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ランズ王国の日常2
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クラリスはテオドールを何とか説き伏せてこの日はガセボでお茶を飲んでいた。
『やっぱりお外でのなんちゃってお茶会は楽しいわね♬』
明らかにテンションの異なる2人の後方から
『こんな所にいらしたのですか!』
声の主はランズ王国第3王子、ヨハネスであった。テオドールはすぐさま立ち上がるとヨハネスはそれを片手で制してからクラリスの前に腰を下ろした。
『冷たいなぁ、姉上。お茶なら私も誘って下さいよ。』
クラリスを姉上と慕うヨハネスにクラリスはカップをソーサに戻すと
『特に予定をしていたわけではないのです。たまたま窓の外から気持ち良い風が吹き込んできたもので』
…よく言うよ。毎日毎日ガセボガセボ煩いくらい騒いでたのはどこの誰だよ。
テオドールは心の中で突っ込んだ。
『殿下は本日の執務は終わられたのですか?』
しょっちゅうクラリスの元へ何かにつけて遊びに来ているとしか思えないクラリスはヨハネスに言った。
…貴方暇なの?
ヨハネスは苦笑いを浮かべながらも
『毎日、あの書類と格闘してたらどうかなりますからね?たまには息抜きも必要なのです。』
…貴方は息抜きだらけだわ。
クラリスが小さく笑うと
『あっ!兄上だ!』
ヨハネスはガセボから遠く離れた廊下を、側近を連れてゾロゾロと歩くアルフレッドを見つけるとバツの悪そうな笑顔をクラリスに向けた。
『アル兄は堅物だからね、私は少し苦手なのです。』
『あら、アルフレッド様はご自分のお立場をよく理解されておられるのでは?』
ヨハネスはあからさまに驚いた風に
『アル兄が?第1王子でありながら立太子出来なかったのに?』
…声を抑えろ!
クラリスはハラハラしながら口を開いた。
『そのような事…王族であれば立太子してようがしてまいが、使命は同じですよ。』
ヨハネスはふ~んといった感じでクラリスを見つめると
『でも姉上は王太子妃になるべくここに嫁いで来たのですよね?ならば兄上がもし王太子でなくなればどうなるのですか?』
クラリスは動悸まで催していた。
『もし、はありえませんわ。』
『王太子妃に拘るって事ですよね?』
『そうは言っていませんよ。』
2人のやり取りがエキサイトしてくる前に
『ヨハネス!』
その言葉にテオドールはまたもさっと立ち上がる。アルフレッドはテオドールを見る事もなくヨハネスに
『またこんな所で油を売っておるな?お前の決裁が無いと進まぬ案件もあるのだぞ!』
お叱りを受けるヨハネスの前にクラリスは
『申し訳ありません。私が退屈しておりましたので話し相手になって頂いておりましたの。
さぁヨハネス殿下、もう大丈夫ですわ。ありがとうございました。』
そう言うと半ば強引にヨハネスを見送った。
名残惜しそうに振り返りながら歩くヨハネスにアルフレッドはトドメの睨みを効かせるとヨハネスは駆け足で戻って行った。
『すまないね。愚弟が迷惑を掛けて。』
クラリスは小さく微笑みながら
『とんでも無い事でございますわ。』
『あいつは末っ子で甘やかされて育てられた故少々手を焼いておる。』
アルフレッドは珍しく微かに歯を見せて微笑むとその場を後にした。
嫌な汗をかいたクラリスはどっぷり疲れ果て背もたれにもたれ掛かった。
『ってかテオ、貴方流石ね。』
テオドールは今更ながらという風に
『やっとわかりましたか?それで何が?』
クラリスは少し頬を膨らませると
『だって、殿下たちがいらっしゃるとまるで影のようだもの。あれが俗に言う、私は居ません、聞いてませんってヤツ?』
テオドールは苦笑いを浮かべると
『まぁ癖ですかね。』
お茶を優雅に飲むテオドールの横でクラリスは今度は視察に出掛けるフリードリヒを見つけると
『ねえ、フィリップスって武道はどうなの?剣術とか。』
テオドールは突然の話題に不思議そうに答える。
『どぉって、まぁ殿下の側近の1人ですからね?弱くはないですよ?王宮で上位1割には入るでしょうね?』
クラリスは目を丸くして
『まぢで?でもフィリップスは私がスラムで襲われた時にテオだから助ける事が出来たって言ってたわ!』
テオドールはこれまた当然という風に
『でしょうね。』
『って事は貴方はもっと強いのよね?なのにこんな所で呑気にお茶会してて大丈夫なの?』
…呑気にってあんたのワガママな?
『だってさ、見て。殿下のお連れはあれだけ?あのアルフレッド様だってゾロゾロ連れているのに殿下は王太子よ?視察でもしもの事があったらと考えると貴方、こんな所に居ていいの?』
…いやいやそれが仕事な?あんたのお守りが。
テオドールは辟易としながら
『殿下は私がよりもお強いですけどね?』
…。
クラリスは一瞬固まり、すぐに
『え?待って待って、殿下は細マッチョなの?』
『細マッチョ?』
『そう、細マッチョ。線が細いだけじゃなくて鍛え上げた筋肉バリバリみたいな?』
…。
『ご存知ないのですか?』
テオドールは呆れ果てていると
『だって見た事ないもの。』
…そうか見た事ないのか。っておい!まぢで?
テオドールは隣のクラリスを驚きながら凝視した。
『やっぱりお外でのなんちゃってお茶会は楽しいわね♬』
明らかにテンションの異なる2人の後方から
『こんな所にいらしたのですか!』
声の主はランズ王国第3王子、ヨハネスであった。テオドールはすぐさま立ち上がるとヨハネスはそれを片手で制してからクラリスの前に腰を下ろした。
『冷たいなぁ、姉上。お茶なら私も誘って下さいよ。』
クラリスを姉上と慕うヨハネスにクラリスはカップをソーサに戻すと
『特に予定をしていたわけではないのです。たまたま窓の外から気持ち良い風が吹き込んできたもので』
…よく言うよ。毎日毎日ガセボガセボ煩いくらい騒いでたのはどこの誰だよ。
テオドールは心の中で突っ込んだ。
『殿下は本日の執務は終わられたのですか?』
しょっちゅうクラリスの元へ何かにつけて遊びに来ているとしか思えないクラリスはヨハネスに言った。
…貴方暇なの?
ヨハネスは苦笑いを浮かべながらも
『毎日、あの書類と格闘してたらどうかなりますからね?たまには息抜きも必要なのです。』
…貴方は息抜きだらけだわ。
クラリスが小さく笑うと
『あっ!兄上だ!』
ヨハネスはガセボから遠く離れた廊下を、側近を連れてゾロゾロと歩くアルフレッドを見つけるとバツの悪そうな笑顔をクラリスに向けた。
『アル兄は堅物だからね、私は少し苦手なのです。』
『あら、アルフレッド様はご自分のお立場をよく理解されておられるのでは?』
ヨハネスはあからさまに驚いた風に
『アル兄が?第1王子でありながら立太子出来なかったのに?』
…声を抑えろ!
クラリスはハラハラしながら口を開いた。
『そのような事…王族であれば立太子してようがしてまいが、使命は同じですよ。』
ヨハネスはふ~んといった感じでクラリスを見つめると
『でも姉上は王太子妃になるべくここに嫁いで来たのですよね?ならば兄上がもし王太子でなくなればどうなるのですか?』
クラリスは動悸まで催していた。
『もし、はありえませんわ。』
『王太子妃に拘るって事ですよね?』
『そうは言っていませんよ。』
2人のやり取りがエキサイトしてくる前に
『ヨハネス!』
その言葉にテオドールはまたもさっと立ち上がる。アルフレッドはテオドールを見る事もなくヨハネスに
『またこんな所で油を売っておるな?お前の決裁が無いと進まぬ案件もあるのだぞ!』
お叱りを受けるヨハネスの前にクラリスは
『申し訳ありません。私が退屈しておりましたので話し相手になって頂いておりましたの。
さぁヨハネス殿下、もう大丈夫ですわ。ありがとうございました。』
そう言うと半ば強引にヨハネスを見送った。
名残惜しそうに振り返りながら歩くヨハネスにアルフレッドはトドメの睨みを効かせるとヨハネスは駆け足で戻って行った。
『すまないね。愚弟が迷惑を掛けて。』
クラリスは小さく微笑みながら
『とんでも無い事でございますわ。』
『あいつは末っ子で甘やかされて育てられた故少々手を焼いておる。』
アルフレッドは珍しく微かに歯を見せて微笑むとその場を後にした。
嫌な汗をかいたクラリスはどっぷり疲れ果て背もたれにもたれ掛かった。
『ってかテオ、貴方流石ね。』
テオドールは今更ながらという風に
『やっとわかりましたか?それで何が?』
クラリスは少し頬を膨らませると
『だって、殿下たちがいらっしゃるとまるで影のようだもの。あれが俗に言う、私は居ません、聞いてませんってヤツ?』
テオドールは苦笑いを浮かべると
『まぁ癖ですかね。』
お茶を優雅に飲むテオドールの横でクラリスは今度は視察に出掛けるフリードリヒを見つけると
『ねえ、フィリップスって武道はどうなの?剣術とか。』
テオドールは突然の話題に不思議そうに答える。
『どぉって、まぁ殿下の側近の1人ですからね?弱くはないですよ?王宮で上位1割には入るでしょうね?』
クラリスは目を丸くして
『まぢで?でもフィリップスは私がスラムで襲われた時にテオだから助ける事が出来たって言ってたわ!』
テオドールはこれまた当然という風に
『でしょうね。』
『って事は貴方はもっと強いのよね?なのにこんな所で呑気にお茶会してて大丈夫なの?』
…呑気にってあんたのワガママな?
『だってさ、見て。殿下のお連れはあれだけ?あのアルフレッド様だってゾロゾロ連れているのに殿下は王太子よ?視察でもしもの事があったらと考えると貴方、こんな所に居ていいの?』
…いやいやそれが仕事な?あんたのお守りが。
テオドールは辟易としながら
『殿下は私がよりもお強いですけどね?』
…。
クラリスは一瞬固まり、すぐに
『え?待って待って、殿下は細マッチョなの?』
『細マッチョ?』
『そう、細マッチョ。線が細いだけじゃなくて鍛え上げた筋肉バリバリみたいな?』
…。
『ご存知ないのですか?』
テオドールは呆れ果てていると
『だって見た事ないもの。』
…そうか見た事ないのか。っておい!まぢで?
テオドールは隣のクラリスを驚きながら凝視した。
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