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ルシャード・バーナディン

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ルシャードは後方からアレクセイと国王の前まで来ると跪き頭を垂れた。

『申してみよ。』


この日初めて口を開いた国王の言葉にルシャードは振り返り一同を見渡した。


『ルシャード!』

ヴィオランテは幼き頃より知るルシャードに確認するように声をかけるとルシャードもまたにっこりと笑顔を返した。


ルシャードはゆっくりと国王に視線を流すと


『申し上げます。王妃は王太子妃教育も進まぬヴィクトリア様を危惧され私にヴィクトリア様の行動に注視すらよう命じられました。実際わが妹の後釜となるヴィクトリア様の素行に頭を悩ませておりましたのは私だけではございません。』


何とも忠実な報告にヴィクトリアは俯き、ヴィオランテは頷いている。


『それがある茶会の際、ヴィクトリア様が離れのローズ宮の螺旋階段から落ちるという事故の後記憶を無くされたかと思えばまるで別人のようになられたのです。』


…!え?病に倒れたのでは無く階段から?…だから頭に包帯を巻いてたのね。


ヴィクトリアは初めて知る事実に驚きをみせた。それと同じくアレクセイとレイモンドも初めて知る事実であったようだ。


アレクセイは思わず立ち上がると


『ヴィクトリアは階段から落ちた?それは事故なのか?私は聞いてないぞ!』


まるで関心が無かった頃の出来事であるが王太子の耳には入っていても良さそうなものだ。


ルシャードはアレクセイに視線を向けると


『王妃主催のお茶会ということで大袈裟にせぬ様ヴィオランテ様からのご指示がございました。』


一斉に注がれる視線をもろともせずヴィオランテは


『王宮主催のお茶会ですのよ?事を荒立てる必要がございますか?幸いヴィクトリアの怪我も大した事はないとの事でしたので…。恐らくヴィクトリアが足を踏み外したのではないと。』

…。


…。

沈黙の中ルシャードは1つ咳払いをしてから


『私は極秘でトンプソン領へも参りました。ヴィクトリア様のお働きにわが目を疑いましたよ。確かに王太子妃として教育から逃げておいででしたが王太子妃は何か大切な物を持っていらっしゃると直感しました。そうしましたら王太子妃教育もクリアされまたたく間に完璧な王太子妃となられました。私は我が妹よりはるか優秀とお見受けいたしました。』

『ルシャード!なんて事!ステファニー以上だなんて方便でも口にするものではありません!』

ヴィオランテの言葉をスルーしルシャードは


『その事を私は喜び勇んでヴィオランテ様に報告しましたら…』


口籠るルシャードにアレクセイは


『母上に報告したら?』


一斉に注がれる視線の中ルシャードは真っ直ぐアレクセイを見て

『劣化の如くお怒りになられました。』


『それは何故?』

『優秀なヴィクトリアは要らないと。あくまでメープル王国王太子妃はステファニーであると。』


『それで?』



『しばらくしてヴィクトリア様を陥れる陰謀がまことしやかに囁かれらようになり、そこにアン王女も加わり本格的に始動し始めたのです。』


『ルシャード!貴方!』


鬼の形相になったヴィオランテは声を荒げ、その声をかき消すように怒鳴りつけたのはアン王女であった。


『ちょっと!貴方何いい加減な事言ってるのよ!私がいつ加担したというの?私は寧ろ王妃の企てを探ってた方なのよ!そうよね?殿下!』


アレクセイは1つ頷いた。


ルシャードは間髪入れずに

『それはカモフラージュの為でしょう?』


そう言い放つとヴィオランテとアン王女の企てを洗いざらいぶちまけるとヴィオランテはその場に項垂れ瞳いっぱいに涙を浮かべルシャードを見た。


『ルシャード…何故…。』


アン王女はその姿に舌打ちをして尚もルシャードに


『高々公爵令息如きが何適当な事を言ってるのよ!そんなデマカセばかり重ねて!なに?メープル王国寄って集ってサンライズ王国を陥れるおつもりかしら?なんの証拠も無しに、国際問題になりますわよ?それに貴方、無関係のように得意気に話してるけど、貴方も王妃の駒よね?同罪なのよ?分かってる?現に貴方王太子妃と2人であの処刑部屋に居たじゃない!』


『処刑部屋?』


ボソリと呟いたのは国王陛下。


アン王女は勢い余っての失言にその場に固まり動けなくなっていた。





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