上 下
6 / 61

固まる側近

しおりを挟む
エマニュエルは私室に案内されソファに座るやいなや侍女が緊張の面持ちで挨拶をした。


『ようこそいらっしゃいました。私はエマニュエル様のお世話をさせて頂きますシルヴィアと申します。』


エマニュエルは丸い大きな瞳をキラキラさせて


『宜しくお願いしますね。で?あなたもがっかりなさった?』


エマニュエルも学習する。今度は驚かれる前に問うてみた。不思議そうにこちらを目を点にして見つめるシルヴィアに


『だから、絶世の美女が来ると思ってのでしょ?この国の人々は。』

シルヴィアはこれまた不思議そうに


『絶世の美女が来られましたが?』


‥。これは笑う所?それとも天然?


頭を巡らせシルヴィアを見るもシルヴィアはまだ首を傾げている。


‥まぢで?


エマニュエルは満面の笑みとなりシルヴィアの手を取り


『私、貴女とお友達になりたいわ!』


シルヴィアは驚き飛び上がり後ろに飛んだ。

‥忍者か?



『滅相もございません!私如きが恐れ多く存じます。』


『何故?』


『私、ただの侯爵家二女ですから。エマニュエル様にお仕えさせて頂けるだけでも一生の幸せ。』


‥貴女、騎士団にでも入るの?


『あらお友達に爵位は関係ないわ!それに私と同じ二女なのね?益々気が合うわね~』

またも目を見開き驚くシルヴィアが面白くて思わず笑いが溢れる。エマニュエルは直感でシルヴィアは味方であると心を開いた。



『ところでそろそろお支度を』

シルヴィアはエマニュエルを着替えに促すも

『ちょっと、今付いたばかりだけど?どこいくの?』


シルヴィアはエマニュエルの着替えを手伝いながら

『王太子殿下がお呼びです。』

‥え?今から?なんで?


流石は王宮に仕える侯爵令嬢。仕事が早い。エマニュエルは気がついたらエイドリアンの待つ部屋の扉をノックしていた。




部屋に入るとエイドリアンはソファに腰を下ろしていた。促されるまま向かいに座ると、サイドに控えるアンドリューが口を開いた。


『先程は失礼を致しました』

腰を折るアンドリューに


『何がですか?』


‥どっちだ?気づかないフリ、それとも天然?

アンドリューはゆっくりと顔を上げた。

言葉を探しているアンドリューにエマニュエルは

『絶世の美女ですか?』

‥そっちか。
バツの悪そうなアンドリューに


『別に気にしてませんよ?確かに姉は絶世の美女と言われておりますし。

絶世の美女がこの国の王太子妃になると待ち望んでいたはずが馬車から降りてきたのが私ではねえ?

ですが、着眼を変えれば絶世の美女をアリア大王国に早々に手に入れられたのはラタン大王国ですわ。

むしろ自国の仕事の遅さに落胆されているのと同じ事だとこの国の人々は自覚すべきですね。』


アンドリューは驚きながらも

‥十分気にしているではないか?

言葉にならない。



『アハハハ!痛い所を付かれたね、アンドリュー。自覚すべきは我々か。なるほどね。』

エイドリアンは嬉しそうに笑った。


‥何なん?

エマニュエルはエイドリアンを見ると、エイドリアンは

『うん?』


完全な王子スマイル。


‥コイツ、白馬でも乗ってんのか?


エマニュエルは引き攣りながらも何とか笑顔で返す事が出来た。


‥偉いぞ、私。流石はリントン第2王女。




しおりを挟む

処理中です...