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昔ばなし⇒ハインリッヒ

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私は生まれながらの王太子。
この国では正妃の産んだ王子が王太子となる。

記憶を辿ると、私の側には王妃と兄上しか居なかった様に思う。

離宮には私と同じくらいの子どもが8人居た。私は上から6番目だった。皆、母親が違いそれが普通だと思っていた。一番上の兄上の母親が私の母親と違うと知ったのはもっと後の事。

これだけ沢山の子どもが居ながら、何故が私が優遇されているのも不思議だった。
父親である国王陛下は、私に会いに来ることはなかったが、それは他の兄弟も同じ。
誰も父親の愛情を知らず、これが王族の常であった。

父親とは公の場で顔を合わせる程度であり、それでもいつも隣に立つのは私であった。

母親である正妃はとても厳しく優しいお方である。幼い頃より王太子教育に多くの時間を当てられたが他にすることもないので苦痛ではなかった。

そんな時、いつも私の側にいてくれた兄が留学の為離宮を去って行った。その後兄上は離宮に戻る事は無かった。



私がリデュアンネを初めて見たのは10才の頃。国王陛下と訪れた西国王宮での茶会であった。

ドレスを着たサルを見た。サルは木をどんどん飛び移り私の側に落ちてきたのだ。
驚いた私は駆け寄り手を差し伸ばすもサルはヒョイっと、起き上がり笑いながら微笑んだ。

『見なかった事にして!』そう笑うサルは、今度は天使のように微笑んだ。
そして父親らしき男の元へ走り飛びついた。
父親らしき男は目を細め天使を抱き上げ去っていったのだ。

短い時間であったが、これが私とリデュアンネの出会いである。当の本人は覚えてもいないらしいが。
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