たさせてやってほしかったけどね。』
『そうすれば…その使者が使命を果たしたならば私が妃殿下にみすみす逃げられた汚名を着せられると。そして主従関係ではあるけれど裏切られた感情を側近である私に味わせたくはないと。』
…。
『使者は言いました。リントンが大切でないのか?と。妃殿下はもちろん大切だと。されど母国であるリントンの使者の使命よりも、まだ側近になって間もない私の事を気に掛けて下さいました。その時です。私は命ある限り妃殿下をお守りすると誓いました。』
ここまで詳細を知らされていないフリードリヒも驚いたように固まっている。
ミハエルは黙りこんでしばらくテオドールを見つめていたがテオドールの真っ直ぐな視線に耐え兼ねいつものミハエルに戻り
『クラリス、では夜会までゆっくりさせてもらうよ。』
…え?
『お兄様、夜会までこちらに残られるのですか?』
ミハエルはまたも眉を下げフリードリヒに
『ね?冷たい妹だろ?』
…いやいやいつも自国の用だけ済ませさっさと帰ってくるのがデフォでしたよね?
クラリスは目の前のミハエルを不思議そうに見つめながらしばらく放心していたのである。
声を掛けたのはフリードリヒ。
フリードリヒはクラリスの手をミハエルから取ると後ろに追いやった。
『友好国の外交においてご法度だよ?ごまかしは。それとも何?友好国と思ってたのは私だけなのかな?』
フリードリヒは首を静かに横に振ると
『義兄上。私も信じられませんでした。もしテオドールがクラリスに手を付けていたら私は彼を切ったでしょう。二度と会うことも無かったと思います。』
ミハエルは驚いたようにフリードリヒを見る。
『あの日救出したクラリスを馬車の中、そして宮のベッドで眠ることなく慰め解毒させたのは間違いなくこの私です。』
何も覚えていないクラリスは赤面して俯いている。フィリップスもまたミハエルに頭を垂れ
『恐れながら私からもよろしいでしょうか?』
ミハエルは少し驚いたようにフィリップスを見ると頷いた。
『あの日第1王子に連れられ宮に戻ってきたテオドールは体中傷だらけでした。己の体を傷め耐えていたのでしょう。その晩彼の体から媚薬を解毒させるに一晩で7人も使いました。』
『7人?』
思わず声を上げたミハエルはテオドールを驚いたように見るとフィリップスに
『それは彼がタフなの?それともアントワの威力か?』
フィリップスは苦笑いとともに
『双方かと…』
ミハエルは呆れたようにテオドールを見ると
『君はその…淡白ではなく寧ろタフな方だと思うが、そこまでさせたのはやはりフリードリヒ殿下への忠誠かい?』
テオドールはミハエルを真っ直ぐに見ると
『それもあります。』
『それも?』
『私は借りは必ず返すようにと育てられましたので。以前リントン王国から使者が来られた時にその使者はリントンの為に王女としてすぐに帰るようにと…』
ミハエルはバツが悪そうに
『あぁあの時ね…。ってか君が何でそこまで知ってるの?…本当恥ずかしいね。秘密裏に進める話だろうに…』
眉間にシワを寄せるミハエルに
『はい、私の知るべき話ではありません。ですから私は部屋を出ようとしましたところ、妃殿下は私に部屋を出るよう促すのではなく、その者を切れと…』
『切れ?』
『正確には少し痛めつけろと。さすればリントン使者として他国での使命を果たせぬとも恩情が与えられるのではないかと。』
『使命を果たさせてやってほしかったけどね。』
『そうすれば…その使者が使命を果たしたならば私が妃殿下にみすみす逃げられた汚名を着せられると。そして主従関係ではあるけれど裏切られた感情を側近である私に味わせたくはないと。』
…。
『使者は言いました。リントンが大切でないのか?と。妃殿下はもちろん大切だと。されど母国であるリントンの使者の使命よりも、まだ側近になって間もない私の事を気に掛けて下さいました。その時です。私は命ある限り妃殿下をお守りすると誓いました。』
ここまで詳細を知らされていないフリードリヒも驚いたように固まっている。
ミハエルは黙りこんでしばらくテオドールを見つめていたがテオドールの真っ直ぐな視線に耐え兼ねいつものミハエルに戻り
『クラリス、では夜会までゆっくりさせてもらうよ。』
…え?
『お兄様、夜会までこちらに残られるのですか?』
ミハエルはまたも眉を下げフリードリヒに
『ね?冷たい妹だろ?』
…いやいやいつも自国の用だけ済ませさっさと帰ってくるのがデフォでしたよね?
クラリスは目の前のミハエルを不思議そうに見つめながらしばらく放心していたのである。
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