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犬と猿
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『妃殿下、貴女は話をされる際、1度整理してから話された方が良いですね?で?核はどこですか?』
『まだこれからよ?』
テオドールは驚きソファから滑り落ちた。
…嘘だろ?何だったの?これまでの時間は。
『そんな所で寝転んでないで起きなさい。いい?これからよ。』
テオドールはクラリスを睨みつけながらソファに腰を下ろすと
『手短にお願いしますよ?』
『王太子派以外の者だと思うの。だってリザの存在はスキャンダルよ?』
『国王に子が居てもスキャンダルとはなりませんよ?』
『そう、ならない。でも私は狙われているのは事実。敵はそうじゃない何かだと思ってるのよ。そもそも国王の子どもならカモフラージュしなくてもよいもの。』
『カモフラージュ?』
『そう、5歳の他国の王女に与えたミニハウス。実はリザと遊ばせる為、堂々と王宮の中にリザを招き入れるため。だって周りは私の連れだと思うもの。』
テオドールは目を見開くと
『何だか冴えてきましたね。』
クラリスはテオドールを睨みつける。
『さっきのは5歳の私の見解だからね?』
『で?リザとやらは何と?』
『さぁ、どうなのかしら?彼女も私の事はまさか王太子妃とは知らないはずよ?根掘り葉掘り聞くわけにもいかないし。でも昔と変わらず仲良しよ?』
…さあ、どうかしらって。
テオドールは頭を抱えてクラリスを見つめた。
『案外何も関係無いかもですよ?』
どうでもよくなってきたテオドールが適当に答えると
『そう。その線もある。だけどね?現におかしな事がある以上、何かあるのよ。』
『おかしな事?』
クラリスは平然とお茶を飲みながら
『そうよ。だって私、ここでも監視されてるもの。初めは殿下かなとも思ってたんだけど、貴方がこうも堂々と私の側近になって近くに居る。ということは、殿下以外の人で私を監視するよう支持が出来る人間なんてそうは居ないわ。』
テオドールは眉を少し上げると何やら深刻な表情で考え込んだ。
『思い違いとかではなくて?』
クラリスは呆れるように
『貴方ね。私を誰だと思ってるの?これでも一国の王女。誰かに監視されたり尾行されたりして気付かない訳ないでしょう?』
『…。』
『まぁ、護身術には長けてるから心配は無用よ?』
…その護身術とやら、あまりアテにならないけどね?
『殿下に話された方がよろしいかと。』
クラリスは咳き込むように
『駄目!それだけは駄目!』
『何故ですか?』
クラリスは目の前のテオドールを真っ直ぐに見据えてカップをソーサに戻した。
『貴方は特別なのよ。貴方にはわからないだろうけど』
クラリスの言葉を遮るように
『王族でないからですか?』
クラリスは少し淋しそうに
『いいえ、貴族も同じ。』
…ならば俺も貴族だぜ?
『貴方は貴族でありながらご両親の愛情を存分に浴びてきたはずよ。』
…は?
テオドールは仏頂面の父であるランズ王国宰相である公爵を頭に浮かべると怪訝そうにクラリスを見た。
『公爵はこの国でも要となる人物よ。表に出ればたちまち宰相の顔になるでしょう。でも家の中では異なる顔を持っていらっしゃるはずよ。』
テオドールにはよくわからない。
『貴方はそれがデフォだからわからないのよ。でも貴方を見ていれば分かる事。何でも思った事を口にし、表情すら隠さない。』
…ディスってる?
『人の顔色を伺う事もしない。それはね貴方が公爵家でのびのびと育てられた証拠よ。』
…。確かにのびのびが過ぎたかも知れない。
『爵位の為に家族を駒とする事を非難するつもりは無いわ。爵位が絶対のこの世の中。致し方ないもの。逆に言えば公爵はレアって事ね。』
…。
『殿下もそう感じておられるはずよ?だって見てご覧なさいよ。殿下の側に仕える面々。貴方には及ばないけれど皆、自由奔放じゃない?
一方のアルフレッド様側近を見なさい。能面集団だわ。エリート中のエリートって感じでしょう?』
…えっと、やっぱりディスってるよな?
『殿下は王太子となるべく生まれてきてから孤独の連続であったはず。それこそ国王陛下や王妃様はお忙しく国の為に働いていらっしゃったはず。幼い殿下はお寂しかった事でしょう。』
『それならば他の王子殿下も又同じでは?』
クラリスは静かに首を横に振ると
『違うわ。全く違う。だって正妃様のお子よ。周りに付く護衛から何から何まで異なるもの。休まる暇もないわ。もし、万が一よ?万が一リザが先代の子ではなくて…。』
テオドールはゴクリと唾を飲む。
『万に1つもないだろうけど、リザと殿下のご両親に関係があるならば…。』
『それならば王女となりますので問題ないかと?』
クラリスはテオドールから視線を逸らすと
『そうね。そして国王陛下のお子でも珍しい事ではないわ。ならば…王妃様だとしたら?』
…。
『王妃様とどなたのお子ならば、敵が狙う絶大なスキャンダルよ。』
…!
テオドールは目を見開き硬直する。
『無いわよ?無い無い。だけどこれならば敵は必死に証拠を掴みにいくでしょうね。でもこれはただの逆算よ?有り得ないもの。』
…。
『でも、もしそうならば母親の愛情を存分に浴びて来なかった殿下からみれば、その子に先代が代わりに愛情を注いでたとしたら、それはやりきれないわ。』
『貴方はその為に…』
クラリスら美しく微笑むと
『だから私が何とかするのよ。一応、まだ妻でしょ?』
テオドールは眉間にシワを刻み
『何故そこまで?』
クラリスは少し考え
『う~ん。私が王女として生まれてきた意味みたいな?』
クラリスはとぼけてみせた。
『まだこれからよ?』
テオドールは驚きソファから滑り落ちた。
…嘘だろ?何だったの?これまでの時間は。
『そんな所で寝転んでないで起きなさい。いい?これからよ。』
テオドールはクラリスを睨みつけながらソファに腰を下ろすと
『手短にお願いしますよ?』
『王太子派以外の者だと思うの。だってリザの存在はスキャンダルよ?』
『国王に子が居てもスキャンダルとはなりませんよ?』
『そう、ならない。でも私は狙われているのは事実。敵はそうじゃない何かだと思ってるのよ。そもそも国王の子どもならカモフラージュしなくてもよいもの。』
『カモフラージュ?』
『そう、5歳の他国の王女に与えたミニハウス。実はリザと遊ばせる為、堂々と王宮の中にリザを招き入れるため。だって周りは私の連れだと思うもの。』
テオドールは目を見開くと
『何だか冴えてきましたね。』
クラリスはテオドールを睨みつける。
『さっきのは5歳の私の見解だからね?』
『で?リザとやらは何と?』
『さぁ、どうなのかしら?彼女も私の事はまさか王太子妃とは知らないはずよ?根掘り葉掘り聞くわけにもいかないし。でも昔と変わらず仲良しよ?』
…さあ、どうかしらって。
テオドールは頭を抱えてクラリスを見つめた。
『案外何も関係無いかもですよ?』
どうでもよくなってきたテオドールが適当に答えると
『そう。その線もある。だけどね?現におかしな事がある以上、何かあるのよ。』
『おかしな事?』
クラリスは平然とお茶を飲みながら
『そうよ。だって私、ここでも監視されてるもの。初めは殿下かなとも思ってたんだけど、貴方がこうも堂々と私の側近になって近くに居る。ということは、殿下以外の人で私を監視するよう支持が出来る人間なんてそうは居ないわ。』
テオドールは眉を少し上げると何やら深刻な表情で考え込んだ。
『思い違いとかではなくて?』
クラリスは呆れるように
『貴方ね。私を誰だと思ってるの?これでも一国の王女。誰かに監視されたり尾行されたりして気付かない訳ないでしょう?』
『…。』
『まぁ、護身術には長けてるから心配は無用よ?』
…その護身術とやら、あまりアテにならないけどね?
『殿下に話された方がよろしいかと。』
クラリスは咳き込むように
『駄目!それだけは駄目!』
『何故ですか?』
クラリスは目の前のテオドールを真っ直ぐに見据えてカップをソーサに戻した。
『貴方は特別なのよ。貴方にはわからないだろうけど』
クラリスの言葉を遮るように
『王族でないからですか?』
クラリスは少し淋しそうに
『いいえ、貴族も同じ。』
…ならば俺も貴族だぜ?
『貴方は貴族でありながらご両親の愛情を存分に浴びてきたはずよ。』
…は?
テオドールは仏頂面の父であるランズ王国宰相である公爵を頭に浮かべると怪訝そうにクラリスを見た。
『公爵はこの国でも要となる人物よ。表に出ればたちまち宰相の顔になるでしょう。でも家の中では異なる顔を持っていらっしゃるはずよ。』
テオドールにはよくわからない。
『貴方はそれがデフォだからわからないのよ。でも貴方を見ていれば分かる事。何でも思った事を口にし、表情すら隠さない。』
…ディスってる?
『人の顔色を伺う事もしない。それはね貴方が公爵家でのびのびと育てられた証拠よ。』
…。確かにのびのびが過ぎたかも知れない。
『爵位の為に家族を駒とする事を非難するつもりは無いわ。爵位が絶対のこの世の中。致し方ないもの。逆に言えば公爵はレアって事ね。』
…。
『殿下もそう感じておられるはずよ?だって見てご覧なさいよ。殿下の側に仕える面々。貴方には及ばないけれど皆、自由奔放じゃない?
一方のアルフレッド様側近を見なさい。能面集団だわ。エリート中のエリートって感じでしょう?』
…えっと、やっぱりディスってるよな?
『殿下は王太子となるべく生まれてきてから孤独の連続であったはず。それこそ国王陛下や王妃様はお忙しく国の為に働いていらっしゃったはず。幼い殿下はお寂しかった事でしょう。』
『それならば他の王子殿下も又同じでは?』
クラリスは静かに首を横に振ると
『違うわ。全く違う。だって正妃様のお子よ。周りに付く護衛から何から何まで異なるもの。休まる暇もないわ。もし、万が一よ?万が一リザが先代の子ではなくて…。』
テオドールはゴクリと唾を飲む。
『万に1つもないだろうけど、リザと殿下のご両親に関係があるならば…。』
『それならば王女となりますので問題ないかと?』
クラリスはテオドールから視線を逸らすと
『そうね。そして国王陛下のお子でも珍しい事ではないわ。ならば…王妃様だとしたら?』
…。
『王妃様とどなたのお子ならば、敵が狙う絶大なスキャンダルよ。』
…!
テオドールは目を見開き硬直する。
『無いわよ?無い無い。だけどこれならば敵は必死に証拠を掴みにいくでしょうね。でもこれはただの逆算よ?有り得ないもの。』
…。
『でも、もしそうならば母親の愛情を存分に浴びて来なかった殿下からみれば、その子に先代が代わりに愛情を注いでたとしたら、それはやりきれないわ。』
『貴方はその為に…』
クラリスら美しく微笑むと
『だから私が何とかするのよ。一応、まだ妻でしょ?』
テオドールは眉間にシワを刻み
『何故そこまで?』
クラリスは少し考え
『う~ん。私が王女として生まれてきた意味みたいな?』
クラリスはとぼけてみせた。
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