愛を知らない２人はお似合いでした【完】

弟の頼み

流れる風が幾分か涼しくなってきた頃、クラリスは勢力的に視察に出掛けていた。



この日はまたアルフレッドが王太子執務室でソファに座りお茶を飲んでいた。


…暇なのか？

フィリップスは優雅にお茶を飲む兄弟をチラリと覗き見ていた。


アルフレッドはあれから週の半分はクラリスへのお花やお菓子を持ってフリードリヒの元を訪ねてはお茶を飲んで帰る。

フィリップスはもしやクラリスへの贈り物はフェイクで本当はフリードリヒと兄弟の時間を楽しみにしているのではないかと考えている。


フィリップスは２人に新鮮な風を入れようと執務室の窓を開くとちょうどヨハネスが出かける所であった。


…珍しいな。


しばらく観察しているとフリードリヒは振り返り


『どうした？』


フィリップスは我に返ると


『いえ、ヨハネス殿下がお出かけになられるようでしたので…』


『ヨハネスが？』


アルフレッドはソファから立ち上がると窓辺まで足を運んだ。


『珍しいな…。』　


『フィリップス、クラリスは今日も視察か？』


フリードリヒの問にフィリップスは少し頭を巡らせ


『はい、朝からテオドールがその用意をしておりましたので。』


『どこへ行ってる？』



『確か、孤児院の後スラム街へ。』　



フリードリヒが何やら考え込むとアルフレッドは眉を潜め

『フリード、どうした？』


『いや…う～ん。』


更に考え込む姿に業を煮やしフィリップスを睨みつけ


『どういう事だ？』


フィリップスも言葉を選びながら

『ヨハネス殿下が外に出られるのは珍しいので…』


『だから何だ？』


フィリップスはフリードリヒに目線をやると
フリードリヒは１つ頷き


『兄上、お願いしてもよろしいですか？』


アルフレッドは驚いたようにフリードリヒを見ると


『何だ。』


弟からの初めての頼みに全力で耳を傾けた。