32 / 42
信じる者は救われる
しおりを挟む
私はサラエ王国の伯爵家の次男である。病弱な兄上に代わり私が家をまとめていかなければならない身。
兄上は元々優秀な跡取りであったが、流行り病に罹患してから寝込むようになっていた。
費用もかさみ我が家はいよいよ苦しくなってきた時、今回の話が舞い込んできた。
社交界に疎い我が家では、貴族の情勢など意味も無く、ただただこの日を生き抜くだけでも精一杯であった。そうしているうちに爵位の返納も視野に入れ王宮に向かった。
しかし忙しくしている王宮では、だれも相談には乗ってくれず王宮庭のベンチに座り込んでいる時に初めてステファニー王女と出会った。
ステファニー王女は第三王女でありあまり社交の場には出られていないとかで、私の家のことなど知る由もないはずが、私を案じて下さった。
そうして何度か王宮で王女と会う機会が増えてきた頃、王女より今回の話を持ち掛けられた。
何でも、ダリス大王国にはえらく傲慢な令嬢が居て、
王様も困っていらっしゃるとか。極秘に我が国に連れて帰り教育を施すとのこと。そんな大役にステファニー王女は不安を隠せず私を頼ってくれたのだ。
私は大王国とは想像もつかない大きな国でお会いする機会もない程のお方の力になれることを誇りにも思った。
事の流れは馬車に乗せられ連れてこられる令嬢を、もてなす事を命じられた。
告げられた日に馬車を待っていると、予告通りに馬車が着き、驚く事に令嬢は気を失っていた。
私は令嬢を部屋に運び、ステファニー王女の指示を待っていた。
所が、聞いていたような令嬢ではなく、とても気品溢れる令嬢で傲慢とは程遠い女性であった。この令嬢は己の身の行く末を知らずここに居るのだ。私とて心が痛かった。
しかし、令嬢から明かされる真実とやらは私の想像を遥かに越えていて私は声を失った。
『さあ、貴方はどうするの?』
目の前の令嬢は私を真っ直ぐに見据え私の返答を静かに待っている。
この毅然たる振る舞い。この真っ直ぐな瞳。この醸し出す威厳。
令嬢の言う通り、この方はどこかの国の王女であろう。
ならば何故ステファニー王女は?ステファニー王女もまた騙されているのか?
様々なことを巡らせ、私は口を開いた。
兄上は元々優秀な跡取りであったが、流行り病に罹患してから寝込むようになっていた。
費用もかさみ我が家はいよいよ苦しくなってきた時、今回の話が舞い込んできた。
社交界に疎い我が家では、貴族の情勢など意味も無く、ただただこの日を生き抜くだけでも精一杯であった。そうしているうちに爵位の返納も視野に入れ王宮に向かった。
しかし忙しくしている王宮では、だれも相談には乗ってくれず王宮庭のベンチに座り込んでいる時に初めてステファニー王女と出会った。
ステファニー王女は第三王女でありあまり社交の場には出られていないとかで、私の家のことなど知る由もないはずが、私を案じて下さった。
そうして何度か王宮で王女と会う機会が増えてきた頃、王女より今回の話を持ち掛けられた。
何でも、ダリス大王国にはえらく傲慢な令嬢が居て、
王様も困っていらっしゃるとか。極秘に我が国に連れて帰り教育を施すとのこと。そんな大役にステファニー王女は不安を隠せず私を頼ってくれたのだ。
私は大王国とは想像もつかない大きな国でお会いする機会もない程のお方の力になれることを誇りにも思った。
事の流れは馬車に乗せられ連れてこられる令嬢を、もてなす事を命じられた。
告げられた日に馬車を待っていると、予告通りに馬車が着き、驚く事に令嬢は気を失っていた。
私は令嬢を部屋に運び、ステファニー王女の指示を待っていた。
所が、聞いていたような令嬢ではなく、とても気品溢れる令嬢で傲慢とは程遠い女性であった。この令嬢は己の身の行く末を知らずここに居るのだ。私とて心が痛かった。
しかし、令嬢から明かされる真実とやらは私の想像を遥かに越えていて私は声を失った。
『さあ、貴方はどうするの?』
目の前の令嬢は私を真っ直ぐに見据え私の返答を静かに待っている。
この毅然たる振る舞い。この真っ直ぐな瞳。この醸し出す威厳。
令嬢の言う通り、この方はどこかの国の王女であろう。
ならば何故ステファニー王女は?ステファニー王女もまた騙されているのか?
様々なことを巡らせ、私は口を開いた。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
コブ付き女サヨナラと婚約破棄された占い聖女ですが、唐突に現れた一途王子に溺愛されて結果オーライです!
松ノ木るな
恋愛
ある城下町で、聖女リィナは占い師を生業としながら、捨て子だった娘ルゥと穏やかに暮らしていた。
ある時、傲慢な国の第ニ王子に、聖女の物珍しさから妻になれと召し上げられ、その半年後、子持ちを理由に婚約破棄、王宮から追放される。
追放? いや、解放だ。やったー! といった頃。
自室で見知らぬ男がルゥと積み木遊びをしている……。
変質者!? 泥棒!? でもよく見ると、その男、とっても上質な衣裳に身を包む、とってもステキな青年だったのです。そんな男性が口をひらけば「結婚しよう!」??
……私はあなたが分かりません!
死に役はごめんなので好きにさせてもらいます
橋本彩里(Ayari)
恋愛
フェリシアは幼馴染で婚約者のデュークのことが好きで健気に尽くしてきた。
前世の記憶が蘇り、物語冒頭で死ぬ役目の主人公たちのただの盛り上げ要員であると知ったフェリシアは、死んでたまるかと物語のヒーロー枠であるデュークへの恋心を捨てることを決意する。
愛を返されない、いつか違う人とくっつく予定の婚約者なんてごめんだ。しかも自分は死に役。
フェリシアはデューク中心の生活をやめ、なんなら婚約破棄を目指して自分のために好きなことをしようと決める。
どうせ何をしていても気にしないだろうとデュークと距離を置こうとするが……
お付き合いいただけたら幸いです。
たくさんのいいね、エール、感想、誤字報告をありがとうございます!
【読み切り版】婚約破棄された先で助けたお爺さんが、実はエルフの国の王子様で死ぬほど溺愛される
卯月 三日
恋愛
公爵家に生まれたアンフェリカは、政略結婚で王太子との婚約者となる。しかし、アンフェリカの持っているスキルは、「種(たね)の保護」という訳の分からないものだった。
それに不満を持っていた王太子は、彼女に婚約破棄を告げる。
王太子に捨てられた主人公は、辺境に飛ばされ、傷心のまま一人街をさまよっていた。そこで出会ったのは、一人の老人。
老人を励ました主人公だったが、実はその老人は人間の世界にやってきたエルフの国の王子だった。彼は、彼女の心の美しさに感動し恋に落ちる。
そして、エルフの国に二人で向かったのだが、彼女の持つスキルの真の力に気付き、エルフの国が救われることになる物語。
読み切り作品です。
いくつかあげている中から、反応のよかったものを連載します!
どうか、感想、評価をよろしくお願いします!
夫が離縁に応じてくれません
cyaru
恋愛
玉突き式で婚約をすることになったアーシャ(妻)とオランド(夫)
玉突き式と言うのは1人の令嬢に多くの子息が傾倒した挙句、婚約破棄となる組が続出。貴族の結婚なんて恋愛感情は後からついてくるものだからいいだろうと瑕疵のない側の子息や令嬢に家格の見合うものを当てがった結果である。
アーシャとオランドの結婚もその中の1組に過ぎなかった。
結婚式の時からずっと仏頂面でにこりともしないオランド。
誓いのキスすらヴェールをあげてキスをした風でアーシャに触れようともしない。
15年以上婚約をしていた元婚約者を愛してるんだろうな~と慮るアーシャ。
初夜オランドは言った。「君を妻とすることに気持ちが全然整理できていない」
気持ちが落ち着くのは何時になるか判らないが、それまで書面上の夫婦として振舞って欲しいと図々しいお願いをするオランドにアーシャは切り出した。
この結婚は不可避だったが離縁してはいけないとは言われていない。
「オランド様、離縁してください」
「無理だ。今日は初夜なんだ。出来るはずがない」
アーシャはあの手この手でオランドに離縁をしてもらおうとするのだが何故かオランドは離縁に応じてくれない。
離縁したいアーシャ。応じないオランドの攻防戦が始まった。
★↑例の如く恐ろしく省略してますがコメディのようなものです。
★読んでいる方は解っているけれど、キャラは知らない事実があります。
★9月21日投稿開始、完結は9月23日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
「異世界で始める乙女の魔法革命」
(笑)
恋愛
高校生の桜子(さくらこ)は、ある日、不思議な古書に触れたことで、魔法が存在する異世界エルフィア王国に召喚される。そこで彼女は美しい王子レオンと出会い、元の世界に戻る方法を探すために彼と行動を共にすることになる。
魔法学院に入学した桜子は、個性豊かな仲間たちと友情を育みながら、魔法の世界での生活に奮闘する。やがて彼女は、自分の中に秘められた特別な力の存在に気づき始める。しかし、その力を狙う闇の勢力が動き出し、桜子は自分の運命と向き合わざるを得なくなる。
仲間たちとの絆やレオンとの関係を深めながら、桜子は困難に立ち向かっていく。異世界での冒険と成長を通じて、彼女が選ぶ未来とは――。
転生幼女。神獣と王子と、最強のおじさん傭兵団の中で生きる。
餡子・ロ・モティ
ファンタジー
ご連絡!
4巻発売にともない、7/27~28に177話までがレンタル版に切り替え予定です。
無料のWEB版はそれまでにお読みいただければと思います。
日程に余裕なく申し訳ありませんm(__)m
※おかげさまで小説版4巻もまもなく発売(7月末ごろ)! ありがとうございますm(__)m
※コミカライズも絶賛連載中! よろしくどうぞ<(_ _)>
~~~ ~~ ~~~
織宮優乃は、目が覚めると異世界にいた。
なぜか身体は幼女になっているけれど、何気なく出会った神獣には溺愛され、保護してくれた筋肉紳士なおじさん達も親切で気の良い人々だった。
優乃は流れでおじさんたちの部隊で生活することになる。
しかしそのおじさん達、実は複数の国家から騎士爵を賜るような凄腕で。
それどころか、表向きはただの傭兵団の一部隊のはずなのに、実は裏で各国の王室とも直接繋がっているような最強の特殊傭兵部隊だった。
彼らの隊には大国の一級王子たちまでもが御忍びで参加している始末。
おじさん、王子、神獣たち、周囲の人々に溺愛されながらも、波乱万丈な冒険とちょっとおかしな日常を平常心で生きぬいてゆく女性の物語。
今日で都合の良い嫁は辞めます!後は家族で仲良くしてください!
ユウ
恋愛
三年前、夫の願いにより義両親との同居を求められた私はは悩みながらも同意した。
苦労すると周りから止められながらも受け入れたけれど、待っていたのは我慢を強いられる日々だった。
それでもなんとななれ始めたのだが、
目下の悩みは子供がなかなか授からない事だった。
そんなある日、義姉が里帰りをするようになり、生活は一変した。
義姉は子供を私に預け、育児を丸投げをするようになった。
仕事と家事と育児すべてをこなすのが困難になった夫に助けを求めるも。
「子供一人ぐらい楽勝だろ」
夫はリサに残酷な事を言葉を投げ。
「家族なんだから助けてあげないと」
「家族なんだから助けあうべきだ」
夫のみならず、義両親までもリサの味方をすることなく行動はエスカレートする。
「仕事を少し休んでくれる?娘が旅行にいきたいそうだから」
「あの子は大変なんだ」
「母親ならできて当然よ」
シンパシー家は私が黙っていることをいいことに育児をすべて丸投げさせ、義姉を大事にするあまり家族の団欒から外され、我慢できなくなり夫と口論となる。
その末に。
「母性がなさすぎるよ!家族なんだから協力すべきだろ」
この言葉でもう無理だと思った私は決断をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる