王女の企み【完】

makojou

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エドワードの後悔

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エドワードは職務中ではあるが、既に王族専用エリアにある自分の部屋に戻っていた。


ベッドに倒れ込み天井を眺める。

エドワードは正妃の産んだ王子ということで、かなりの優遇を受けて育てられていた。だからと言われるのを嫌い、人一倍努力もしてきた。目の前の事から逃げる事なく、挑んできた。

あの女は王女という立場に産まれながら、数々の優遇を受けてきているにもかかわらず、恩恵のみ享受し義務を果たそうともしない。

エドワードが最も嫌う人種であった。その王女にいっときでも仕える自分が許せないが、これまた逃げる訳にもいかない。

そもそも、ヴェルヴァス王国は隣国であるのに、最終日ぎりぎりにダリスに入り、昼間のガーデンパーティにさえも出ていない。

属国にもならず、自国の富で強気な体制をとる国である。そこの王女であるので少々の事は想定してはいた。が、今回は想定外である。

頭にのぼった血がおさまらないエドワードは、再び執行部の置かれている大広間へ向かい仕事を始めた。


『エドワード様、まだ残られますか?』

既に王子たちは部屋には居なかった。

『悪い、もう少し残るから先に上がってよい。』

調整の補佐をする王宮の文官に声を掛け、再び書類に目を通した。



そろそろ戻ろうかと席を立った時、隣のデスクに置かれる試験の答案用紙が目に入る。

また嫌な事を思い出したエドワードは溜息を付き、なんの気無しに答案を手に取る。



パラパラとめくっていくと、35点、65点、20点、0点
!0点の答案で手が止まる。名前を確認するとルリネットでは‥





無い。


不思議なもので安堵しているエドワード。


25点、90点‥まあ、普通といえば普通である。ダリスの王子でも満点は無理そうな鬼問が並ぶ。

75点、190点、

!驚き答案を眺める。他の答案と異なり、真っ黒になるまで書きなぐってある。見ていくと全てに正解しているようなのに何故満点の200点ではないのか?


なるほど、最後にある自筆のサインが抜けている。

エドワードは苦笑いしながら名前を確認すると、そこに書かれていたのは、


ルリネット・フォン・ヴェルヴァス










どれくらいの時間が流れたであろうか。エドワードは動く事が出来なかった。



あの王女はなぜ‥

王女のせいではない。自分がきちんと確認もせず決めつけていた。情けない思いで唇を噛むエドワード。


謝らなければならない。
いや、でも‥。


ハズレ姫の顔をを浮かべながら頭を抱えた。

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