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やっと会えた。

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王太子に1番近い男は、王都から離れた屋敷で待ちわびていたアルベルタを目の前にし、心を踊らせていた。


『やっと会えたね、アルベルタ。』

アルベルタは目の前の第1王子に深く膝を折る。


『楽にしてくれアルベルタ。辛かったであろう。もう大丈夫だからね。こっちにおいで?』


アルベルタは目を見開き

『とんでも無い事でございます。』


第1王子は微笑み

『遠慮することは無い。君は王太子妃となるべき女性だからね。』


『殿下、私は公爵夫人でございますよ?』

第1王子はソファから立ち上がりアルベルタの前まで来ると


『今はね。』


第1王子はアルベルタを上から下まで何度も眺める。その視線がアルベルタは恐ろしく過去を蘇らせた。

無言のまま後ろずざりすると

『どうして逃げるの?』

第1王子はアルベルタを追い込む。アルベルタはガクガクと震えが止まらない。


イヤイヤと首を振るアルベルタに第1王子はニヤリと笑い

『逃げられないよ?私は第1王子だ。わかるね?』


第1王子はアルベルタを自分の胸に抱き込んだ。
華奢なアルベルタは第1王子の腕の中にすっぽりと入り身動きが取れない。

第1王子は強く抱き込みアルベルタの体をゆっくりと撫でる。

第1王子はぐっと重くなったアルベルタを覗き込むとアルベルタは意識を手放していた。



朝の心地よい風が部屋を包み、アルベルタは目を覚ます。


隣で眠る第1王子に驚きベッドを下りて部屋を出ようとした時


『その扉は開かないよ?』

第1王子は両手を伸ばして欠伸をしながらアルベルタを見た。

アルベルタは必死に扉を開けようとするも扉は開かない。

『無駄だよ、アルベルタ。』

アルベルタは思い立ったかのように自分の格好を確認する。

『アハハハ!アルベルタ。私はこれでも紳士だよ?意識の無いアルベルタに無下な事はしないよ』


そう言うとアルベルタを抱き込む。


『あ~いい香りだ。アルベルタは甘い匂いがするね。舐めてみたらもっと甘いのだろうね。』

アルベルタは驚きを隠せない。


『アーノルドは君をどんな風にしていたの?』

アルベルタは思い出したくもないそれを頭から払い除ける為に目を瞑り頭を振る。

『大丈夫。まだまだ時間はあるからね。』


広い部屋の隅でちょこんと座りアルベルタは震えている光景を第1王子は満足そうに眺めていた。




『殿下、アーノルドです。』


突然響く声は扉の向こう側から。アルベルタはまたも怯え目を閉じる。


『アーノルド?悪いが君はここへは入れられない。アルベルタが君に会いたくないようだ。』


アルベルタを笑顔で眺める第1王子。


『兄上。』


この声に第1王子は顔色を変えた。



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