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勢揃い

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『おやおやこんな所で立ち話ですか?それならばゆっくりとお話ししましょう。』


ミケルの後方からフリードリヒがフィリップスとテオドールを連れてゆっくりとこちらにやって来るのが見えた。その少し離れた後方にはアルフレッドとファビウスの姿も見えた。ミケルは振り返ると笑顔でそれに答える。


『これはこれはフリードリヒ殿。あっこれは失礼。私はランズ王国第3王子が姫を狙っているという事を極秘に掴んでおりましたのでこうして姫をお守りしている所です。』


ミケルは笑顔で答えると騎士らを一歩下がらせた。一斉に下ろされる剣が空を切る音が鳴る。


フリードリヒはそのすぐ隣の部屋の扉を開けるとミケルを中に促した。



『で?今回はまたどうやって?まさかこの白昼に迷われたのですか?』

フリードリヒはソファへ促しながら話すとミケルは


『訳あって姫を連れ戻さなくてならなくなってしまったからね。姫と話をしようと思って探していた時にたまたまあの入口と出会ったという訳です。』



…だからって王族エリアに入っていいのか?


テオドールはあからさまにミケルを睨みつけた。


『とにかく、金輪際ここへは入らない。何ならこの国への入国を禁じてもらっても構わない。その代わり姫を返して頂きたい。』



…は?姫って私のこと?


クラリスは理由のわからない事を話すミケルを不思議そうに眺めていた。


『そもそも返すも何もクラリスはガルフ王国の所有物ではないと思いますが?』


『姫は、リントン姫は私の婚約者候補であったのだ。』


…確かに。


『…それならば、私もですが?』


フリードリヒはゆっくりと話す。


『そうなのですがそうではない。我が国はきちんと段取りを取りリントン王国に何度も話を持ちかけていた。だからリントン姫の婚約者を決める留学も形式だけのものだったのだ。』



…そうなの?

クラリスは他人事のように頷きながら耳を傾けていた。


『結果、形式だけのもので無かったと?』


フリードリヒは掌をヒラヒラと眺めながらミケルに問うと


『ランズ王国はリントン姫が必要なのですか?』


フリードリヒはミケルを真っ直ぐに捉え



『…別に。』


クラリスはガクッと肩を落とした。確かに政略結婚だ。ランズ王国でもガルフ王国でも同じようなもの。どちらかと言えばクラリスもガルフ王国に嫁ぎたいと願っていた時期もあったにはあった。が?今になっても?


…。


フツフツと湧き上がる怒りを抑えるのに注力するクラリスを横目に


『ならば話は早い。代わりと言っては何だか貴国に有益な姫を充てがう事を約束する。』


フリードリヒは立ち上がろうとするミケルを制すると


『リントン姫は別にどうでもいいけど、クラリスは渡せないよ?彼女は私の妻だから。』


ミケルはあからさまに怪訝そうな表情でフリードリヒを見た。


『だから政治的に我が国はリントン姫は必要無いからね?だけどガルフ王国には必要って事でしょう?でもそれとクラリスとどういう関係がある?彼女は今やランズ王国王太子妃。これは誰もが周知の事だけど?そんなにリントン姫が必要ならばまだリントンに姫は居るであろう?』


フリードリヒはクラリスに話を振ると


『まぁ…居るには居ますが。』



『だそうだよ?』


フリードリヒはにっこり笑った。




しばらくの沈黙の後、口を開いたのはクラリスであった。


『ミケル殿下。貴方は何を企んでおられるのですか?』


…。



『そもそもおかしいではありませんか?確かに私はガルフ王国に留学に参りました。ですが1度もご一緒した事もなければ殿下は私を知りもしなかったはずです。それを今になって。


それにそもそも今問題となっておりますのは殿下が王族エリアに無断侵入された事ですのよ?話をはぐらかすのに私を使うのはお止めください。』


『それは違う!』


ミケルは間髪入れずに否定すると


『逆だ。王族エリアに居た事をはぐらかす為にではなく、姫を連れて帰る為にここに居たのだ。頼む…。分ってくれ。私には姫が必要なのだ。』


公開プロポーズに一同が驚愕していると


『違うよね?私にはじゃなく、我が国にはでしょう?』


現れたのはリントン王国王太子であるミハエルであった。

『お兄様!』


驚いたクラリスは思わず立ち上がり声を上げた。


…リントン王国まで無断侵入するなんて。


クラリスはオロオロとフリードリヒを見ると
フリードリヒはにっこりと微笑んだ。







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