愛するということ【完】

makojou

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晩餐会

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王宮での晩餐。もちろんウィリアムとエレノア。
ハインリッヒとシンシア。そこに側近2人。


『ようこそ、姉上。ウィリアム・ヴェルヘルトです。』


にっこりと王子様スマイルのウィリアムにシンシアは驚いたように目を見開いた。


…?これがあの酷い条件を出した王太子?


『本当に姫とそっくりだね。私はヴェルヘルト第2王子のハインリッヒです。』


そう言うとハインリッヒはシンシアの手を取り甲にキスを落とした。

…王子様がいっぱいだわ。



シンシアはぐるりと見渡すと、皆顔面偏差値が高くクラクラしている。

…待って、エレノアはこんな中で生活しているの?



『さあ。お口に合うかわかりませんが食事にしよう。』


ウィリアムの声によりざっくばらんに食事会が始まった。終始不機嫌なテオドールにウィリアムが睨みを効かせると仕方なくテオドールは引き攣りながらの笑顔を振りまいた。



『王太子殿下、私をこちらに置いては頂けませんか?』


シンシアは突然口を開いた。


驚いた一同。ウィリアムは固いながら笑顔で


『置いてって、王女は物では無いのですから』

『私はアミュレットを捨てて参りましたの。』


ウィリアムは皆に視線を流すが一同にして俯いている。


『あやおや、穏やかではないですね?アミュレット第2王女ともあろうお方が。』

『第2王女は関係ございませんわ。私はこちらに嫁いで参りたいのです!』


『…』


ウィリアムが言葉を探していると


『関係はありますよ。王女。私も含め王族として生まれた者はそれなりに優遇した立場にあります。だからこそ常に義務を背負わなければならないのです。』


一同驚きの視線を送るはハインリッヒ第2王子。

ハインリッヒはその重い空気を王子様スマイルで一蹴した。

『さあ、とにかく今宵は楽しく頂きましょう。せっかくお会いできたのですから!』

ハインリッヒの一言でエレノアもシンシアも楽しそうに食べて飲んで話に花を咲かせていた。

その後はシンシアも落ち着いたようで何事もなく宴は進んだ。





翌朝、執務室にエレノアの侍女が息を切らせて飛び込んできた。


『っ殿下!』


王宮の奥から走ってきたのであろう。息が切れて言葉が出ない侍女にテオドールは


『落ち着きなさい。』

背中をさすりながら落ち着くのを待っていると

『ひ、妃殿下が!』


ウィリアムは立ち上がり、パーテーションの向こう側からハインリッヒとハロルドが出てくる。


『どうした?』


『妃殿下がいらっしゃいません!』


…。

顔を見合わせる4人。

『どういう事だ?』

ウィリアムができるだけ声を抑えて問う。

『昨晩、妃殿下はシンシア様と共にお休みになられました。朝、通常通りお部屋に参りました所誰もいらっしゃいません。アミュレットの騎士らも皆揃って…あの、申し訳ありません。申し訳…』

涙を流す侍女にウィリアムは


『お前の責ではない。とりあえず落ち着け。落ち着いてまずは戻れ。他言はするな!よいな?』


侍女は何度も頷くと執務室を後にした。



『どう見る?』

ハインリッヒがウィリアムに問う。


『エレノアの意思ではないだろう?』


『言い切れるか?』


…。


重い空気の中、


『とりあえず探せ。国境を封鎖だ。』

テオドールは短く礼を取るとハロルドと共に執務室を飛び出して行った。




夜になり執務室にテオドールとハロルドが戻ってきた。


『国境は超えた形跡はありません。』


…。


『アミュレット姉妹の誘拐の線は?』


『ならば騎士らが残っているはずだ』

ハインリッヒが誘拐の線を潰す。



『姉妹揃っての逃走か?』


『それは無い。』

側近2人も頷く。

『アミュレット王女は初めから妃殿下を狙ってたのか?』


…。

『ここで考えてても埒が明かない。今日はもう休もう。』






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