愛するということ【完】

makojou

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嫁取り

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ヴィルヘルト大王国は大陸でも大きな力を持つ歴史ある国である。その国の王太子の側近、テオドール・オルコックは今日も主の妃を求め遠く離れた小国まで足を運んでいた。


テオドールが仕えるウィリアム・ヴェルヘルトは容姿端麗で文武両道の完全無欠な王太子ではあるが唯一大きな難があるとすれば、それは愛を知らない、いや信じない男である。

国内の令嬢からも人気が高く、適当に見繕う事もできようがそれを良しとしないウィリアム。

『ヴェルヘルトの令嬢には私の妃は務まらないよ。』


…。確かに、ってかどこ探しても無理だろうよ。


テオドールはウィリアムの理想の妻を求めて今回で6度目となる国を訪問していた。



ヴェルヘルトからの求婚にどこの国も喜んで話しは聞くものの、条件を確認すると話しは保留となりやがてはお断りが来る。

テオドールがアミュレット王国の謁見の間で叶うことのない縁談話を持って待ち人を待っていると、国王が満面の笑みでやってきた。


…やれやれ。

いつもの流れにテオドールは小さくため息をついた。

テオドールの前に姫が3人並び、本命である長女は口角を上げて微笑んでいる。真ん中の次女もまたテオドールに見惚れている。

テオドールはバツが悪そうに3女に視線を流すとまだあどけなさの残る姫は目の前のショコラにご満悦のようで、テオドールには興味も示さなかった。


雑談もそこそこにテオドールは直ぐに本題に入った。


『して、その条件とは?』

国王は顎髭を撫でながらテオドールからの書面を確認するとあからさまに眉間にシワが入る。

…だろうね。

テーブルに置かれた書面に目をやる姫らの顔色も青くなるとテオドールと目線を合わせる事もしなくなった。

テオドールもまた慣れたもので、さっさと席を立とうとしたその時、


『まぁ、なんて素敵なの!』

一同の視線を独り占めしたのはショコラを頬張る第3王女、エレノア・アミュレットであった。


テオドールが恐る恐るエレノアを見ると、

『こんな好条件、逃してはなりませんわ!どうせ政略結婚なんのですもの。義務だけ果たしていれば後は自由なのでしょう?』


テオドールは幼き姫に諭すように話す。


『しかしながら、殿下からの愛を受ける事はありません。殿下は誇り高き我が国の王太子。女性に構ってなどいる時間はございません故。』


エレノアは頷きながら

『そうでしょう、そうでしょう。なんせヴェルヘルトの王太子殿下でございますもの。愛などという得体の知れないものに振り回されている時間なんてありませんもの。一重に民の為に尽力されるべきですわ!』


…。


『お姉様がご辞退されるのであれば私ではいけませんか?』

父親である国王は顔を顰めながらもチラリとテオドールの顔色を確認すると声を小さく


『エレノア、我が国は小さいながらも富は有り余る程ある。無理をする必要はないのだぞ?』

テオドールの手前、声をおとした国王の配慮虚しくエレノアは

『べつに、ヴェルヘルトに気を使っているわけではありませんわ!私は素直にこの条件が気に入りましたの!』


テオドールはダメ元でここまで来ているのでクロージングまで頭が追いつかずただただ驚き声を出すのを忘れていた。


…嘘だろ?

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