上 下
20 / 69

未来予想図

しおりを挟む
「トンプソン伯爵に一人息子が居るのは知ってる?」


ハロルドは前のめり気味にヴィクトリアに問うた。ヴィクトリアは咄嗟に後ろに引きながら


「ええ、確か帝国に留学に出て戻ってこない息子さんね?相当優秀らしいわね?帝国からお誘いがあるって話よね?」


ハロルドは頷きながら

「そう、そのエドワードがトンプソン領に戻ってその力を発揮してくれたら力強いと思わない?」


ヴィクトリアは鼻で笑うと


「そんな事あるわけないじゃない?だってこう言ったらアレだけど、トンプソン領は田舎のそれこそ貧しい領地よ?そんな所を継ぐ気など更々無いわよ。私だったらそんなもの要らないわ。それこそ帝国で開けた道があるなら喜んで行くもの。継ぐ者が居なければ王国へ爵位の返上するだけよ。」



ヴィクトリアが饒舌に語ると自分の言葉にハッとしたようにヴィクトリアはハロルドの両肩に手を置くと


「ねえ、待って待って、という事は…トンプソン伯爵領の爵位が空くってことよね?


側妃のアナスタージア様はゆくゆくは正妃に昇格するわけだから…私が頂いちゃうのは駄目なのかしら?今から尽力するわけだし…それくらいしてくれてもよくない?」



ヴィクトリアの突拍子もない発言にハロルドは付いていけない…



「あ、案外ケチなのかしら?王太子ってのは…」


真面目に頭を悩ますヴィクトリアにハロルドは


「待て待て、君は正妃じゃなくなるの?」


こちらも真面目にヴィクトリアを見た。



…あっ、転生した時期はまた2人の愛が芽生える前だったわ。



ヴィクトリアは苦笑いを浮かべ


「ハロ、貴方も冗談が通じない男ね。なわけ無いじゃない?で?話をもどしましょう?」


ヴィクトリアは静かにソファに腰を下ろすとハロルドに続きを促した。



…。



ハロルドもまた気を取り直してヴィクトリアを見ると



「だからその男がね、今回の未来予想図を見てどう考えるかだよ。この計画に共感するかバカにするか、それは君の営業次第だろ?」


ヴィクトリアは少し考え


「難しいわね、だって面識もないのよ?いきなりは無理だわ。」


悩むヴィクトリアにハロルドは


「助け舟があるかもよ?」


「助け舟?」


「エドワードはかなりのエリート街道を帝国にて歩んでいるけれど、もう一人一緒に留学していた唯一の友人がいるらしい。その友人の説得ならば結果はどうあれ耳は貸すだろうね。」



ヴィクトリアは大きな瞳を輝かせながら


「誰?誰なの?」


ハロルドは少し申し訳なさそうに


「エドワードという男はね、実に賢明なようでなかなか情報が無いんだよ。王太子の力を使ってもその友人がメープル王国の公爵令息とまでしか分からなかったんだ。」


ヴィクトリアの輝いた瞳はたちまち曇りをみせた。この国の公爵家といえばメープル王国2大公爵家と呼ばれ一つはバーナディン公爵家。ルシャード・バーナディン。ヴィクトリアがある意味恐れている男である。何故ならこの男こそがステファニーの義理ではあるが兄なのである。妹の件がありヴィクトリアを好ましく思っている理由はない。寧ろ恨んでいてもおかしくない。


そしてもう一つの公爵家の令息と言えば…


常日頃、ヴィクトリアを見ればファイティングモード全開であるレイモンドだ。こちらも誰よりも王太子妃ステファニーを待ち望んだ男。婚約解消の一報を受け帝国から急ぎ呼び戻されたのである。その解消の元凶であるヴィクトリアをこちらも好ましく思う理由もなく寧ろ恨んでいるであろう。



…。四面楚歌だわ。


ハロルドはヴィクトリアの様子を眺め小さく息を吐くと


「ならば私が助け舟となろうかな?」


ヴィクトリアは怪訝そうにハロルドを見上げるとハロルドが次のセリフを口にする前に


「ご心配には及びません。」


現れたのは渦中の公爵令息レイモンドであった。
    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件

りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

処理中です...