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西国からの使者

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いつもの様に執務室に午前中は籠もっていたある日。西国からの使者が東国に来ている事をカインから聞いた。

『ご存知ありませんか?アンドレ・ブロイとか名乗る者がリデュアンネ様にお目通りをとの事でございました。何でも幼馴染とかで』

アンドレ・ブロイ‥ブロイ候爵の次男だったはず。
幼馴染と言われても夜会でお目にかかる程度。
‥なに?あっ、アルフレッド殿下の側近になったとか言ってたかしら。会わない訳にはいかないか‥

『アンドレ様ね。分かったわ。お通しして』

しばらくしてアンドレ様がカインとともに執務室に来られた。
『リデュアンネ様、アンドレ・ブロイ様をお連れしました。』

『入って』

扉が開くと私が声を掛ける前に、カインを押し退け大袈裟な程に手を広げ
『リデュ!久しぶりだね~あっ今は妃殿下とお呼びしなければなりませんね。』
わざとらしく敬語に変えて話すとカインに積もる話があるからと部屋を出る様促す。
『しかし!』
譲らないカインであったが私が
『そうね懐かしい話もあるし、少しだけテオドールに明日のスケジュールを確認してきてくれる?』

渋々部屋を出るカインを横目にアンドレ様はニヤリと口角を、上げた。


『リデュアンネ嬢。いや王太子妃様?か。』
棘のある物言いに私は
『リデュアンネで結構です』

『そうか、ではリデュアンネ。単刀直入に言う。
我が国では、帝国復活の動きがある。もちろんアルフレッド殿下が行く行くは皇帝になられる。そこでだ。リデュアンネがするべき事がある。わかるな?』

『すみません、わかりません』

帝国復活の動き、これは私も大賛成であるがそこは友好的解決の元、分裂した両国が一つにならなければ意味がない。

『はあ、そんなだからここに送られるんだ。クラウディアは今や西国を守る聖女であり王太子妃だ。君が公爵令嬢の役割を果たさずして誰が果たすんだよ。しっかりしてくれよ。全てのピースを埋めるには君が果たさなくては成り立たないんだからね。』

随分と勝手な言い分だ。がしかしトゥモルデン家は西国にあるのも事実。
これを盛れ‥と手渡された小さな小瓶。

おそらくは毒であろう。不要な人間を消す最も卑怯なものを手渡された私は手が震えた。

『なに、簡単なことさ。夜、君が彼と子づくりに励む前に酒でも、飲むだろう?これを毎日少しづつ盛る。即効性はないから君に疑いが向くことはない。そしたら君はアルフレッド殿下の側妃にでもなればいいさ』

夜?毎日?子づくり?
私の表情を読み取ったのか、

『まさか、白い結婚なわけ?嘘だろ‥白い結婚を、経て国にオメオメと帰ってくるつもりだったの?君の席はもう無いよ。本当勘弁してくれよ。使えないな。とにかくくだらない夢は捨て君のやるべき事を果たしてくれ。これはアルフレッド殿下の命令だ。


アルフレッド殿下。貴方が望んでいた事はこれですか?
しばらく放心状態であった私であったが、カインが戻って来るとアンドレ様は
『時間ですね。久々過ぎて積もる話が出来て光栄でした。どうぞ妃殿下も、お元気で』
と去って行った。


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