上 下
1 / 69

嘘でしょ?

しおりを挟む
窓から流れてくる心地よい風に誘われるかのように目を覚ます。

『頭痛い…』

昨夜は飲み過ぎたと自覚はある。山崎麻子は重い瞼を開けると、高い天井。麻子はいつも、ロフトで寝ているので天井はすぐそこにあるはず。

…?まだ夢の中か。にしても静かね。


麻子は静かすぎる朝に違和感を覚えながら片手を伸ばしスマホを探すも見当たらない。


…ったく。

仕方なく起き上がると見たことのない部屋。


…?やってしまった。

麻子は昨夜を必死に思い出すも、2軒目までしか出てこない。


行きずりの男と朝を迎えたにしては、隣りには誰も居ない。そうゆう、ホテルでもなさげである。


恐る恐る辺りを見渡すとまるで、おとぎ話の中のお城のようだ。並ぶ調度品にベッドには天蓋まである。

…ファンタジーランドホテルに来たの?1人で?


麻子は必死に記憶を辿るも頭が割れそうな程痛む。


…頭割れるわ。



しばらく固まり目をパチクリさせていると



『妃殿下、おはようございます。』


…!妃殿下?


見慣れぬ大きな扉が開かれると特段驚きもせず慣れた様子で入ってくる女たち。


『ヴィクトリア様?』


…ヴィクトリア様?誰が?

声を掛けた女を見ると不思議そうにこちらを眺めている。同じような表情で見つめ合う2人の女。


…流石はファンタジーランドホテル、ずいぶんと本格的だわ。ってかここ一泊幾らよ…(泣)


『ご気分はいかがですか?頭は痛みませんか?』

…は?待って待って、従業員は二日酔いまで知ってるの?

おそらくはよほどの醜態をみせたのであろうと麻子は頭を抱えた。

『すぐに医者を呼びましょう!』


驚いた麻子は


『いやいやいつもの事ですので大丈夫ですから!ところでこちらのチェックアウトは何時ですか?』

すぐにでも退散したい麻子はベッドから起き上がり立ち上がると荷物を探すも目の前の大きな鏡に映る美しい金髪碧眼に目を留めた。


…だれ?


振り返ると本格的な出で立ちの従業員らがこちらを不思議そうに眺めている。

鏡に向き直し何故だか微笑んでみると、不思議なことに鏡の中の美女も同じように微笑んでいる。


…えっと?


麻子は鏡の中の美女の頭に包帯が巻かれているのをみて自身の頭に触れると鏡の中の美女も包帯に触れている。


…。



『はぁ?え?待って待って。え~?』


麻子は鏡に向って叫んでいた。二日酔いで頭が痛いと思っていたら何故だか頭が負傷している。


『二日酔いで負傷したの?いや違う。え?どうして金髪碧眼?』


麻子は理由もわからず部屋の中をくるくると回る。


頭をクリアにするべく1人の女に声を掛けた。


『すみません、お水あります?』


よくわからない状況ではあるがこの女たちなら要求を聞いてくれるような気がする雰囲気。もちろん慌てて水が用意されすぐにありつけた。それを一気に飲み干すと次第と動き出す脳みそ。





…これは夢か真か幻か。夢ではないなら現実。現実なはずは無いがどうみても現実。ならば?

これは噂に聞いた転生とやら?んで?ここはというと…手掛かりが少な過ぎるが…。


ヴィクトリア。ヴィクトリアって言ったわよね?ヴィクトリア、ヴィクトリア。馴染みのない横文字の名前。もちろん知り合いにも居ない。


でも記憶にあるような、無いような。





!まさかね?


でも。確か前にたまたま読んだWEB小説の悪役令嬢がヴィクトリアとか言わなかった?


いやいやまさか?ってかそもそもヴィクトリアとか言う令嬢は主要登場人物ではなかったからよく覚えて無い。


けれど…




女たちの、不思議そうな視線を浴びながらもその視線から逃れるように



『ごめんなさい、気分がすぐれないみたいだからもう一度寝ます…』


ベッドに潜り込む他無かったのである。



ベッドに潜り目を閉じる。部屋では女たちが記憶喪失だと騒ぎ出す。


…記憶喪失?いや違う。あるもん。記憶。確かに昨日は飲み過ぎた。そう。飲んでたわ。仕事帰りに。


で?え?


とにかく寝よう。疲れが溜まっているんだわ。
目を覚ませば、元通りになっているわよ。


麻子は再び目を固く瞑り心の中で羊を数えた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件

りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

処理中です...