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サンライズ王国

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サンライズ王国、ここは大陸でも比較的歴史が浅い王国である。メープル王国ではアレクセイは一人息子であり他の王子や王女は存在しない。良く言えば愛妻家の国王ではあるが王族としてはいささか問題でもある。何せ後継者がアレクセイ一人なのだ。

一方のサンライズ王国は王子と王女は軽く両手は超える程ではあるが全て母親が異なる、これまた珍しい王国である。第一王子であるハロルドは幼き頃より自由奔放に育ち、早くして隠居した先代と共に各国を周り様々な経験を積んできたのに対し第二王子のルドルフは常に父である国王の背中を見て歩んできた生粋のサンライズ王子である。その他にも5人の王子が存在したが全て幼くしてこの世を去っていた。王女は第一王女であるアン以外にもまた6人程存在するが全て貴族では無い女の子どもであり王宮でアンと共に暮す事は無く遠く離れた田舎町でひっそりと暮らしているという。

サンライズ王国では実質ルドルフ第二王子とアン第一王女の2人が存在していた。2人はもちろんサンライズ王国の貴族らも皆、ルドルフ第二王子が立太子するものだと思っていたし、実際にその様な組閣も組まれていたのだ。


そんな時サンライズ王国に、唯一正妃の生みし王子ハロルドが帰還し民衆の前に現れた。先代と共に現れたハロルドはルドルフから王太子の座を呆気なく奪っていったのである。

次第に王太子派は大きくなり力を持つようになるがルドルフ派もまた負けじと力を強めていた。2つの大きな派閥がせめぎ合う議会はなかなか進まない現状がここにはあった。



サンライズ王国謁見の間にはルドルフ王子とアン王女。そしてメープル王国王太子夫妻が長いテーブルを挟んで顔を合わせていた。




事の経緯はいきなりの招待状がメープル王国に届けられた事が始まりである。もちろんレイモンドは断りの書状を送るつもりでいたがアレクセイがそれを止めたのだ。なぜならその招待状の送り主がハロルドではなくルドルフ第一王子からだったからである。




『ようこそおいでくださいました。』


ルドルフはハロルドとは異なりとても彫りが深くまるで彫刻のような美男子であった。表情も乏しく冷たい印象が漂っているが、隣のアン王女は相変わらずの派手なドレスに身を包みこれまた美しく微笑んでいる。


…微笑んでいるだけなら立派な王女なのに勿体ないわ。


ヴィクトリアは目の前に並ぶ2人を注意深く見つめていた。


『隣国からのご招待ですからね。それでわざわざ呼び立てた理由をお伺いしても?』

アレクセイは単刀直入に問うた。ルドルフもまた口角を少し上げただけで口を開いた。


『アンからもお話ししたかと存じますが我が国は訳あって国境を封鎖する事になりそうなのです。ですから隣国の貴国には先ずご報告をと思いまして。』



…目が恐いんだけど?


ヴィクトリアは怪訝そうにルドルフを見た。


『王太子殿下は何と?』


ルドルフはアレクセイの言葉に鼻で笑うと


『お恥ずかしい話ですが兄はここに戻ってまだ間もないですからね?国の状況が理解出来ていないようでして。』



『本日はここには?』


ルドルフは窓の外に視線を外すと立ち上がりテラスの窓を開けた。


『兄は今、皇帝から呼び出しを受けております。また何をやらかしたのやら。何せ自由に各国を放浪していた身ですからね。』



アレクセイは黙ってルドルフを眺めていた。


『それで?側妃としてメープル王国にお残りになりますの?』


いきなり飛んで来た球に面食らうヴィクトリアは思い出してしまった…とでも言いたげにアン王女を見た。


…その話まだ言ってるの?


あれほど苦手意識の強かったアレクセイは無表情のままルドルフを見た。ルドルフもまた無表情のまま席に戻ると


『悪い話ではないかと思いますが?』


ヴィクトリアはルドルフに強い視線を投げた。別に妹であるアン王女の後ろ盾になっているからではない。ルドルフはこの部屋で顔を合わせてから一度もヴィクトリアに視線を向けていないのだ。


…嫌われているのは構わないけれど感じが悪い奴ね。


『仮に私が王女を娶ったとしたら…』



『娶ったとしたら?』


ルドルフは少し目を細めてアレクセイの次の言葉を待った。



『アン王女は二度とここへは帰れませんよ?』






驚き目を見開くアン王女を見ることなくアレクセイはルドルフに尚も


『貴国が国境を封鎖するとなれば我が国はそこに掛かる橋を全て落としますからね。』


!今度はルドルフが驚き目を見開いた。


…。


…。


…。


この後長い沈黙が謁見の間に流れていた。
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