王女の企み【完】

孤児院訪問

『エドワード～どうして孤児院訪問の前に殿下とお茶なんて入ってるのよ。おかげ出遅れちゃったじゃない？』　

ご立腹で馬車に乗り込むルリネット。

『貴女の番ですからね。貴女の後の方は、朝一番での孤児院訪問だったのです。貴女も朝一番がよかったのですか？』


朝がめっぽう弱いルリネットは複雑そうにエドワードを睨み付け窓から広がる町の景色を楽しんだ。


馬車が孤児院前に付けられた。　

孤児院に入ると、何やら騒がしくなっている。エドワードとルリネットは急いで駆け寄る。

皆、金銀財宝を持参しての訪問なので手土産を国の名と共に献上すればお役御免といったところか。

部屋を見ると‥驚くべき光景。

孤児院の中にピアノが搬入されているではないか。
その奥には恥ずかしそうなイザベラ王女。ルリネットは急いで駆け寄りイザベラ王女の手を握りひと言。

『流石ですわ！最高ですわ！』

この本心からの声にイザベラ王女は顔に大きな華を咲かせた。
初めて見たイザベラ王女の笑顔にルリネットは一瞬ノックアウトされるが、すぐにピアノに座り子どもたちに向かって叫んだ。

『さあ、みんな一緒に歌いましょう！一緒に踊りましょう!』


ルリネットの奏でる音に、子どもたちはすぐさま反応したちまちピアノの回りは大盛況であった。




夕方になり、お片付けも終わり王宮に戻ろうとしたルリネットだが、ベンチに座るイザベラ王女を見つけた。

『エドワード、』

エドワードは微笑みながら

『あまり遅くなりませんように。』


ルリネットは大きく頷きイザベラ王女の元へ走る。


『イザベラ王女!』
息を切らしたルリネットをベンチに促し

『ヴェルヴァス王女、いえルリネット王女とお呼びしても？』


息をまだ切らしているルリネットは声にはならず首だけを大きく縦に振る。


『ルリネット王女、ありがとう。貴女のおかけで一世一代の間違いを犯すところだったわ。』

『はあ、はあ、とんでもない事にございますわ。あれから色々と考えられたのですね。素晴らしいプレゼントでしたわ。私には思いも浮かびませんでしたもの。』


王女とは思えないほど息を切らし、ゼーゼー煩いルリネットを予定より早くエドワードが確保に乗り出した。


『ま～だ～！』

声を上げるルリネットの首根っこを掴み確保すると、イザベラ王女に礼を取るエドワードであった。