23 / 31
夜会にて2
しおりを挟む
会場では初めて目にする公爵夫妻のダンスを息を飲んで見守る。2人がこうして一緒に居ることが今までからすると想像出来なかったからである。
ダンスを終えると壇上が何やら騒がしくなっている。第2王子の側近でもあるレオンハルトは急ぎ壇上に向う。
アルベルタは少し風に当たりたくなりバルコニーへ出た。
その頃アルベルタの義兄であるアーノルドもまた婚約者のアリアンナと共に夜会に参加していた。
『あぁ、可哀想に。私の大事な妹がまた公爵に放りっぱなしでないか!悪いがアリアンナ、今夜は先に帰ってくれないか?公爵に一言話がしたい。送れなくて申し訳ない。うちの馬車を使ってくれて構わないから』
そう言うとアーノルドはアリアンナを置いて会場の外へと消えた。
アリアンナは唇を噛みしめバルコニーへ出ると婚約者がいつも気に留める妹が呑気にベンチに掛けていたのである。
『あら?アルベルタ様。今夜もお一人ですか?』
アリアンナはニヤリと笑う。アルベルタは戸惑いを隠せない。
‥。
『記憶が無くなったのは本当なのね?貴女の事だから記憶無くしたフリをして回りの気を引こうとしているのかと思ってたのだけど?』
アルベルタを覗き込むアリアンナ。
『私はアーノルド様の婚約者アリアンナよ?貴女の義姉になるのよ?挨拶はどうしたの。』
アルベルタは聞きたくもないアーノルドの名に一瞬顔を歪めたものの、自身は公爵夫人だ。レオンハルトに迷惑は掛けられない。
『アリアンナ様。貴女、私が誰だか分かっていてそのように?私はアルベルタ・フォン・シュレーゼマンですよ?貴女からご挨拶を催促される覚えはないのですが?』
真っすぐ見据えるアルベルタにアリアンナは驚いた。アリアンナの知るアルベルタは大人しく無表情な気の弱い令嬢であった。
真っ赤にるアリアンナは
『あら記憶を無くされておかしくおなりになったのね?以前のように小さくなっていればいいものを!』
『以前の事など知りませんが今は貴方がそんな口をきいても良い相手ではなくてよ?公爵家から正式に抗議を送らせて頂くわよ?』
アリアンナはカッとなり思わず手を振り上げた。アルベルタは恐ろしく目を閉じたが‥
その手が振り下ろされる事は無かった。
後ろをゆっくり振り返ると微笑むアーノルドがアリアンナの手を押さえていた。
『アリアンナ、どうした?君らしくない。』
アリアンナは涙をためて
『ち、違うのです!』
『公爵家からの抗議が入れば君との婚約も考えなくてはならなくなるよ?さあ、私が何とかするから今夜は帰りなさい。』
そう言うとアリアンナは逃げる様に会場を出て行った。
アーノルドはアルベルタを見て優しく微笑む。
『私の婚約者が失礼をしたね?』
アルベルタはアリアンナからの振り下ろされる事は無かった掌に震えるていた。
『可哀想に‥。アルベルタは先日私が虫を払い除けようとした際も怯えた様にしていたね?私が知らない所で何があったのだ?』
アルベルタの頭の中は得体の知れないおぞましい渦がぐるぐるとまわっている。何かを思い出しそうなでも、思い出せない‥。
頭を抱えるアルベルタにアーノルドは
『無理はするな。でも、先程のアルベルタは素晴らしかったよ。思い出せないアリアンナを相手に必死に公爵夫人として立ち向かう姿を見て私は頼もしく思ったよ。成長してるんだね?』
アーノルドはアルベルタの頭を優しく撫でた。アルベルタは心がホッとしたように感じていた。
『アルベルタ、まだ震えているね。休憩室で休むといい。公爵には私から話しておくよ。』
そう言うとアーノルドはアルベルタの手を取り会場を後にした。
ダンスを終えると壇上が何やら騒がしくなっている。第2王子の側近でもあるレオンハルトは急ぎ壇上に向う。
アルベルタは少し風に当たりたくなりバルコニーへ出た。
その頃アルベルタの義兄であるアーノルドもまた婚約者のアリアンナと共に夜会に参加していた。
『あぁ、可哀想に。私の大事な妹がまた公爵に放りっぱなしでないか!悪いがアリアンナ、今夜は先に帰ってくれないか?公爵に一言話がしたい。送れなくて申し訳ない。うちの馬車を使ってくれて構わないから』
そう言うとアーノルドはアリアンナを置いて会場の外へと消えた。
アリアンナは唇を噛みしめバルコニーへ出ると婚約者がいつも気に留める妹が呑気にベンチに掛けていたのである。
『あら?アルベルタ様。今夜もお一人ですか?』
アリアンナはニヤリと笑う。アルベルタは戸惑いを隠せない。
‥。
『記憶が無くなったのは本当なのね?貴女の事だから記憶無くしたフリをして回りの気を引こうとしているのかと思ってたのだけど?』
アルベルタを覗き込むアリアンナ。
『私はアーノルド様の婚約者アリアンナよ?貴女の義姉になるのよ?挨拶はどうしたの。』
アルベルタは聞きたくもないアーノルドの名に一瞬顔を歪めたものの、自身は公爵夫人だ。レオンハルトに迷惑は掛けられない。
『アリアンナ様。貴女、私が誰だか分かっていてそのように?私はアルベルタ・フォン・シュレーゼマンですよ?貴女からご挨拶を催促される覚えはないのですが?』
真っすぐ見据えるアルベルタにアリアンナは驚いた。アリアンナの知るアルベルタは大人しく無表情な気の弱い令嬢であった。
真っ赤にるアリアンナは
『あら記憶を無くされておかしくおなりになったのね?以前のように小さくなっていればいいものを!』
『以前の事など知りませんが今は貴方がそんな口をきいても良い相手ではなくてよ?公爵家から正式に抗議を送らせて頂くわよ?』
アリアンナはカッとなり思わず手を振り上げた。アルベルタは恐ろしく目を閉じたが‥
その手が振り下ろされる事は無かった。
後ろをゆっくり振り返ると微笑むアーノルドがアリアンナの手を押さえていた。
『アリアンナ、どうした?君らしくない。』
アリアンナは涙をためて
『ち、違うのです!』
『公爵家からの抗議が入れば君との婚約も考えなくてはならなくなるよ?さあ、私が何とかするから今夜は帰りなさい。』
そう言うとアリアンナは逃げる様に会場を出て行った。
アーノルドはアルベルタを見て優しく微笑む。
『私の婚約者が失礼をしたね?』
アルベルタはアリアンナからの振り下ろされる事は無かった掌に震えるていた。
『可哀想に‥。アルベルタは先日私が虫を払い除けようとした際も怯えた様にしていたね?私が知らない所で何があったのだ?』
アルベルタの頭の中は得体の知れないおぞましい渦がぐるぐるとまわっている。何かを思い出しそうなでも、思い出せない‥。
頭を抱えるアルベルタにアーノルドは
『無理はするな。でも、先程のアルベルタは素晴らしかったよ。思い出せないアリアンナを相手に必死に公爵夫人として立ち向かう姿を見て私は頼もしく思ったよ。成長してるんだね?』
アーノルドはアルベルタの頭を優しく撫でた。アルベルタは心がホッとしたように感じていた。
『アルベルタ、まだ震えているね。休憩室で休むといい。公爵には私から話しておくよ。』
そう言うとアーノルドはアルベルタの手を取り会場を後にした。
10
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
婚約破棄を言い渡した王子が、復縁を願ってきた
コトミ
恋愛
王妃教育を長年受けて、お淑やかに真面目に生きてきたエリーゼ。その理由はただ婚約者が国の王子であるからだった。
どの大人からも「王子と結婚するんだから」「王妃になるのだから」と言われ続け、自分を押し殺し、我慢を続けてきたエリーゼ。そのためにエリーゼは礼儀正しく、何でもできて、魔法使いとしてもプロ、好きの無い女性に成長した。
そんなエリーゼの堪忍袋の緒が切れたのは学園の卒業祝いである舞踏会であった。
「ベリンダを妻にすることにした。君にはもう、うんざりなんだ」
すべてがどうでもよくなったエリーゼは、隣国の王子と結婚の誘いが来ているとフィル王子に話し、夜の闇に消えていった。
誰もそんなことを信じるわけがなく、失踪したエリーゼを捜索することも一年足らずでやめてしまった。これだけ見つからないのだから野垂れ死んでいると思われるの当然。
そして月日は流れ、ベリンダとフィルは結婚し間に子供ができた。だが国自体に大きな問題を抱え、八方ふさがりとなった時、エリーゼの捜索がまた始まる。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる