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ランズ王国の日常1

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アルフレッドは珍しく執務の手が止まる…。

『何なんだ。あの王女…』


先日の夜会で螺旋階段から落とされ負傷までしたにも関わらず令嬢らを無罪放免とした件でアルフレッドはどれだけ考えても理解が出来なかった。

『おい、ファビウス。』


ファビウスとはアルフレッドの側近。能面集団を率いる筆頭だ。


ファビウスが執務の手を止めアルフレッドを見ると、

『令嬢とはあれ程キャンキャン吠えるものか?ましてや、彼女は王女だろ?』

ファビウスは少し考え

『クラリス妃殿下の事ですか?』


アルフレッドはハッとしたように、それでいてバツが悪そうに


『他には居らぬだろう?あれ程キャンキャンと…』


ファビウスから視線を逸らすアルフレッドに

『まぁ、ヒステリックな令嬢もおりますからね…』


『あれはヒステリックではなかろう?まるで動物園の猿のようであったぞ?』


ファビウスは小さく笑うと


『そういえば…テオドールと妃殿下は犬と猿と呼ばれているそうですから、あながち間違いではないですね…。』


『テオドール?奴はフリードリヒの側近だろ?』


『いや、最近はもっぱら妃殿下付きだそうです。』


『犬と猿ねぇ。』



アルフレッドは小さく呟くと再び執務に取り掛かった。



一方の犬と猿は…


『テオ、今日のお茶はガセボでしない?』


テオドールは自らお茶を淹れると


『お茶です。』


…。


『テオ、私は執務の疲れを取る為に、心地よい風に当りたいからガセボでって言ってるの。何も貴方の淹れたお茶を飲みたい訳では無いのよ!』


そう言いながらクラリスはテオドールの淹れたお茶に口を付けた。


『妃殿下、妃殿下は監視されているのですよね?ここが最も安全な場所ですよ?』


『逃げるって言うの?』


クラリスとテオドールがいつものように言い争いをしていると


『なに?楽しそうじゃない?』


いきなりノックもせずに入室できるのはフリードリヒだけである。


テオドールはさっと立ち上がると


『テオ、楽にしてて』

フリードリヒは片手を上げてテオドールが礼を取るのを制止した。


『で?誰が誰に監視されてるって?』


…。


…。


視線を重ねるクラリスとテオドールにフリードリヒは


『いつの間にそんなに仲良くなったの?目で会話するってなかなかだよ!で?私だけ仲間外れって事?』


クラリスはテオドールを睨みつけながら小さく息を吐くとテオドールに顎で合図した。


…話せば?


クラリスの心の声を読み取ったテオドールは俺?というふうな表情ながらフリードリヒに1連の話を話し出した。





フリードリヒはニヤリと笑いながら長い足を組み替えると

『なるほどね。クラリスは推理小説が好きなのかな?でもあまり向いてないかもしれないね。ってか、そのリザに関する事は私も知っているから気にしなくても大丈夫。問題はクラリスが誰に狙われ監視されているかだ。』


フリードリヒはしばらく考え込むといきなり立ち上がり


『王太子宮だ。あそこがもうすぐ完成するからそれまでだね。あと少しの我慢だよ。』


…。

…。


ポカンとする2人に



『何だか表情まで似てきたね』



我に返った2人は


『『どこが!』』



フリードリヒは楽しそうに笑いながら


『ほら、キレイにハモってるよ!』


2人は怪訝そうに顔を見合わせた。


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