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それだけ‥

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カールトンはキャサリンの心を慮りしばらく時間を置く事にしていたある日の午後。

『殿下!』

振り返るとエリーヌが笑顔で駆け寄ってきた。安定の王子スマイルで迎えるとエリーヌは

『どこへ行かれるのです?』

声を掛けるといつものようにカールトンの腕に纏わりつくとカールトンは

『ファビウス!』

その声に反応したファビウスはカールトンからエリーヌを剥がし

『エリーヌ嬢、不敬ですよ?』

身軽になったカールトンはさっさとその場を後にした。



『ファビウス!どうゆう事?』

エリーヌがファビウスに怒りを向ける。

『どうゆうと言われましても、いち令嬢が殿下に声をお掛けになるのも不敬ですよ?』

エリーヌはファビウスを睨みつけ

『今までは受け入れて下さっでたわ!』


ファビウスは気まずそうに

『今までは‥その。』

『なに?はっきり言いなさい!』

ファビウスは混乱する。

‥はっきりって。本当にわかってないのか?

黙りこくるファビウスに尚も声を上げるエリーヌの後ろから

『黄色い妖精ではなかったからね。』

驚き振り返ると笑顔で微笑むヨハネスが歩みを進めてくる。

『殿下!』

ぱっと笑顔になるエリーヌと礼を取るファビウス。ヨハネスは笑顔ながらファビウスに顎を上げ、(行け!)と助け舟を出した。ファビウスは安堵しながらヨハネスに最上級の礼を取りその場を離れた。


『で?理解できたかな?』

エリーヌに笑顔を向けるヨハネスに

『‥黄色い妖精でな無かったとおっしゃいましたが、何も黄色い妖精は一人ではありませんもの。私も黄色い妖精なのですから!』

ヨハネスは目を丸くして

『‥。そう。何故黄色い妖精なの?』

エリーヌは

『何故も何も産まれた時から私も黄色い妖精なのですから理由はございませんわ!』


‥。

『産まれた時にから?』

ニコリと微笑みエリーヌは

『そうですわ!たまたまアリア大王国の王太子が見たのは王族の黄色い妖精かもしれませんが妖精なんて沢山おりますのよ?』

得意気に話すエリーヌにヨハネスは思考回路が停止していた。


‥え?黄色い妖精が本物だと思ってるのか?

『エリーヌ嬢は面白い事を言うのだな。まるで妖精としてこの世に産まれてきたみたいではないか?』


大きな瞳でヨハネスを見上げるエリーヌは

『そうですわよ?』


ここまで来るともやはエリーヌに掛ける言葉は見当たらない‥。


ヨハネスは大きく息を吐いて

『そうだちょうどいいのが居た。ねえ、君私の妃にならない?』

エリーヌはぱっと笑顔になり

『まあ、兄弟揃って黄色い妖精がお好きなのですね?』


『いや、全く。そもそも私は令嬢には興味の欠片もないんだけどね?ほら、この立場だから適当に見繕って妻帯しなきゃなんだよ。ちょうど良かった。』


‥。
エリーヌは怪訝そうに問う。

『政略結婚ですか?』


『アハハハ!面白い事を言うね。政略結婚にもならないよ?私が君と結婚しても何にも得はないからね。そうではなくて契約結婚?っていうのかな。お飾りの妃だね。』

淡々と話すヨハネスにエリーヌは

『それでは私でなくてもよろしいのでは?』


『そうだね。でもさ、私も鬼ではない。こんな事を令嬢に強いたら可哀想じゃない?』


エリーヌは真っ赤になり


『ならば何故私なら良いのですか!』

『だって君なら嘘に塗り固められた様ものだろ?』

ワナワナと震えるエリーヌに

『お願いじゃないよ?命令だからね。』

安定の王子スマイルで言い放つとエリーヌは

『で殿下がお許しにならないわ!私を幸せにしてくれる方を見極めるとおっしゃってましたもの。』

声を上げるエリーヌにヨハネスは

『君はバカなの?それは君の嘘が明るみになる前の話しだろ?』


『嘘ではないわ!』


‥。


『じゃあ、聞いてみる?』

目を丸くするエリーヌの後ろへ問いかける。

『エリーヌ嬢を娶ってもよろしいですね?兄上。』

エリーヌが驚き振り返るとそこにはカールトンが立っていた。カールトンはエリーヌを視界にも入れず

『好きにしろ。』

カールトンはヨハネスの肩を2回ポンポンと叩き、歩いて行った。

呆然と見送るエリーヌにヨハネスは

『初めから君の後ろに居たよ?気づかなかった?まあ、これで晴れて私達は婚約者だね。末永く宜しく頼むよ。』


ヨハネスはそれだけ言うとカールトンを追うように走って行った。
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