たまたま王太子妃になっただけ【完】

アナリス帝国

ジュリラン王国での交流会を前にオリヴィアは不安を隠せなかった。めでたくイザベラとフィリップの婚約が決まりその報告も兼ねている為、ステファニーの動向が今のオリヴィアの目下の悩み。案ずるレオナルドは


『妃殿下、大丈夫です！とは言えませんがなるようにしかなりませんからね？』


平常運転のレオナルドを横目に頭を抱えるオリヴィア。


『お二人に失礼があってはなりませんもの。まして私の祖国となれば…あぁ、不安が増すばかりだわ。』


呆れたレオナルドは


『お二人も、ステファニー王女がぶっ飛んでるのをご存知ですから！って王女じゃないか？どっかに嫁いだんですっけ？』



この男もまあまあ礼を欠いている。一応ジュリラン王国の元王女で、仕える主の実の姉だ。


『…レオナルドと話していると、悩みなんてどうでもよくなるわね…』



嘆くオリヴィアにレオナルドは得意気に


『おまかせください。私の得意分野ですからね？』



…褒めてないけどね？




オリヴィアの不安はそこだけではない。帝国となり初めての各国交流会。その交流会がオリヴィアの祖国ジュリランであることもツイて無ければ、皇后陛下として参加する以上各国の事についても勉強をしなければならない。ステファニーならば得意分野であるがオリヴィアは苦手である。まして外交などもステファニーとは異なり経験もない。


毎晩遅くまでに執務室に残るオリヴィアを案じてアレクセイが夜食を持って現れた。


『オリヴィア、無理はいけないよ。』


デスクライトしか点けていない部屋で１人残るオリヴィアに部屋の明かりを点け声を掛けた。



『ありがとうございます。ですが私は王女らしい事をしてきてないので無知が過ぎるのです。皇后陛下として恥じない様にしなければなりませんから。』



アレクセイは微笑むと


『気持ちは嬉しいけどさ、参加する者の中に皇后は誰も居ない、オリヴィアだけだよ？だれにも比べられないし、まして皇后経験者もいないんだからそんなに気負わなくて大丈夫。それに姉上の事も心配しているようだけど、それも大丈夫だから。』


アレクセイはお皿からサンドウィッチを１つ手に取るとオリヴィアに手渡した。

オリヴィアはサンドウィッチを口に運ぶと小さく笑った。



『？どした？』


アレクセイが覗き込むとオリヴィアは恥ずかしそうに


『よく夜遅くまでお勉強をするお姉様の元に侍従がサンドウィッチを運んでおりましたの。それを見て私は羨ましくて…』


思い出しながら笑うオリヴィアに


『で？オリヴィアも真似てお勉強をしたんだね？』


アレクセイが優しく微笑むもオリヴィアは天使の様な表情で首を振ると



『いいえ、私はお勉強が好きでは無くて、だからこっそり１つだけ先に貰ってましたの。』



…。


流石のアレクセイもこれにはフォローは出来ず肩を落とした。


『お姉様は頑張り屋さんでしたわ。そのツケがこれですもの。頑張らなくては！』



アレクセイは少し納得したのか、邪魔せぬようにそっと執務室を後にした。



…やれやれ。こっそりってどうなの？王女だろ？（笑）