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ランドルト候爵家

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ランドルト候爵家、ステファニーの知る限りの知識で頭を巡らす…。


歴史だけはある候爵家。たしか嫡男がアランと言った。アランとは幼い頃に面識はあったのかも知れぬがステファニーは覚えてはいない。昔から他国の王族の顔は一覧表となり頭に埋め込んではいたが自国のそれも候爵家などインプットは必要無かったステファニーである。むしろオリヴィアの方が詳しいであろう。


…それこそオリヴィアが行くべきだわ。


ステファニーは結局、候爵家の情報など皆無のまま馬車は無情にも候爵邸へと入って行った。



候爵邸は想像以上の大きさでジュリラン王国には珍しい歴史を感じる建物であった。どちらかと言うとアナリスの建築方式に近い重厚感溢れる造りであるのが見て取れた。


ステファニーが馬車から降りるとズラリと使用人が並びその中央に候爵と候爵夫人、そしてアランだろうか?若い青年がステファニーを笑顔で迎えた。

その笑顔が若干引き攣っているのは頭を下げる使用人がチラリとステファニーをちらほらと頭を上げて覗き見る事からも容易に想像出来た。


…腫れ物が嫁ぐ家の有り様だわ。


それでもステファニーは王族である。凛と背筋を伸ばすと促されるまま応接間に入るも、すぐに候爵と夫人は

『我々はお邪魔です…』


と言って息子に全てを投げかけ逃げるように部屋を出て行った。


ステファニーはあまりの予想通りの展開に思わず笑いが溢れた。驚いたアランにステファニーは


『失礼しました。でもあまりに予想を裏切らない展開なので(笑)でも貴方も大変よね?こんな腫れ物を国王から投げつけられた候爵家。そのご両親からも投げつけられ、こうして私と向かい合っているのは、貴方ただお一人。お察ししますわ。』

開き直った王女はどこか棘が抜け落ち、ただの美しさしか残っては居なかった。


『別に投げつけられたとは思っていませんよ?貴族ならば政略結婚は当たり前ですからそのお相手が貴女であったという事です。』


なるほど、理路整然と話すアランを眺め、頭空っぽ令息ではないのだとステファニーは思った。


『早速ですが式の日取りですが、私は式は簡単に済ませ、他家への披露は落ち着いてからで良いと考えておりますが、いかがですか?』


ステファニーこそ披露など望んでいない。さっさと何事も無かったように候爵夫人となっていたほうが楽。そもそもフランツ帝国に嫁いだ際も式など挙げては居ない。


『私は構いません。そもそも花嫁姿に夢など抱いておりません故。』


ステファニーはそう答えると窓から見える景色を目を細めて眺めた。


その日はあっさりと話も終えステファニーは王宮へと帰って行った。


それからしばらくして候爵家への嫁入りが異例の翌月と王命が発令された。驚いたラインハルトを他所に既に覚悟を決めていたステファニーは特段驚きもせず受け入れたのである。



オリヴィアがジュリランを出た日のように1人馬車に乗り込むステファニーにラインハルトは声を掛けた。



『今までご苦労であった。』


その言葉にステファニーは美しく微笑みカーテシーを披露し馬車に乗り込んだ。









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