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弟2人の内緒話

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『兄上、ありがとう』


エリックがヨハネスの執務室にお酒を片手に現れた。


『お前、そんなの持って現れるなよ…』


呆れるヨハネスにエリックは


『どうして?もうこんな時間だよ?』


ヨハネスが窓を見ると既に日が暮れ始めていた。
エリックに付きそうようにソファに腰をおろした。


『聞いたよ。散々叱られたって?義姉上に。』


ヨハネスはバツの悪そうに


『お前と違い王子様オーラが半端ないからね?』


エリックはニヤリと笑いながら


『キャスも散々だったてね?初めてリンゴを噛ったって騒いでたよ(笑)』


…俺もだけどね?



『新鮮だったろ?たまには。』


楽しそうなエリックに

『俺はもういいよ。自分の世間知らずに自己嫌悪だよ。』


『我々の世間とあそこの世間は違うからね。気にしなくて大丈夫だよ。』


…お前に心配してもらわなくてもいいけどね?



ヨハネスは注がれたワインを優雅に口に含んだ。

『なに?兄上どうしたの?』


『キャス…』


エリックは不思議そうに


『キャス?キャスがどうしたの?』


ヨハネスは少し考え


『嫁いで来た時はさ、幼い王女だと思ってたんだ。それから先がさキャスの印象がコロコロ変わるんだ。エリーヌのように仮面脱着式とかではなく、あれ全部素なんだよ。』


『何?気になるの?』


ヨハネスは否定もせず


『もちろん真実の愛はエリーヌにある。』

エリックも

『私もマリーヌにあるよ。』


頷く2人は頭を悩ませながら

『『でもなんか気になるんだよ。』』


『確かに容姿は美しい。だけど、それを感じさせない砕けた性格だし、表に出れば威厳も何故か湧き出てくるだろ?』


語るヨハネスにエリックもまた


『才女であるのにその素振りを微塵も出さず、要所でサラッと出てくるし、生まれながらの王族の品格もある。それでいて拗ねると可愛い♡』


納得する2人は顔を見合わせる。


『兄上は幸せ者だ…』

エリックがそう吐き捨てるとヨハネスもまた

『我が国の王太子だからね。魅力的な王太子妃が来てくれて喜ぶ所だ。』


『だけど。久々に帰国して兄上は変わったよね?あんなに笑顔を量産する王太子じゃなかったよね?』


『それこそキャスの力だよ。キャスも初めは苦労していたからね。ってかさムヌク王国の王子3人が夢中になるキャスって何者なんだよ…』


ヨハネスの呟きにエリックは


『生まれながらの王女らしくない王女って所だね。』 


2人は軽くワインを空けるとお互いの私室へと戻って行った。



その後エリックの手配により黄色い妖精の絵姿がムヌク王国に持ち込まれ王宮で密かに楽しむ2人であった。もちろん当の本人と各国に存在する黄色い妖精の絵姿の回収を目論むカールトンは知る由も無い。



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