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【二人目・二葉 兵固】

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スドンズドンと破壊した扉の向こうから何かがやってくる。
そして漏れてくる紫色の空気。
咄嗟に俺たちは口布を上げ、ゴーグルを装着する。
毒耐性を身につけているとはいえ、能力値は低いのだ。
この毒はちょっと俺たちには分が悪いくらい多い。
さっさと片を付けないとこちらが殺れてしまう。
俺は投擲が出来る位置を探し、順調に上げていったアジリティを駆使してそこに登ると毒は上にはなく、地上に生きるモノに影響を与えるだけのようだ。
だから、そのモンスターの姿を確認できた。
明らかにこのレベルのダンジョンに現われるのがおかしい『毒竜』だった。
だが、『毒竜』は『竜』という名が付くだけに自分の半径5キロは上空だろうが地上だろうが毒を撒き散らせると、このゲームの公式にはあったはずだ。
だから、この竜はかなりのランクを下げた運営側が勝手に俺たちの為に作り出したモンスターだ。
ということは、睨んでいた通り俺たちが協力すれば簡単だ。
俺は自分の周りに短剣を幾つも現せるとそれに『闇』の力を纏えて、投擲する。

『ダークダガーズ』

端的で簡単でいい名だろう?
姉さんも「私も技名考えるのめんどいし、あまりお花畑の名前は私好みじゃないからいいじゃない?」と言ってくれた。そういう姉さんも技名は簡単な単語で纏めている。
俺の技が竜の背に刺さるが、竜だけあって皮膚が硬く数剣しか刺さることはなかった。
それに致命傷にもなりえなくて、残念だが『闇』を纏ったのだ。
つまり、そこから腐っていく。
『毒竜』でも内部を攻撃されれば自分とて致傷するに決まっている。
首の付け根に刺さった短剣が一番早く皮膚を犯していく。
奴はその短剣を引き抜こうとするが、丁度取れない位置に刺さったため悶え苦しみ、その苦しみを俺にぶつけようと毒のブレスを吐く体勢を取った。
俺はもちろんその場所に居続けるはずもなく、シーフらしく気配を消して隠れる。
そんな俺を見つけるため、キョロキョロしているが見つけられず、イライラが頂上に達したらしく誰彼構わずこの部屋全体にブレスを吹きかけようとするとき、姉さんがその大きく開いた口に双剣を突っ込み引き裂いたのだ。
跳躍と場を読む行動、そしてすごく楽しそうな表情。
恐ろしく強く、格好いい姉さんとタッグを組めたことこの上なく嬉しく思う。
毒竜は引き裂かれてもなかなか消滅せず、しぶとくのたうち回り、更にブレスを吐こうとするも引き裂かれたため、『ガフッ!』と苦しそうな息を漏らすしかない。
しかも、外に向かって出ようとしていた毒が出ず逆戻りするものだから、更に自分の喉を傷つける。
あまりにもその姿は勝手に運営に作り出されたモンスターでも可哀想に思え、俺と姉さんは竜に向かって手を合わせると、一思いに各々の武器を突き刺して、消滅させた。
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