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ジュリラン王国へ

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帝国御一行がジュリラン王国に入った。ジュリラン最高の迎賓館が用意され国を挙げての歓迎を受けた。


異例ではあるが交流会の前にアレクセイとオリヴィア、フィリップとイザベラは王宮を訪ねた。


待ち構えるジュリラン王国謁見の間の扉が両開きに開かれた。

ジュリラン王国皇后陛下とラインハルト、アランとステファニーが一斉に立ち上がり礼を取る。


『今日はそうゆうのは無しでね』


相変わらず軽い口調のアレクセイの言葉に席につくとオリヴィアは目の前のステファニーに視線を流す。ステファニーは真っ直ぐ前を見据え凛と背中を伸ばしている。



…相変わらず美しいわ。


オリヴィアの心配を助長するかのような威厳溢れるステファニーにオリヴィアは落胆する。


オリヴィアの父である国王はアレクセイと挨拶を簡単に済ませるとオリヴィアをチラリと見てラインハルトに目配せをし謁見の間を出て行った。


大きな息を吐いたステファニーは肩の荷を下ろしたかのように大きな瞳を輝かせイザベラを見た。

イザベラも懐かしそうにステファニーに笑顔を向けた。


…ここからだわ。


オリヴィアに緊張が走る。


『今日時間を取って貰ったのは他でもない、フィリップとイザベラの婚約が成立したからなんだ。ほら、どんな事情があれどフィリップとイザベラとステファニー殿は一度は一緒に暮らした仲?だろう?』


ラインハルトが先ずはお祝いを述べるとステファニーは頷きながら


『おめでとうございます!素晴らしいわ』


棘なく語るステファニーを帝国一行は目を丸くする。


…?



湿った空気を通すかのようにアレクセイは冗談を交えて

『そんなストレートにお祝いしてもらえると逆に怖いよ…(笑)』


ステファニーは不思議そうに


『何故です?おめだいではありませんか?今だから言えますがイザベラ様はフランツ帝国にいらした頃からフィリップ様をお慕いしていらっしゃいましたよね?』



驚いたフィリップは隣りのイザベラを見る。イザベラは真っ赤になり驚いた様にステファニーに問う。


『ご存知でしたの?』


ステファニーは平然と


『いいえ?』


イザベラはまたも驚き


『カマをかけたのですか?』


恥ずかしそうに顔を覆うと


『ま、まさかそんな事はしませんわ。今となってはあの時のイザベラ様の行動が腑に落ちると言いますか、分かるのです。あの頃の私では分かるはずもありませんもの。』


静かに語るステファニーはまさしく棘の取れた薔薇である。見惚れる程に。

オリヴィアの心配を他所に和やかに流る時間も終わりを迎え、立ち上がる一行を見送る際にステファニーはフィリップを呼び止めた。


フィリップは少し驚きながらもステファニーを見ると、ステファニーは深く腰を折り

『貴方には大変失礼をいたしました。今思えば貴方のお考えと行動により今の私があります。

私が世間で言われるような立場であれば胸を張ってアラン・ランドルトに嫁げませんでしたもの。我が国では純血は重んじられてはおりません。その我が国へ嫁ぐ私には関係ないと思っておりましたがアラン・ランドルトの本当の意味での妻となりこの純血がいかに大切なものか、それにどれだけ救われ自信となったか…

だからこそイザベラ様を案じておりました。私は今回の婚約は何よりも嬉しく存じます。イザベラ様に取って最高のかたちですわ。これが今の私の本心です。そして少しの時間ではありましたが貴方の側妃として生きた時間を今後にいかしてまいります。どうぞお幸せに…。』



美しい立ち居振る舞いのステファニーにここに居る全員が魅了され声も発する事が出来なかった。


『こちらこそありがとう。世の中の移り変わりの犠牲となった貴殿には恨まれても仕方がないと思っておった。私も心が少しは軽くなった。』


フィリップも深く頭を下げるとオリヴィアは安堵感からか涙を流し


『お兄様、私はお兄様にお姉様を厳重注意するよう上から申しました事をお詫びをいたします…ごめんなさい。』


ラインハルトはアレクセイをチラリと見ながら妹であるオリヴィアを気遣うように


『顔をお上げ下さい』

そう声を発するとオリヴィアの肩を両手で掴み顔を上げさせながら耳元で


『こらっ!お前は皇后であろう?なんて事を!』

ラインハルトの声は残念ながら丸聞こえであるが、皆、笑いを堪えて肩を震わせている。


オリヴィアは尚もステファニーに


『お姉様、流石ですわ!私はおかしくなられてた頃のお姉様よりも今のお姉様が好きです!』



…おかしくなられてた頃って


これにも皆黙って肩を震わせる。



ステファニーはオリヴィアを案じるように


『オリヴィア、今は身内だから良いわ。明日からはしっかりなさいね?』


もはや聖母のようなステファニーに無礼講なのかレオナルドが声を掛けた。


『大丈夫です!妃殿下は仮面装着は得意分野ですから!』


レオナルドの非礼はその場を和やかに締めくくる笑いを誘った。



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