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落ちるジュリア

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翌日、ヨハネスとマグヌス、そしてエミリアはヨハネスの側近と共に地下牢へと降りた。ジルベルトは流石に他国の王太子である為に公爵邸でお留守番となった。

地下牢の角まで来るとヨハネスとエミリアは息を潜めて立ち止まる。ヨハネスはマグヌスに頷くとマグヌスはヨハネスの側近を連れてジュリアの牢の前まで来るとにっこりと笑って挨拶をした。



『初めましてかな?ジュリア嬢。私はヘルツベルト公爵令息です。此度は大変だったね』

ジュリアは警戒しながらマグヌスを見た。


『警戒させちゃったかな?ごめんね。』 

マグヌスはジュリアに微笑むと後ろに控える側近に
何やら耳打ちするとジュリアは明らかに警戒を強めた。


『ごめんごめん。違うんだ。この罪状に間違いないのかを確認したんだ。だってジュリア嬢がこんな事しでかす様に思えないもんね?』


ジュリアは安堵の笑みを浮かべると


『公爵様、誤解なのです!』


マグヌスは頷きながら

『そうだよね?そうだと思った。』



ジュリアは牢の端から立ち上がるとマグヌスの方へと歩み寄り


『私の産んだ子は正真正銘殿下の子なのです。それなのに…こんな。酷いわ。』


瞳に涙をためて首を傾げるジュリアに


『なんかね、ここには君が懐妊したとされる日から遡り君と関係を持った男の名前がずらりと並んでいるんだ。』

マグヌスはジュリアに優しく語ると後ろを振り返り側近に


『でも王宮って凄いんだね?ここまで詳しく調べられるんだね?』


感心したように語ると側近も黙って頷いた。


ジュリアは慌てて


『違うの!違うんです!』


マグヌスは大怪我に

『まさか、無理やり?』


…。
…。

身を潜めて聞いている2人は頭を抱えている。

…お兄様、ノリノリではないですか?




『…さみしくて。』


俯いたジュリアは上目遣いでマグヌスを見つめた。


またも驚いた様に


『さみしくてこんなに?ってか多すぎやしないかい?』


『違うんです。殿下が婚約者に盗られると思って焦ってたの。』



…アホか?


マグヌスは必死で笑顔を作り


『もしかして誰かが君を陥れたのかな?じゃなきゃいくらなんでもこれでは娼婦より忙しくない?』



ジュリアはパアと明るくなり


『そうなのです!誰かがわたくしを。だから助けて下さい!』



マグヌスは微笑みながら頷くと


『問題は黒幕だね。ねえ、どうしてこんなに男のと関係を持ってるのに、金髪と銀髪ばかりなの?君の好み?』



ジュリアは頭を巡らせながら


『そうかしら?』


…おいおい気づいてないのかよ。


『黒幕がわからないと、君が主犯となるよね?そうなればヤバくない?』


マグヌスは後ろを振り返り刑を確認するとあからさまにため息を付くと


『だよね?やっぱりそうなるよね?ねえ、どうにかならないの?可哀想だよ。』


ジュリアはマグヌスの演技に己の刑罰の重さを悟った。


『どうなりますの?このままでは…』



マグヌスは悲しそうにうつむくと


『ごめんね、私の力が足りなくて。』


ジュリアの顔色が青くなっていく。


『極刑になるだろうね…』


小さく呟くマグヌスにジュリアは


『違う!どうしたらいいの?何でも知ってる事はお話ししますから!』


『知ってる事?』


首を傾げるマグヌスにジュリアは頭の中の隅から隅まで洗い出し


『そうだわ、いつも声を掛けてくる人がいたの。その方の別荘みたいな所で会っていたわ。そうねその方は多分貴族だと思う。馬車に布が被せられていたわ。あれって家紋を隠してるのよね?』


『そいつは銀髪碧眼?』



『確か……そうだったわ!』


『他には?』



『そうだわ!画家さんみたいな方も居た!』


マグヌスは引き攣りながらも


『画家さん?』



『そう、手に画材が付いていたもの。それに独特な香りがしていた。あまり話しはしない無口な画家よ!おそらく…。

後はね、そう!左胸に大きなキズがある方もいた。あれは騎士かしら。


後は…』


…まだおるんかい!



『君は我が国の第2王子を知ってる?』


ジュリアはポカンとしながら


『王子がもう一人いるの?』



ヨハネスは壁の向こうで頭を抱えている。

…そこまで?


マグヌスはここでも笑顔で答える。


『そっか、ここまで来るとさ逆に君の産んだ子どもは殿下の子どもじゃないって方が罪が軽そうだよね?』

ジュリアはついていけず


『え?』



『だってさ、殿下の子どもと言い張れば確実な証拠がないわけだからさその子に継承権はないし王女としても認められないよね?それでいて君は殿下への裏切りとなり離縁だろ?万が一殿下の子どもでないと立証されれば君は間違いなく極刑だ。国家への欺きだもん。』



崩れ落ちるジュリアに


『だけどさ、殿下の子どもではないと話せば継承権をだまし取ろうとしたとはならないだろ?継承権が絡むから事が大きくなるんだ。だから継承権なんて考えてもないですよのスタンスでさ、実は浮気してましたのほうが国家への欺きが無い分軽くない?』



ジュリアは立ち上がり



『本当はそうなの。子どもが出来たと思って、今なら婚約者から奪えるって思って。だからただの三角関係なの。国家がどうのなんて考えてもないわ!』  



声高らかに語るジュリアにマグヌスは


『だろ?ではまず男の達の身元を調査するから待ってて!』


王子スマイル顔負けのスマイルをジュリアに贈りマグヌスはその場を後にした。



…つ、疲れた果てたよ。


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